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ていねいな作りの小型ザックを秋の浅間隠山で背負う! スーリー/スター35[アスク]

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2016年10月25日

今月のPICK UP スーリー/スター35 [アスク]

価格:1万6,400円+税
重量:1kg(Men’s)
容量:35L

メーカーサイトへ >>

シンプルな見た目で、大型ザック並みの作り

以前から漠然と気になっていた山に、とうとう行ってみることにした。浅間山や谷川岳などの展望地として知られる群馬県の浅間隠山だ。今回の僕の相棒は、スーリー「スター35」という小型パックである。

このスター35、小型パックとしてはかなり面白いデザインをしている。上部には一般的な大型ポケットを付属する雨蓋はなく、かといってジッパーで開閉するタイプでもなく、荷物の出し入れをする開口部は巾着式。開口部はドローコードで引き絞った後、背中側のストラップに余分なたるみをフックでかけて固定する。

ただ、これだけ。じつにシンプルな構造だ。荷物の出し入れは簡単だが、このままでは雨が降ってきたらどうなるのかと不安になる。先ほど書いた「余分なたるみ」の部分にはストームフラップという名前がつけられてはいるが、その構造を考えれば雨を完全にシャットアウトできるものではない。巾着部分をさらに外側から締めこむように、パック本体の上部ももっと閉じられれば、より雨が入りにくくなるだろう。だが、この部分はつねに膨らんだままになっているのである。
じつは、ユニークなレインカバーによる降雨対策も考えられているのだが、そのあたりは後ほど説明したい。

荷室の部分を開いてみると、背中側にはメッシュのポケットがあり、細かなものを仕分けできる。そのメッシュポケットの裏には、さらにハイドレーションパックを入れる大型ポケットもあり、チューブを引き出す穴やハイドレーションパックをかけるフックもつけられている。

このあたりは他の現代的なパックと同様の特徴であり、特筆すべきことではない。だが、大型ポケットのさらに裏に、かなり張りがある金属のフレームが入っているのは、一般的な小形パックと違う点だ。容量35Lのわりには、非常にしっかりとした作りである。

背面にはかなり大きな特徴がある。
まずは背面長の調整が可能であるということ。上部のパネルはベルクロで固定されており、バリバリと剥がしてスライドさせると、上下に10cm移動できる。大型~中型パックであれば、このように背面調整ができるものが普通だが、容量35Lの小型パックでわざわざ調整できるようにしたモデルは珍しい。
また、ショルダーとウエストのハーネスにはメッシュポケットがつけられ、スマートフォンや地図などが入れられる。どちらのポケットにも強力なストレッチ性があり、かなり大きなものでもキープ可能だ。

そして、ベルクロで取り付けられているウエストハーネスは、使う人の体型に合わせて角度調整が行なえ、不必要なときは取り外せる。背面パネルとショルダー/ウエストハーネスのパッドはすべて肉抜きされており、軽量化と通気性の向上も考慮されている。表側は記事の縫い目すら極力抑えた非常にシンプルなルックスだが、裏側はかなり工夫されたデザインなのであった。

浅間隠山は、どの登山口から山頂へ向かっても日帰り圏内であるが、今回はあえて最短コースを選び、出発は二度上峠から。急がずに歩き、山頂ではゆったりとした時間を過ごそうという心積もりである。普段であれば容量35Lのパックは必要ないが、レインウェア、ヘッドライトといった重要ギア以外に、バーナー&クッカー、たっぷりの食材と水、地面に座るためのマットなども放り込んだ結果、意外と膨らんでしまった。

朝から歩き始めると、当初はやはり薄暗い。しかし標高を上げるに従って次第に光が差し込み、紅葉の山が彩りで満ちていく。この日、関東平野部は10月下旬だというのにどこも夏日を記録したほどの好天で、街よりもずっと涼しいはずの山中をゆっくり歩いているつもりなのに、汗が流れ始める。防寒着まで持ってきたのが、バカらしいほどだ。

途中でウインドシェルを脱ぎ、僕はTシャツになった。脱いだウインドシェルは、フロントのポケットへ。スナップボタンで留めるだけの薄いポケットだが、深さは40cmもあり、見た目以上の収納力だ。かさばるものを入れる部分が荷室本体にしかないように見えるモデルだが、このポケットがあればわざわざ上部の巾着を広げて内部に入れる必要はない。

もうひとつ、上部の巾着部分を広げなくても収納がしやすくなる工夫が、サイドのジッパーだ。ここから荷物の取り出しができるモデルはそれほど珍しくはないが、それは大型~中型パックの話。35L程度の小型サイズでサイドジッパーが設けられているのは少数だ。
先ほど説明した、金属のフレームといい、背面の構造といい、内部へのアクセス方法といい、スター35は小形パックながら、中型~大型と同様の特徴をもつモデルであることがよくわかる。メーカーは耐荷重を算出していないようだが、同サイズのパックよりも重い荷物を背負っても使いやすく、疲れにくいに違いない。

今年、このあたりの紅葉はイマイチなのか、あまり色付きはよくない。しかし、ときおり現れる鮮やかな木々を写真に収めながら、山頂を目指していく。

浅間「隠山」という山名ではあるが、僕が登ってきた二度上峠は浅間山側。浅間山が隠れてしまうのは反対側の北東方向であり、僕が使った登山道からは山頂が近づくにつれて浅間山がきれいに見えてきた。

誰もいない山頂に到着。

あいにく谷川岳は雲の中だが、苗場山などは拝むことができ、なかなかの眺望だ。好天にも恵まれ、本当に来てみてよかった。

さて、朝メシとも昼メシともつかない食事を作ろうと、調理器具や食材をパックから取り出す。

上部の巾着は両手でストラップを引くだけで一気に広げることができ、とても楽だ。ただし、再び巾着を引き絞るのは、少々力が必要なのである。コードストッパーの固定力が強すぎるようで、女性は手間取るかもしれない。ちなみにスター35には女性用モデルも用意されているが、ハーネスやパッドの形状が違うだけで、この部分は同様のようである。

その後、僕は具だくさんのラーメンを作り、食後にはコーヒー。1時間半以上も山頂でのんびりと過ごし、それからやっと下山を開始することにした。

歩きながらストラップの閉め具合を変えてみたり、ハーネス類の微調整をしたりして、何度も背負いなおしてみる。荷物がそれほど重くはないとはいえ、背面パッドの当たりは柔らかで、ハーネスも体になじみ、背負い心地は上々だった。

独特なレインカバーをチェック!

それにしても好天である。スター35にはレインカバーが付属するのだが、これでは試しようがない。まあ、仕方ないか。

そのレインカバーはフロント下部のポケットに収納されている。ポケット内部には黄色いコードがつけられており、カバーのトグルと連結する仕組みだ。

トグルとコードはサイドにもつけられている。

こうしてカバーはパックに固定され、強風下でも吹き飛ばされることはない。

なによりも興味深いのは、カバーでパックを覆う面積だ。下の写真を見てもらえばわかるように、上部の巾着部分は完全に覆いつつも、パックの下部はカバーがかからず、露出したままなのである。

これは「ストームガードシステム」という考えで、パックの下部と底を完全防水に作り上げ、必要部分のみをカバーで覆うというもの。一般的な底まで覆うレインカバーは降雨時に背負っていると下部に水が溜まるため、わざわざ水抜きの孔を作って排水するようにしている。だが、それでも水がたまりがちで、底から浸水して荷物を濡らすこともある。その点、このようにカバーが底を覆っていなければ、水はたまらない。それにパックの底自体が防水であれば、浸水の恐れもないわけだ。また、パックを地面に置くとカバーの底はすぐに傷むものだが、その問題もクリアしている。

雨の代わりに、残っていた水を思い切ってカバーの上からかけてみる。

もちろん、内部への浸水はない。しかし注意したほうがいい点がひとつ。レインカバーが入っていたポケットは、カバーが少しでもずれると内部に水が流れ込む可能性がある。トグルとともにパック下部に留めるツメのようなパーツも付属しているので、これらを確実に引っ掛けるようにしたい。

山頂から二度上峠に戻り、それからさらに駒髪山や獅子岩などへも足を延ばす。

標高が低くなっても、浅間山の姿は相変わらずクリアに見えていた。よい秋の日であった。

スーリー「スター35」は、なかなか面白いモデルだ。外部に露出しているパーツが少ないため、岩場やヤブを歩くときに周囲に引っかかる恐れが減り、安全度も高まる。背負い心地にも問題はなく、防水対応もよさそうで、一般登山にも有用だ。今回使った35Lは日帰り登山には大きすぎた感もあるが、荷物が少ない人ならば小屋泊も充分にいけるだろう。シンプルゆえに汎用性が高い、そんなモデルなのではないだろうか。

ザック 記録・ルポ
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『山道具 選び方、使い方』(枻出版)ほか著書多数。

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