どんくさくて憎めない、山小屋の同居人ヤマネさん
黒部源流の山小屋、薬師沢小屋で働くやまとけいこさんが、イラストとともに綴る山小屋暮らし。文庫版が発売された『黒部源流山小屋暮らし』(山と溪谷社)から一部を抜粋して紹介します。
文・イラスト=やまとけいこ
同居人ヤマネさん
薬師沢小屋には従業員だけではなく、ヤマネも一緒に暮らしている。ヤマネはネズミ目ヤマネ科ヤマネ属、国の天然記念物として指定されている動物だ。ヤマネを実際に見たことのある人は少ないかもしれないが、この小屋ではちょいちょい姿を現す。一見、ネズミに似ているが、尻尾がフサフサして長く、背中に黒くて太い線が入っているので、違いは明瞭だ。大きさは、尻尾を除けば手のひらに収まるくらいのサイズで、ぐりぐりした真っ黒な目をしている。
夜行性なので日中は姿を見せないが、発電機が止まるころになると、厨房の中や暖かい発電機室にチョロチョロと出てくる。不用意に食べ物を出しっぱなしにしておくと、夜中に齧かじられてしまうから、要注意だ。ときに寝ている私の顔の上を走り回ったり、毛布の中から飛び出してきたりして驚かされることもあるが、なんだか鈍臭いところもあり、憎めない奴だ。
これはそんな同居人、ヤマネさんたちのお話です。
プロフィール
やまとけいこ
1974年愛知県生まれ。山と旅のイラストレーター。武蔵野美術大学油絵学科卒業。29歳の時に山小屋のアルバイトを始める。シーズンオフは美術の仕事やイラストレーターとしての仕事をして過ごし、世界各地へ旅している。
イラストレーターとして『山と溪谷』などの雑誌で活動するほか、アウトドアブランド「Foxfire」のTシャツイラストも手がける。美術造形の仕事では、各地の美術館、博物館のほか、飲食施設等にも制作物が展示されている。著書に『蝸牛登山画帖』『黒部源流山小屋暮らし』(山と溪谷社)。
黒部源流山小屋暮らし
豊かな大自然、生き生きとした動物たちの姿、小屋のリアルな日常が目に浮かぶ。やまとけいこさんの名イラストエッセイ集『黒部源流山小屋暮らし』をついにヤマケイ文庫化! 記事では本書から一部抜粋して紹介。
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