曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の群落を楽しみに日和田山へ。駅前のカフェで電車を待ちながら一息

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展望の里山歩き、初秋の巾着田(きんちゃくだ)へ。気になっていた駅前のカフェでのんびり山の余韻を味わった。

写真・文=西野淑子


9月上旬、奥武蔵・日和田山(ひわだやま)を訪れた。

お目当ては9月に見頃を迎える巾着田のヒガンバナ(曼珠沙華)だった。西武秩父線・高麗(こま)駅から山頂を往復し、巾着田に立ち寄って帰る予定だったのだが、今年は酷暑の夏。開花がだいぶ遅れていた。登山口に向かう途中の道沿いは発芽した直後、あるいはつぼみをつけたヒガンバナが見られるばかり。まあ、残念だけど花の見頃は人の力ではどうにもならない。

巾着田のヒガンバナ
巾着田のヒガンバナ。2023年は満開のときに訪れた

天気はよく、気持ちよく歩くことができた。山頂からは関東平野がきれいに見渡せ、直下の金刀比羅(ことひら)神社の前からは奥多摩(おくたま)や丹沢(たんざわ)の山並みが眺められた。さすがに富士山は雲のなかだったけど、これだけ眺められれば上々だ。眼下には巾着田が一望のもと。高麗川が蛇行してできた地形、自然の力でこんなに不思議な形が造られるのかと毎回思う。

日和田山 金刀比羅神社から巾着田方面を望む
金刀比羅神社から巾着田方面を望む

モデルコース:日和田山

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 2時間12分
行程:高麗駅・・・鹿台橋・・・本郷信号・・・日和田山登山口・・・金刀比羅神社・・・日和田山・・・金刀比羅神社・・・日和田山登山口・・・本郷信号・・・鹿台橋・・・高麗駅
総歩行距離:約4,300m
累積標高差:上り 約270m 下り 約270m
コース定数:8

さっくり、ふんわり、ビールに合う米粉のピザ

登山口から高麗駅に向かう途中がだいぶ暑くて汗をかいた。

高麗駅の駅前のカフェに立ち寄って帰ることにした。長らくテナントが入っておらず、こんなにいい場所になにもないのは残念だと思っていたが、今年の6月、ようやくカフェがオープンしたのだ。

入口でオーダーをして入店するシステムだ。なににしようかな。

入口の立て看板にあったピザの写真がとてもおいしそうで気になる。ひとりでピザ、食べきれるだろうか。おお、サイズが3つもあるのか。どのくらいの大きさだろう。

「Sサイズは直径20cmぐらいです。Mサイズでご飯茶碗一杯分ぐらいのボリュームです」

・・・なるほど。あまりピンと来ないけどSサイズでいいかな。3種類のピザから、定番のマルゲリータをオーダー。暑くて喉が渇いていたのでビールも飲みたいな。ノンアルコールビールもお願いします。

ガラス張りの店内、窓際の席と長いテーブル席がある。ドライフラワーが飾られていたりしてしゃれている。テーブル席に腰掛け、外をボーッと見ながら待つ。

高麗駅からすぐの「DELICA TEN・SEN」
店は高麗駅からすぐ。テラス席もあり
高麗駅からすぐの「DELICA TEN・SEN」
明るいガラス張りの店内。ドライフラワーが飾られていた

まずノンアルコールビールが出てきた。見慣れない外国のビール瓶。グラスについで一口。爽やかな感じ、フルーティー。飲みやすくていいね、ピザと一緒に味わいたいなあ、まあでも時間がかかるのは仕方ないか・・・と思っていたら、すぐにピザも出てきた。出てくるタイミングが絶妙でニヤッとしてしまう。

「DELICA TEN・SEN」添加物不使用、ドイツのノンアルコールビール
添加物不使用、ドイツのノンアルコールビール
「DELICA TEN・SEN」マルゲリータピザ Sサイズ
マルゲリータピザ Sサイズ。アツアツをいただきます

Sサイズのピザ、お昼ごはんとして味わうにはちょっと小さいけど、ビールのお供としていただくにはちょうどいいサイズ感だったかもしれない。アツアツのピザを一切れつまんで一口。

・・・サクッ、ふわっ。軽やかな食感、へぇ、普通の小麦粉のピザじゃないんだ。米粉かな。トマトの酸味と風味、チーズもいい感じ。これはビールが進んじゃうね。本物のビールだったら飲み過ぎて危ないところだった、ノンアルコールで正解正解。

あっという間にビールとピザを平らげてしまった。電車の時間にはもう少しあるし、心地よい店内でもう少しくつろぎたいな。「自家焙煎コーヒー」の言葉につられて、コーヒーをオーダーした。すっきりとして飲みやすい。暑い夏でもおいしいコーヒーが飲みたくなるよねえ。

「DELICA TEN・SEN」すっきりとした味わいのCAWAZコーヒー
すっきりとした味わいのCAWAZコーヒー

帰り際にちょっとだけお話を聞く。ピザはやっぱり米粉だった。いただいたお店のチラシを見たら、無農薬や自然栽培の食材を主に使用していたり、各地からよい食材を取り寄せていたり、素材に配慮していることがうかがえた。・・・でもそれを声高に主張するでもなく、さりげなくおいしいもの、体によいものを提供しているんだな。ありがたい。

「DELICA TEN・SEN」の店頭で販売されていた米粉パン
店頭で米粉パンを販売していた

そろそろ電車が来る時間。幸せな気持ちでお店をあとにした。

好きな山の入口に、すてきなお店ができてよかったな。また来よう。

DELICA TEN・SEN

高麗駅の駅前に立つカフェ。石窯ピザや石窯パン、ドリンクなど、体にやさしい食材を使って丁寧に作られたメニューが味わえる。

電話 042-980-5370
住所 埼玉県日高市武蔵台1-1-1
アクセス 西武鉄道秩父線高麗駅からすぐ

この記事に登場する山

埼玉県 / 奥武蔵

日和田山 標高 305m

西武秩父線の高麗(こま)駅のプラットホームから北に見える低山の中にある山で、中腹に赤い屋根の金毘羅神社が見える。この山を中心にして歩くハイキングコースは初心者向けのものだ。 日和田山から尾根通しに歩くと、一等三角点のある物見山に達する。さらにヤセオネ峠、岩舟地蔵、北向地蔵へと歩き、左へ小さな尾根と沢を越えてユガテに出る。ここは山中の平地で人家と畑があり、南方への展望もよく、思わず足を止めてみたくなる所だ。ユガテから樹林帯を下って車道に出たら、左へ歩くと虎秀で、道の左手に福徳寺阿弥陀堂がある。それは美しい鎌倉期の建築物で、国の重要文化財に指定されている。また日和田山の西麓は、ロッククライミングの練習場である。 コースタイムは高麗駅から日和田山、物見山を経て、ユガテに下り、東吾野駅まで約4時間。

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きから沢登り、雪山登山まで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

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