神成山(富岡アルプス)で希少なオキナグサを求めて早春のハイキングコースを歩く

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西上州、群馬県富岡市の神成(かんなり)山には、標高300mあまりの小さなピークをつなぐ整備された縦走コース、通称富岡アルプスがあります。3月には穏やかな春の陽射しを下でハイキングを楽しむことができます。いまや希少になったオキナグサの保護群生地が点在し、可憐な花に出合えるのも楽しみです。

文・写真=奥谷 晶

オキナグサは本州や四国、九州の里山や河原など日当たりのよい場所に群生し、濃い赤紫の花を咲かせます。綿毛になると翁の髭のような形になることが名前の由来といわれています。八ヶ岳や白馬岳など限られた高山に咲くツクモグサの近縁種としても知られています。しかし近年は自生地が激減し、絶滅危惧種に指定されています。はたして出合えるでしょうか。

オキナグサ

オキナグサ

駐車場のある宮崎公園から出発します。市街地を抜け、中学校の校庭の脇にハイキングコース入口への標識があり、その先に登山口がありました。

山道らしくなり、ゆるやかに登っていくと赤い頭巾のお地蔵様や不動明王の石像が迎えてくれます。

不動明王の石像

不動明王の石像

神成城跡の看板を過ぎて少し急登になり、神成山竜王山のピークに至ります。頂上付近はミツバツツジの花盛りで、縦走路の南側は里の展望が開けています。特異な岩峰の鍬柄岳も見えます。ミニ博物館もありましたが、自生していると聞いていたオキナグサの株は見当たりませんでした。残念です。

眼下の里山の風景。遠くに見えるのは鍬柄岳の岩峰

眼下の里山の風景。遠くに見えるのは鍬柄岳の岩峰

頂上からは小さなアップダウンが続くミニ縦走路になっていて九連峰と呼ばれています。神成山吾妻山が最後のピークです。ここから新堀神社に向かって下りていくと、ありました、オキナグサの群生です。どうやら地元の方によって保護育成されているようです。うつむきかげんな赤い花と産毛のような白い毛に包まれた茎が気持ちよさそうです。

新堀神社境内のオキナグサの保護群生地

新堀神社境内のオキナグサの保護群生地

帰路はかんなり郷道を通って宮崎公園に戻りました。途中にある古代蓮の里にも保護されたオキナソウが見られました。上信電鉄南蛇井駅の構内にも咲いているようです。

MAP&DATA

ヤマタイムで周辺の地図を見る

参考コースタイム:宮崎公園~神成山~新堀神社~かんなり郷道~宮崎公園・2時間25分

この記事に登場する山

群馬県 /

神成山 標高 321m

群馬県富岡市にある山で、上越自動車道や上信電鉄に平行して東西に伸びる山稜のピークの1つ。富岡アルプスの愛称もある山で、緩やかな山稜の縦走を楽しめる。 標高は低いが、縦走中に古城跡、古刹があり、さらに春には地元の方に保護されている絶滅危惧種のニホンオキナグサ(日本翁草)など楽しみも多い。

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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