平瀬道登山口から花の百名山・白山へ

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読者レポーターより登山レポをお届けします。naobonさんは白山(はくさん)を平瀬(ひらせ)道から日帰りで行ってきました。

文・写真=naobon


今回は、日本三霊山、花の百名山で有名な白山(2702m)を、岐阜県側の平瀬道から登ります。初めて白山に登ったのは、2017年の7月、石川県側の別当出合(べっとうであい)から、1泊2日の山行でした。2度目の白山は、前回同様、室堂で一泊したかったのですが、夏休み中の週末で山小屋の予約が取れず、やむなく日帰りに。夏の往復10時間の長丁場となるので、麓のゲストハウスに前泊し早朝出発で行くことにしました。登山前日は、平瀬道登山口の近くにある世界遺産の白川郷などの観光も楽しみました。

翌朝、5時前に平瀬道登山口駐車場に到着。白水(はくすい)湖の近くでキャンプ場も併設された、きれいで広い駐車場でした。

白山 平瀬道登山口
平瀬道登山口には建屋があります

5時30分過ぎに出発、最初から階段状の急登が続き、息が上がります。30分ほど進むと、倒木に伴うスズメバチ被害により数日前まで通行止めとなっていた箇所に到達。スズメバチがいないかヒヤヒヤしながら静かに歩きます。登山口から途中の大倉山避難小屋(現在改修中で使用不可)までコースタイムで2時間30分ほど、樹林帯の道をひたすら登ります。

白山 平瀬道 倒木による通行止め箇所
倒木による通行止めだった箇所

平瀬道は、室堂まで水場はありませんが、登山道はよく整備されていて、歩きやすい道でした。途中の標柱にはベンチもあり、小休憩をとることもできます。時折、緑がばっと開けて、北アルプスの遠望を楽しむことができました。

白山 平瀬道 アルプス遠望
アルプス遠望

大倉山避難小屋には、コースタイムより早めの7時30分ごろに到着。ここを越えると、お花畑の尾根道(大倉尾根)に出ます。白山といえば、「ハクサン」がつく植物で知られている花の百名山でもあり、尾根沿いには、ハクサンフウロ、ハクサンアザミ、タカネマツムシソウなどの花々が、太陽の光をサンサンと浴びて、イキイキと咲き乱れていました。

ハクサンアザミ
ハクサンアザミ
タカネマツムシソウ
タカネマツムシソウ
ハクサンフウロ
ハクサンフウロ
イブキトラノオ
イブキトラノオ

桃、白、紫など、色とりどりの花々に囲まれながら登り続けて、室堂平に到着。ここから白山室堂ビジターセンターまで緩やかな台地が広がるお花畑の散歩道が続きます。室堂ビジターセンターは、標高2450mにあり、宿泊施設(収容人数750名)や食堂、診療所、郵便局も併設された、白山の一大登山基地です。水場も売店もあり、必要物資を補給ができる、大変ありがたい場所です。白山の複数の登山道がここで合流することもあり、非常に多くの人でにぎわっていました。白山室堂ビジターセンターからは、鳥居の向こうに霊峰白山の立派な山頂を拝むことができました。

室堂台地から白山室堂ビジターセンターを望む
室堂台地から白山室堂ビジターセンターを望む

前回、白山を訪れた際は、室堂に到着後、まず山頂を往復し(コースタイム往復70分)、午後から自然観察会に参加しました。自然観察会は、室堂平に咲いているお花や自然について、ガイドの方から解説が聞きながら散策することができるのでおすすめです。翌朝は、暗いうちに山頂に登り、山頂で修行僧の読経を聞きながら、日の出を拝むという貴重な体験ができました。そんなことを思い出しながら、早めの昼食を取り、白山山頂へと出発します。

鳥居と白山山頂
鳥居と白山山頂

白山室堂から白山山頂までは、高低差約300m、コースタイム約40分の行程です。鳥居をくぐると、気持ちもピリリと引き締まります。整備された登山道をどんどん登り、途中、振り返ると、室堂の山小屋が遠くに見えました。

白山 室堂ビジターセンターを眼下にのぞむ
室堂ビジターセンターを眼下に望む

しばらくするとガスが上がってきて、白い世界に。神の世界にいざなわれた不思議な気分になります。10時40ごろ、白山の御前峰(ごぜんがみね、2702m)に登頂。頂上には、白山神社奥宮があり、この山が信仰の山であることをあらためて感じます。お参り後、山頂標柱で記念撮影。山頂でガスが晴れるのを少し待ちましたが、変わらないので、池巡りをして下山することとしました。

白山 ガスの中の山頂標柱
ガスの中の山頂標柱

白山は、活火山(常時観測火山)です。山頂付近には、それまでの花の山の穏やかな風景から一変し、いにしえの噴火の爪痕ともいえるゴツゴツした溶岩や複数の池が織りなす独特の風景が広がります。池巡りコースは御前峰から大汝峰(おおなんじみね)方面に向かい、翠(みどり)ヶ池や血の池、千陀(せんじゃ)ヶ池など、7つの池を巡りながら室堂ビジターセンターに戻る、70~80分のお散歩コースです。荒涼とした風景のなか、神秘的な深いブルーの水をたたえた池が、とても美しく、印象的でした。

白山 池巡り
白山 池巡り
池巡り

のんびりと池巡りを楽しみ、12時20分ごろに室堂ビジターセンターに戻ります。下山の前の最後の補給地、ありがたいことに太陽がまた出てきたので、暑さをしのぐべく、ファンタオレンジでのどを潤し、リフレッシュしました。宿泊であればここでビールが飲めるのに・・・と心にざわつきを覚えながらも、小休憩ののち、来た道を戻ります。平瀬道に入ると、室堂のにぎやかさと隔絶された静かな山道となりました。途中、一部切れ落ちた道に気を付けながら、一歩ずつ、前へ進みます。しばらく歩くと、眼下に水をたたえる白水湖が見えてきます。はるか彼方のゴール地点を見据え、風景や木々の植生の変化を楽しみながら歩くことができました。

壮大なサルノコシカケ
巨大なサルノコシカケ
眼下に白水湖が見えます
眼下に白水湖が見えます

登山口には、15時45分ごろに到着。休憩時間を含めると約12時間、山と花の世界にどっぷり浸った山旅でした。帰りに、道の駅「飛騨白山」に併設された「大白川温泉 しらみずの湯」に入り、源泉かけ流しの湯に打たれ、1日の疲れを癒しました。

(山行日程=2024年8月11日)

MAP&DATA

高低図
最適日数:1泊2日
コースタイム: 9時間25分
行程:【1日目】
大白川ダム(平瀬道登山口)・・・大倉山避難小屋・・・カンクラ雪渓・・・展望歩道分岐・・・白山室堂
【2日目】
白山室堂・・・御前峰・・・お池めぐり分岐・・・白山室堂・・・展望歩道分岐・・・カンクラ雪渓・・・大倉山避難小屋・・・大白川ダム(平瀬道登山口)
総歩行距離:約15,665m
累積標高差:上り 約1,670m 下り 約1,668m
コース定数:39
naobon(読者レポーター)

naobon(読者レポーター)

東京都在住、神戸市出身。夏山シーズンは日本アルプスの稜線縦走を、冬は低山・里山ハイキングや山城巡りを、気ままに楽しんでいます。山行後の温泉とビールにこの世の極楽を感じる、週末ハイカーです。

この記事に登場する山

石川県 岐阜県 / 白山山地

白山・御前峰 標高 2,702m

 石川県と岐阜にまたがる白山は、主峰・御前峰、大汝峰、剣ガ峰の3峰から構成され、17世紀中ごろまで噴火していた跡に翠(みどり)ガ池や千蛇ガ池などの7つの火口湖がある。  白山はその名のとおり雪の多い山である。昔から水源の山としてあがめられ、加賀、越前、美濃の三馬場より多くの登拝者が登った。  開山は養老元年(717)、越前の泰澄大師による。ゆえに越前禅定(ぜんじよう)道をたどる白山登拝者が多かったようだ。  白山の石川県側は、全国に三千社余りある白山神社の総本社・白山比咩(しらやまひめ)神社の境内で、頂上には奥宮がある。眺望はよく、北アルプスはもとより東海や近畿地方まで見渡せる。  都から近い高峰ということと、日本三名山として名が通っていることもあって、白山を詠んだ歌が『万葉集』などに数多く収められている。また近代文学では、登山家で作家の深田久弥が石川県出身ということもあって、白山を書いた作品がたくさんある。最近では高橋治が山麓の石川県白山市(旧、白峰村)に滞留することが多く、白山や山麓を舞台にした作品を書いている。  また、白山は高山植物の宝庫としても有名だ。和名や学名に白山にちなんだ名をつけられたものは30種ほどを数える。白山ならではの特産種がないのは残念だが、群落は見ごたえがある。またハイマツの樹海やブナなどの原生林には目を見張る。国有林地域は白山森林生態系保護地域に指定され、一時は伐採が進められたが今後は保護の方針と聞く。  登山道は石川、岐阜、福井3県より12コースある。最短で最も利用者の多い別当谷出合からの砂防新道は室堂(むろどう)まで4時間30分。同登山口からの観光新道は5時間、登りより下山に利用されている。名古屋方面の登山者がよく利用する大白川ダムからの平瀬道は室堂まで4時間30分あまり。以上が一般ルートである。  健脚者向の市ノ瀬からの別山・市ノ瀬道は室堂まで9時間30分。白山一里野温泉からの加賀禅定道は室堂まで13時間。岩間温泉からの岩間道と楽々新道は室堂まで12時間。中宮温泉からの中宮道は室堂まで16時間。鳩ガ湯からの鳩ガ湯新道は室堂まで12時間。以上は、登りよりも下山コースとして一部の登山者に利用されている。  石徹白(いとしろ)からの南縦走路は室堂まで14時間。白川村荻町からの北縦走路は室堂まで22時間。となると山岳会や大学クラブの独壇場である。これらのコースのうち、釈迦新道を除く各コースに避難小屋が配置されているのも白山の特色といえる。

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