黄金の湿原を歩く。秋の月山・弥陀ヶ原を日帰りピストン【紅葉レポート】

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読者レポーターより紅葉登山レポをお届けします。こうさんは草もみじが染まってきた月山(がっさん)へ。そろそろ見頃のようです。

文・写真=こう


紅葉の名所として名高い月山。例年、9月下旬には紅葉のピークを迎えるのだが、今年はどうも遅い模様。少しでも赤く染まった草もみじが見たかったので、朝日に染まる時間をねらって登山を開始した。

月山へ登るルートはいくつかあり、いちばん人気は南側の姥沢(うばさわ)口のルートとなるが、お目当ての弥陀ヶ原(みだがはら)に行くには、北側の羽黒山(はぐろさん)口から登る必要がある。羽黒山口は、アクセスはよくないが、八号目からのスタートになるため、より高い位置から登り始めることが可能だ。

登り始めるとすぐに弥陀ヶ原に到着する。太陽が出る方向に大量の雲があったが、ねらい通りに朝日に染まった草もみじを見ることができた。

月山 弥陀ヶ原
朝日で色濃く染まる弥陀ヶ原

草もみじは全体的に色づいていたが、よく見るとまだ緑色の葉も散見された。いちばんの見頃を迎えるのは今週末あたりになるだろう。

月山 弥陀ヶ原
弥陀ヶ原の池塘

弥陀ヶ原で日の出を迎えた後は、月山の山頂をめざした。急登は数えるほどしかなく、全体的になだらかで歩きやすい。途中に仏生池(ぶっしょういけ)小屋があるため、仏生池を眺めながら一休みするのもいいだろう。

月山 仏生池
青空を鏡のように映し出す仏生池

仏生池小屋から進むと、木々の紅葉が始まっていた。登山道の両側が紅葉していたため、色鮮やかな景色がしばらく続いた。少し登ったところで振り返ると、先ほどまで休憩していた仏生池小屋が見えた。

月山 紅葉に囲まれた登山道
紅葉に囲まれた登山道
月山 仏生池小屋
紅葉の奥に仏生池小屋が見える

山頂に向かう途中、行者返(ぎょうじゃがえ)しと呼ばれる急登がある。距離は短いが、登山者が多い日は渋滞が発生しやすいポイントだ。慌てる必要はないが、なるべく速やかに通過したい。

行者返しを過ぎるときつい登りはなく、再び緩やかに標高を上げる。大峰(おおみね)からは平らな稜線に木道が延びており、のどかな景色に癒された。

月山 大峰から山頂へ向かう
大峰から山頂へ向かう
雲海と鳥海山
登ってきた方向を振り返ると、雲海と鳥海山が見える

山頂標識に寄り道した後、月山頂上小屋の方へと進んだ。広々とした稜線を奥まで進むと、姥沢口から登ってくるルートと合流する。そこからは姥ヶ岳へと続くきれいな稜線が望める。

月山本宮前から見た月山頂上小屋
月山本宮前から見た月山頂上小屋
月山 姥沢口方面から見た月山神社
姥沢口方面から見た月山神社
月山 姥ヶ岳へと続く稜線
姥ヶ岳へと続く稜線

月山本宮東側の開けたポイントでしばらく休憩していたが、秋の冷たい空気で寒気を感じてきたので、名残惜しかったが下山を開始した。上りでは気づかなかった景色が目につき、写真に収めつつ、楽しみながらゆっくりと下った。

月山 所々、赤く染まった植物が見受けられた
所々、赤く染まった植物が見受けられた
月山 紅葉と草もみじ
紅葉と草もみじ

標高を下げ、木々を抜けると、眼下に弥陀ヶ原の景色が広がった。湧き上がる大量の雲が、高度感を演出してくれてみごとな光景だった。木道を進むと分岐があり、そこから直接駐車場に向かうこともできたが、まだまだ草もみじを楽しみたかったので、池塘群の方へと向かった。大きな池塘に映る青空に満足して、帰路についた。

月山 弥陀ヶ原を見下ろす
弥陀ヶ原を見下ろす
月山 弥陀ヶ原
弥陀ヶ原の池塘に映る青空と雲がきれいだった

(山行日程=2024年9月29日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 5時間44分
行程:月山八合目・・・仏生池小屋・・・月山・・・月山・・・仏生池小屋・・・月山八合目
総歩行距離:約11,200m
累積標高差:上り 約681m 下り 約681m
コース定数:21
アドバイス:登山口の八号目駐車場までの車道は10月15日ごろまで通行可能。道幅が狭く、カーブが多いため、通行には注意する。路線バスは9月までのため、10月の運行はない。
こう(読者レポーター)

こう(読者レポーター)

山形県在住。東北の山のほか関東甲信越、日本アルプスを月に6~8回のペースで登り、風景写真を撮っている。

この記事に登場する山

山形県 / 朝日山地

月山 標高 1,984m

 山形県のほぼ中央に位置し、羽黒町、立川町、西川町とに境を接している。  地質的には花崗岩、第三紀層を基盤にして、月山中央火山、姥ヶ岳火山、御浜火山、湯殿山火山等々からなる複式火山である。なかでも、月山火山は規模も大きく、1500m以上の東側に火山の原形を残し、緩やかな半月型の優美な姿を形成している。この山姿から臥牛(がぎゆう)山とか犂牛(くろうし)山ともいわれる。  一方、西側は古い爆裂火口壁で、溶岩流と噴出物の重なり合った荒々しい縞模様を望むことができる。  弥陀ヶ原から山頂へと続く表参道の途中に小さな崖が何カ所か見られる。これは、月山火山が間欠的に噴出した溶岩流の末端にあたる所といわれている。8合目の弥陀ヶ原は溶岩台地上の広い湿地帯で、肘折コースの念仏ヶ原とともに高山植物の豊富な所として知られている。  日本海から近いため、冬の季節風は多量の積雪をもたらし、東側に大雪城(おおゆきしろ)をはじめとする雪田や越年雪を残す。月見ヶ原の雪田は、小型のカールのような凹地で、典型的な雪窪地形をなしている。さらに、その内部には、半月形の月食堤や階段状砂礫といった氷河周辺に発達する地形が見られる。そして、この雪が亜高山針葉樹林を極度に貧弱にしてきた。東北という位置もさることながら、月山の多雪さを物語っている。  山頂の月山神社には、農業の神「月読之命」を祭り、開山は崇峻天皇第一皇子の蜂子皇子とされている。山頂とはいっても目立った頂はなく、ヒナウスユキソウ、クロユリ、ハクサンイチゲ、チングルマなどが咲き誇り、神泉池をのせる広大な高原である。鍛冶小屋跡への下り口の所に松尾芭蕉「雲の峰いくつ崩れて月の山」の句碑が立っている。  7月から8月にかけては、五穀豊穣、家内安全、海上安全を願う白衣に金剛杖の道者で今でも大いに賑わう。登拝路は、八方七口といわれていたが、月山高原ラインの羽黒口、国道112号の六十里越街道からの姥沢口と仙人沢有料道路経由の湯殿山口が整備されている。いずれの登山口からも2~3時間の登高で容易に山頂に立てる。  また、近年のレジャーブームを反映して、4月になると雪に埋まったリフトを掘り起こして、スキー場がオープンする姥ヶ岳南・東斜面や姥沢を中心に夏まで多くのスキーヤーで賑わう。しかし、リフトで運び上げられた人々と、多雪で守られてきた植生のバランスの崩れが年々大きくなっている。

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