花に囲まれた赤い屋根。佐渡・ドンデン避難小屋【帰ってきた避難小屋】

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佐渡の真ん中、ドンデン高原には、戦中からの歴史をもつ避難小屋がある。イラストレーターで登山ガイドの橋尾歌子さんが全国の避難小屋を訪問し、イラストで紹介する書籍『帰ってきた避難小屋』から、花に囲まれた佐渡の避難小屋をご紹介。

イラスト・文・写真=橋尾歌子

初、佐渡島! 国際山岳ガイドの篠原達郎さんが島内のクライミングを企画。ならば金北(きんぽく)山縦走もしたいね〜!ってことに。大佐渡山地真ん中のドンデン高原に避難小屋がある。元佐渡山岳会の藤井与嗣明さんにお話を聞いた。

1931年、東京高等師範学校付属中学校の学校登山で金北山に向かう際、遭難死亡事故があった。それを機に佐渡の山にも小屋が必要との声があがり、佐渡山岳会が佐渡汽船に要望書を提出。太平洋戦争の気運が高まっていた頃で、体力増強のため山に行く人が多かったようだ。当時の社長が資金を提供し小屋建設を決定。作業は、山岳会や集落の人、学生なども請け負った。落成は43年7月23日。名称は「タダラ峰厚生修練道場」。戦中っぽいね。

その後、維持・管理の関係で新潟県に譲渡されたが、老朽化により取り壊し、94年11月17日に県が現在の小屋を建設した。正式名称は「ドンデンセントラルロッジ」。給水施設もあり、当初はキャンプやレクリエーション施設として利用されることも多く、集落の商店が飲み物や薪などの販売もしていた。現在、小屋や周辺登山道の維持管理は、佐渡市の委託を受け、ドンデン山荘を運営する「ドンデン高原ロッジ自然リゾート」が行なっている。

島内で3日間クライミングをした翌朝、アオネバ登山口に。小宮山くんが帰ってメンバーは、篠原さんのほか、みこママ、良さん、石谷さん・とっくん母子、そして私。

沢沿いの登山道を登っていく。所々に咲く花の名前を石谷さんに教わった。

国際山岳ガイド、篠原達郎さんの企画で、初佐渡&初クライミング。その後、アオネバ登山口から登り・・・

途中車道をからめ、湿原脇を歩くと避難小屋に到着。お昼ごはんを食べてから、のんびりとドンデン山荘まで歩いた。ドンデン山荘のごはんがうまいって、楽しみにしてたんよ。ところでドンデン山ってどれじゃ? と、この時誰も知らんかった。

ドンデン山荘の支配人、山田彰宏さんは、「佐渡の山は花を見に来る人がほとんど。でも花以外にもいっぱい魅力があるでしょ?」と話した。

ドンデン避難小屋へ。小屋の周りは花がいっぱい揺れていた(注:イラスト中に「マーガレット」とあるのは「フランスギク」でした)
尻立山から小屋方面を振り返る。来年は反対側の金剛山まで歩きたいね

次の日、樹林帯を1時間ほど歩いてマトネに到着。そこから小さなアップダウンを繰り返すと、ぱぁ〜っと開けた稜線に出た。砂礫のザレの向こう、遠〜くに金北山が。稜線左下に両津港や加茂湖が見え、進んでいくと形を変えていく。緑色の田んぼがパッチワークのように周りを囲んでいる。

天狗の休み場で振り返り篠原さんが言った。「目の高さにドンデン山荘が見えますよ」。いつの間にかあんなに遠くに……。その向こうには金剛山までの山々が連なっていた。「来年は金剛山まで歩きたいね〜」

ドンデン高原ロッジで1泊した翌朝、金北山に向けて歩いた。花の時期には遅いこの頃(6月なかば)、小さな蘭の花がよく見られるようだ
稜線には赤ザレ、青ザレと呼ばれる砂礫地が。金北山、結構遠いな〜

MEMORIES

両津の“おにcafe”で教わったくろもんじゃウィスキーは今も大好き。篠原さん、この翌年の6月に今度はみんなで反対側の金剛山まで歩こうねって話してましたね。行ってきたよ。金剛山の頂上で黒い蝶々がひらひら飛んでたよ。

 

ドンデン避難小屋DATA

所在地 佐渡島北部にある大佐渡山地の中央付近、ドンデン池そばの平坦池(850m)。アオネバ登山口からアオネバ十字路経由、途中車道を歩き2時間30分。避難小屋からドンデン山荘(ドンデン高原ロッジ)までは40分
収容人数 30人
管理 通年無人、無料
水場 なし。持参すること
トイレ 使用不可
取材日 2021年6月12~16日
問合せ先 ドンデン高原ロッジ自然リゾート
TEL:0259-23-2161
ヤマタイムで周辺の地図を見る

帰ってきた避難小屋

避難小屋とは、悪天候などの非常時に避難・休憩・宿泊するための山小屋。 営業山小屋のように管理人がいない場合もあり、個性的な小屋が多い。 写真や図面と違い、小屋の雰囲気まで伝わる著者独自のカラーイラストで描かれた間取り図は前作『それいけ避難小屋』から健在。 本作は北海道から九州までに収録エリアがパワーアップ。 41軒全て実踏調査した、いまだかつてない「避難小屋イラスト図鑑」第2弾!

■収録する避難小屋
黒岳石室/白雲岳避難小屋/忠別岳避難小屋/十勝岳避難小屋/上ホロカメットク山避難小屋/万計山荘/大深山荘/八瀬森山荘/岩手山八合目避難小屋/不動平避難小屋/田代山避難小屋/坊主沼避難小屋/峰の茶屋跡避難小屋/那須岳避難小屋/古峰ヶ原高原ヒュッテ/賽の河原避難小屋/小丸避難小屋/御前山避難小屋/湯の沢峠避難小屋/黍殻避難小屋/加入道避難小屋/犬越路避難小屋/菰釣避難小屋/金城山避難小屋/ドンデン避難小屋/須津山荘/霧訪山避難小屋/二の谷避難小屋/池田山避難小屋/津屋避難小屋/奥千町避難小屋/枯松平休憩所/檜尾避難小屋/安平路小屋/南木曽岳避難小屋/池ヶ谷避難小屋/綿向山五合目小屋/経ヶ峰休養施設/扇ノ山避難小屋/出雲峠避難小屋/避難小屋うまみ

橋尾歌子
発行 山と溪谷社
価格 1,760円(税込)
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プロフィール

橋尾歌子

イラストレーター、登山ガイド。多摩美術大学大学院修了。(有)アルパインガイド長谷川事務所勤務、(社)日本アルパイン・ガイド協会勤務を経てフリーに。2004年、パチュンハム(6529m)・ギャンゾンカン(6123m)連続初登頂。(公社)日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅢ。UIMLA国際登山リーダー。バーバリアンクラブ所属。

こんな山小屋で一息ついてみたい。“避難小屋”への誘い

悪天候などの非常時に避難・休憩・宿泊するための山小屋が避難小屋(無人小屋)。日本各地の山に、300軒近くあるといわれている避難小屋の中から、個性的な小屋をピックアップして登山ガイドでイラストレーターの橋尾歌子さんが実踏調査。書籍『それいけ避難小屋』『帰ってきた避難小屋』から、カラーイラストとルポで避難小屋の魅力を紹介する。

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