熊野御幸の道・熊野古道紀伊路②大阪府下の区間について
熊野御幸(くまのごこう)とも呼ばれる熊野詣(くまのもうで)は平安時代中期、宇多(うだ)上皇によって始まったとされており、その後、白河上皇、鳥羽上皇など上皇たちによって毎年繰り返され、活況を呈することになる。紀伊路(きいじ)はこの熊野御幸の道として利用され、江戸時代には武士・農民をはじめ一般庶民による熊野詣でが盛んに行われ、「蟻の熊野詣」と形容されるほどにぎわった。
写真・文=児嶋弘幸、トップ写真=風情漂う山中宿の町並み
久米田から南近義神社
約9.3km・約2時間20分
久米田から南下していくと、府道30号から東側の古道に入った所に半田(はんだ)一里塚があり、隣に「小栗街道」の石碑が立てられている。
水間(みずま)鉄道を渡り、JR和泉橋本駅にて阪和線の踏切を渡る。府道64号から脇道に入って進むと、近木(こぎ)王子を合祀する南近義(みなみこぎ)神社がある。
南近義神社から樫井古戦場跡
約8.3km・約2時間
南近義神社から貝田橋を渡り、四角池を右に見て国道26号を横断。池の堤防に出たのち、府道64号と重複・並行する。府道64号は紀州街道とも呼ばれた道で、江戸時代の参勤交代の道として利用され、熊野街道(古道)とも重複する。佐野王子跡から国道26号を斜めに横断し、市場(いちば)の道標「すぐ和歌山道」に従い直進。関西空港自動車道をくぐり、樫井(かしい)の旧街道に入る。
樫井は五体王子の一つ樫井王子跡のあったところで、熊野御幸の際には相撲や白拍子の舞などが奉納されたという。やがて樫井古戦場跡へ到着。徳川方の浅野勢と豊臣方の大野勢が、ここ樫井川付近で激しい戦闘を繰り広げた所だ。大阪夏の陣の始まりともいわれるこの戦いでは、豊臣方が大敗を喫することになる。
樫井古戦場跡から山中宿
約7.4km・約1時間50分
樫井古戦場跡を過ぎ、境内に海会寺(かいえじ)跡の史跡公園が整備されている一岡(いちおか)神社に着く。この後、信達大苗代(しんだちおのしろ)、信達市場(しんだちいちば)の旧街道を進んでいく。
信達一の瀬(しんだちいちのせ)王子跡を過ぎた所でJR阪和線の踏切を渡ると、古道はJR阪和線と並行するようになる。やがて山あいの風景になり馬目(うまめ)王子跡を過ぎると、いよいよ山中宿に入っていく。山中宿は江戸時代に20軒近くの旅籠が軒を並べていたという宿場町で、石畳などが整備され紀州街道の雰囲気と面影を今に伝えている。
山中宿から紀の川
約13.4km・約3時間20分
山中宿から、府道64号をたどって山中川沿いに南進を続ける。大阪府と和歌山県の府県境の堺橋を過ぎ、和歌山県の最初の王子社である中山王子跡へ。この後いよいよ熊野古道最初の難所といわれた雄ノ山(おのやま)峠越えにかかるが、今では阪和自動車道やJR阪和線にとって代わられている。雄ノ山峠を越え、下りかけた所から紀の川(きのかわ)がちらりと見える。
湯屋谷に下って分かれ辻を左に下ると、かつての関所である白鳥の関跡、山口王子跡に着く。この後、和歌山県道7号と合流し、西進。上野集落の路地に入ると、中ほどに川辺王子跡がある。古くは、紀の川がこのあたりを流れていたことがその名の由来とされる。中村王子跡、力侍(りきし)神社を経て、川辺渡しの紀の川堤防に登り、川辺橋を渡って布施屋(ほしや)駅へ向かう。
ここまで大阪府下の概要を紹介してきたが、次回からは和歌山県内の区間について紹介していく予定だ。
プロフィール
児嶋弘幸(こじま・ひろゆき)
1953年和歌山県生まれ。20歳を過ぎた頃、山野の自然に魅了され、仲間と共にハイキングクラブを創立。春・夏・秋・冬のアルプスを経験後、ふるさとの山に傾注する。紀伊半島の山をライフワークとして、熊野古道・自然風景の写真撮影を行っている。 分県登山ガイド『和歌山県の山』『関西百名山地図帳』(山と溪谷社)、『山歩き安全マップ』(JTBパブリッシング)、山と高原地図『高野山・熊野古道』(昭文社)など多数あるほか、雑誌『山と溪谷』への寄稿も多い。2016年、大阪富士フォトサロンにて『悠久の熊野』写真展を開催。
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