南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑨愛媛県の遍路道 概要と特徴
弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。
写真・文=岸田 明
愛媛県の遍路道にある歴史ある町並み
遍路道を歩いていて、最初に通る歴史的な町並みは高知県室戸の吉良川(きらがわ)であるが、次に特に強く印象に残るのが、愛媛県の遍路道に連続する西予(せいよ)市の宇和町卯之町(うわちょううのまち)、大洲そして内子の3つの町並みであろう。
宇和町卯之町へは、第四十三番明石寺(めいせきじ)から小山を越える旧遍路道を抜けて、重要伝統的建造物群保存地区になっている旧宇和島街道の中心部に入る。町の中には宇和米(うわまい)博物館や重要文化財の開明学校がある。宇和米博物館は旧宇和町小学校が移築された建物で、109mの廊下の雑巾がけでタイムを競うレース「Z-1」グランプリで有名だ。開明小学校は昭和世代にとって郷愁を誘う、心のふるさとのような建物だ。
宇和町からは国道と絡みながら北上し、愛媛県第一の河川・肱川の源流部を登り鳥坂峠を越え長い道を歩くと、大洲に入る。大洲は伊予の小京都といわれ、江戸、明治時代の面影を残す町並みが残っている。NHK朝ドラ『おはなはん』のロケが行なわれた「おはなはん通り」や、肱川橋からの大洲城の眺めが印象的だ。
内子の町には時代から取り残された、全く異次元の美しい町並みが奇跡的に残っている。内子は江戸時代後半から明治時代にかけて木蝋(もくろう、ロウソクの原料)産業で栄えた町で、重厚な建物が非常に状態よく保存されている。また大正時代の重要文化財で、現在も上演が行なわれている「内子座」など見るべき歴史遺産も多い。
これら美しい町並みが残る卯之町、大洲、内子のいずれかに泊まりたい場合には、朝の出発地と自分の脚力との相談になるだろう。そして遍路は、大江健三郎の生家のある大瀬周辺の雰囲気のある美しい町並みを抜け、修行の核心部である久万高原へと歩みを進める。
プロフィール
岸田 明(きしだ・あきら)
東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。
四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス
登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスと、その記録
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