三浦半島・大楠山で親子ハイキング。沢沿いの天然アスレチックから海岸へ
読者レポーターより連休の登山レポをお届けします。スラ男さんは親子で三浦半島の大楠山(おおぐすやま)へ。
文・写真=スラ男
山の表情の変化が楽しい5月から6月。標高の高い山では雪が解け始め、夏山が待ち遠しい季節かと思います。一方で、各地の低山では新緑が深まり、アジサイなどの季節の花が見頃を迎えます。高山か、低山か。どちらも魅力的ですが、せっかくの天気のいい休日、親子で近場の低山ハイキングもおすすめです。
名峰秀峰が点在する神奈川県で、三浦半島といえばビギナーからマニアまでうならせる個性的な低山のラインナップが魅力です。今回は、半島最高峰である標高242mの大楠山へ向かいました。公共交通機関を利用して、横須賀しょうぶ園からハイキングスタート。4月下旬から5月上旬にかけては色とりどりのフジが見頃ですが、6月以降はショウブやアジサイが園内を彩ります。
電車とバスの移動疲れもあったので、園内を散策しながらおやつ休憩。この日は日差しが強烈で、火照った体にソフトクリームがしみわたります。花まつりの時期限定でレストランも開かれるので、しょうぶ園をゴールしてもよかったのですが、大楠山は海岸への下山も可能です。子どもたちにとっての非日常感をより演出するなら、海へ下りたいじゃないですか。
しょうぶ園を起点とした場合、大楠山の最寄り登山口は阿部倉温泉(あべくらおんせん)から。登山道に入るとほんの5分ほどでみずみずしい緑と渓流が現われました。先ほどまで市街地を歩いていたのに、この自然との近さたるや。この沢沿いのコースなら日差しの強い日でも涼しいハイキングが楽しめそうです。
「恐竜が出そうだねえ」と、ちょっと身構えながら歩く子どもたち。沢沿いの道なので降雨直後や梅雨時期には泥濘の心配がありますが、整備の行き届いた登山道は子どもたちも歩きやすそうでした。しかし道が細く階段が多いので、すれ違いの際は注意が必要です。くれぐれも、背後から恐竜のフリをしてびっくりさせないように。
防護柵に囲われたゴルフ場の脇を進んでいくと、山頂までの二百数段の階段が待ち構えています。ラストスパートをかけて登り詰めると、広々とした大楠山山頂にたどり着きました。海の向こう、房総半島の眺めもばっちりで、ネコ耳が特徴の富山(とみさん)がよく見えました。山頂には老若男女問わずたくさんのハイカーの笑顔が集まり、この山の人気がうかがえます。
ところで、かつては山頂の展望台に登れたようですが、2024年現在では管理者不在のため、併設の休憩所含め閉鎖中です。また、山頂から少し下った大楠平のレーダー雨量観測所付近にある菜の花畑も、お手入れボランティア不在で荒れ果てていました。変わりゆく大楠山の風景を心配する声も多いようです。ただ、登山口にあった阿部倉温泉、ここも閉館していましたが、何やら復活のきざしがあるようです。今後の大楠山に期待が高まりますね。
さて、大楠山からは前田川方面へ下山します。しばらく一部泥濘を伴った湿り気のある道が続きますので、足元にご注意を。山道から舗装路に出ると、そこからは大楠山のハイライトともいえる前田川遊歩道へ。沢沿い、どころか川の中の飛び石を渡っていく天然のアスレチックに、子どもたちは大喜び。増水時は通行できなくなりますが、その場合は川横の舗装路で下山が可能です。「すごくおもしろい!最高!」その言葉が聞けてぼくは満足です。
前田川遊歩道の終点からバスでも帰途に就けますが、山から海へと繋げられるのが三浦低山の醍醐味。ちょっと足を延ばして秋谷海岸、そして立石公園へ。浜辺に押し寄せる波、磯の生きもの、シーグラス探しなど、子どもたちと存分に遊んでから帰りのバスへ。子どもたちに「今日一番楽しかったのは?」と聞くと、口をそろえて「「海!」」と笑顔。なるほど、大楠山から海に繋げるプランは大成功だったというわけです(笑)。
街からの近さにもかかわらず豊かな自然を抱いた大楠山。その魅力を存分に味わうことができました。昆虫はもちろん、野鳥や両生類などの生きものも見られ、親子で自然に親しむにも非常に適した低山だと思います。もちろん、子どもに全力で楽しんでもらうために万全な準備と知識、体力を備えて大人も全力で楽しみたいところです。
(山行日程=2024年5月3日)
MAP&DATA
コース
横須賀しょうぶ園~大楠山~前田橋コース~前田橋バス停(参考コースタイム:2時間35分)
※立石公園までは前田橋バス停から徒歩約10分

スラ男(読者レポーター)
関東近郊の低山をメインに活動。低山で出会う、人と山とが深く結びついた歴史や民俗などを調べるおもしろさにのめりこみ、低山ワールドのさらなる深みへ。そのおもしろさを親子で分かち合いたく、子どもたちの原体験を育む意味も込めて親子ハイキングを始める。
この記事に登場する山
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