金太郎伝説を訪ねる、箱根の秀峰・金時山
読者レポーターより登山レポをお届けします。スラ男さんは雄大な景色と金太郎伝説を求めて箱根・金時山(きんときやま)へ。
文・写真=スラ男
絶景と伝説を巡る山へ
「♪まさかりかついできんたろう」の童謡で知られる金太郎。彼が過ごした足柄山(あしがらやま)というのは南足柄市、地蔵堂周辺の山の総称ですが、その盟主が金時山です。金太郎は自慢の怪力を活かして、後に源頼光(みなもとのよりみつ)と出会い名を「坂田金時」と改め、活躍します。
金時山には幼少期の金太郎伝説が点在しており、歴史ロマンにひたりながら絶景を楽しむことができます。山頂からは富士山の雄大な姿が見られるのも人気のひとつ。どんな景色を眺められるか楽しみにしながら計画しました。
小田急線新松田駅からバスを利用して地蔵堂へ着くと、さっそくマサカリを担いだ金太郎の案内板がありました。金太郎の遊び石や生家跡といった、金太郎ゆかりの史跡を訪ねていきます。
本コースは「金太郎コース」として整備されていますが、ここ数年の豪雨被害により通行止めとなっていました。去年3月より晴れて通行可能となったので、このチャンスを逃すわけにはいきません。
見どころが満載の道中
舗装路を歩いていくと、家族でにぎわうキャンプ場に着きました。ここには夕日(ゆうひ)の滝というこれまた金太郎ゆかりの名瀑がありますので、ぜひお立ち寄りを。暑さを吹き飛ばす涼感あふれる滝の前では、これから滝行に臨む御一行がいたので見学させてもらいました。長髪に長髭を貯えた仙人風のスタッフいわく「滝行は冬が本場だよ。ぜひおいで」とのこと。
夕日の滝を後に、キャンプ場からは本格的な山道へ。しばらくは沢沿いで涼しげな音とともに快適なトレイルが続きます。途中、数匹のハンミョウに出合いました。ぴょこぴょこと歩く姿がかわいらしい。
金太郎の童謡どおり、さまざまな動物がいそうな深緑の森を歩いていきます。小さな丸太橋があり、まるで金太郎が架けた橋のようです。ハコネザサが茂る道を登り詰めて猪鼻砦(いのはなとりで)へ。ここから山頂までは、信じられない急登が続きます。
絶景と絶品、金太郎のシンボルが待っていた!
息も絶え絶えになりながら、金時山の山頂にたどり着きました。残念ながら富士山は雲の奥に姿を隠してしまいましたが、本日の目的は金太郎伝説。山頂に立つマサカリこそ、ぼくが追い求めていたものです。
山頂には2軒の茶屋があり、本日は金太郎茶屋のみ営業。暑いし汗だくですけど、アッツアツの「まさカリーうどん」をいただきます。とろみとスパイスがきいた味付けに汗が止まりません。え、持ってきたおにぎりを入れてもおいしいって? 間違いないじゃないですか!
箱根にある“尾瀬”!? 下山後の立ち寄りスポットも充実
絶品を堪能した後は、絶景も味わい尽くしたい。大涌谷(おおわくだに)の麓にある「仙石原(せんごくはら)すすき草原」は、今は緑の絨毯ですが秋には黄金色の海のような景色を見せてくれます。そして仙石原といえばもう一つ下山後に立ち寄りたかったのが「箱根湿生花園」。園内では低地から高山まで日本各地の湿地帯の植物が四季折々に花を咲かせます。花好きのハイカーにおすすめの場所で、特に仙石原湿原植生復元区の木道風景は、まるで尾瀬を歩いているようだともいわれます。箱根での登山は、下山後に観光名所も立ち寄るとより充実すること間違いなしです。
帰りのバスでは渋滞の発生により、運転手さんが箱根登山電車への乗り換えを案内してくれました。さすが箱根、訪れる人へのホスピタリティは山も人も一流です。
箱根の山の魅力はもちろん富士山や大涌谷の絶景、爽快な外輪山のトレイルにもあると思いますが、火山の恵みともいえる温泉なくして箱根は語れません。箱根には今や二十湯もの温泉場があり、だいたいどこの山を登っても下山後に温泉が待っています。それぞれの温泉の違いを楽しむ湯めぐりをするのもおもしろいかも?
(山行日程=2024年8月13日)
MAP&DATA

スラ男(読者レポーター)
関東近郊の低山をメインに活動。低山で出会う、人と山とが深く結びついた歴史や民俗などを調べるおもしろさにのめりこみ、低山ワールドのさらなる深みへ。そのおもしろさを親子で分かち合いたく、子どもたちの原体験を育む意味も込めて親子ハイキングを始める。
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