南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑦高知県の遍路道 概要と特徴
弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。
写真・文=岸田 明 カバー写真=ゴロゴロ休憩所付近。はるか彼方の室戸岬に向かって波の音を聴きながらひたすら歩く。これを修行といわずして、なんと呼ぼう
数ある弘法大師修行の地
弘法大師は、室戸岬・最御崎寺の遍路道の入口にある大規模な海食洞である御蔵洞(みくろど。「御厨人洞」とも書く)と、すぐ脇の神明窟(しんめいくつ)で修行したといわれている。弘法大師が修行した時は、この洞窟は今より5m程度低かったようで、洞窟から外に見えるのは空と海のみであったということから、法名を「空海」としたと伝えられている。ほかにも弘法大師が行水したといわれている「行水の池」や、弘法大師が一夜で造ったといわれる「観音窟」など、最御崎寺周辺には弘法大師にまつわる史跡が多い。
室戸岬灯台付近からは、土佐湾と対岸遠くに足摺岬も見える。ここに立つと、本当に地球が丸いという実感が持てる。弘法大師は自著の中で、「土州室戸崎に勤念す 谷響きを惜しまず 明星来影す 心に感ずるときは明星口に入り」と修行の模様を語っている。
真魚(空海の幼名)が、「土佐の室戸岬近くの御蔵洞で虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)の修法をしていた時、明けの明星(金星)が現われてその光を心に感じた時に、明けの明星が口の中に入ってきた」ということであるが、確かに夜に室戸岬の浜に出て砂の上に寝転がって天空を見て深呼吸すると、金星ばかりか天空の星すべてが肺に入って来るような気がする。
さらにその先の海成段丘の上にある第二十六番金剛頂寺から再び海岸線に下った所には、弘法大師修行の地といわれる不動岩がある。不動岩手前には不動堂があり、明治まで女人禁制の金剛頂寺に対する女人堂として多くの信者が参拝していたとのことである。さらにその先約15kmにある御霊跡も、弘法大師修行の地といわれている。
プロフィール
岸田 明(きしだ・あきら)
東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。
四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス
登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスと、その記録
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