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すばやく濾過できる「プレス式」浄水ボトルを西表島の山でテスト! グレイル/UL.ウォーターピュリファイヤーボトル

高橋庄太郎の山MONO語り

インナープレス式を支える丈夫なボディ構造

UL.ウォーターピュリファイヤーボトルはその構造上、アウターボトルに入れた水をすべて濾過できるわけではなく、底部にはどうしても少し水が残ってしまう(下の写真の左側)。この浄水器を持ち運ぶときは、底部の水は流してしまったほうが軽量になっていい。

また、フィルター内部は水が含まれたままで、ずっしりと重くなっている。浄水するように再び圧力をかけるとある程度は流れ出してくれるが、それにも限度がある。山中ではともかく、帰宅後にはすばやく乾燥させないとカビが生じる恐れもあり注意が必要だ。これもまた他の浄水器でも同じことだが、帰宅後のメンテナンスをおろそかにしてはいけない。

ところで、このインナープレスを押し下げて圧力をかけるシステムは、非力な女性や子どもには使いにくいのではないかと思われる。じつはかなりの力を使わねば最後まで押し切ることが難しいのだ。事実、今回の旅の間、周囲にいた女性や子どもにも試してもらったが、浄水にはやはり「473ml/15秒」という数値の数倍の時間がかかってしまった。男性だとしても、けっこうしっかりと力をかけなくてはいけない。

それだけの圧力でも破損しないように、アウターボトル、インナープレスのメイン素材は厚手で頑丈なポリプロピレンだ。その結果、実測の総重量は274gと、見た目以上にずっしりとしている。実際、UL.ウォーターピュリファイヤーボトルとほぼ同じ容量500mlの樹脂製ボトルは100g程度のものが多く(モンベルのクリアボトル0.5Lの場合、95g)、約3倍の重量である。もっとも浄水機能が付加されているわけだから、この重量増は当たり前だ。同時にそれだけ丈夫ということでもあり、石の上に置いて思いっきり体重をかけてもまったく歪まず、壊れそうな雰囲気は一切ない。

そういえば、UL.ウォーターピュリファイヤーボトルの商品名には「UL」、つまり「ウルトラライト」という言葉が冠せられているようだ。だが、これは文字通りに超軽量ということではなく、このような優れた工夫がある浄水器としては超軽量なもの、と考えたほうがいい。それとも「UL.」には別の意味があるのだろうか?

圧力をかける際は、インナープレスにはフタをしたほうがよい。撮影の都合上、先の写真ではフタを外してプレスをかけたが、この状態だとインナープレスのフチが手の平に強く食い込み、人によっては痛みを感じそうなのだ。もちろん、せっかくきれいにした水が汚れないようにする目的もある。ただし、フタを完全に閉めると空気が抜けないので内部の圧力が高まってしまい、浄水が進まない。空気の通り道を確保するように、わずかに緩めておくとよいだろう。

ともあれ、浄水を行なう際はアウターボトルに垂直に強い力をかけねばならないわけだが、そのためにはボトルの底が地面や石の上で滑るようなものでは困る。

UL.ウォーターピュリファイヤーボトルはその点を考慮し、ボトル底面に柔らかな円形のシリコン樹脂(水色の部分)を組みあわせ、スリップしにくくしている。この工夫は非常に効果的だ。このシリコンがなければ、圧力をかけているうちにボトルが簡単に滑ってひっくり返ってしまうだろう。地味な部分だが、このディテールには感心した。

先に述べたように、この浄水器のフィルターは、300回(150L)の浄水に耐えうる性能を持っている。しかし他の浄水器に比べると、濾過できる水量が多いわけではない。これを長持ちさせるため、とくに汚れた水の場合はひと工夫するとよい。それは簡単なことで、コーヒーフィルターや手ぬぐいのような布地を併用し、浄水前に粒子の大きい異物を取り除いてしまうのだ。

今回の滝の上でも淀んだ場所から水を汲むと、溜まった泥が巻き上がり、かなりの濁りが出てしまった。だが小さなコーヒーフィルターだけで十分に異物を漉しとることが可能だった。

しかし、このように事前の濾過をしないで使うとどうなるのか? 新しいブルーを使うのはもったいないので、すでに昨年から僕が愛用していたオレンジのもので試してみることにした。

汲み取った水には泥などの粒子がたっぷりと漂い、これをそのまま浄水器にかけるのは、テストとはいえ気が引けるほどである。だが、これくらいのほうがフィルターの目詰まりの状態を判断できるだろう。

オレンジ色のUL.ウォーターピュリファイヤーボトルではすでに50L以上も浄水したことがあるはずだ。そこからさらに今回は、泥混じりの水を何度も濾過していく。10数回も異物混じりの水を浄水すると、手で押し込んだときの反発力が強くなり、フィルターから水が流れ出てくる時間もかなりかかるようになってしまった。

しかし、力と時間がかかるだけで透明な水になることは変わらない。また、アウターボトルから外したインナープレスには泥や葉がついていたが、流水の中で振るように洗っているとフィルターに取り込まれた泥などの粒子も少しは流されたようで、浄水能力はいくらか回復した。とはいえ、すばやい浄水をいつまでも保つならば、泥混じりの水を浄水するときだけでもコーヒーフィルターのようなものをやはり併用すべきだ。

濾過した水を持ち、山頂で喉を潤した

ピナイサーラの滝の上を出発し、先ほどの分岐からテドウ山へ。立派な板根をもつスオウの木がいかにも南国の山である。ただし、風が吹いていた滝の上とは異なり、亜熱帯ジャングルのなかには風が通らず、思ったよりも暑く感じる。

周囲には背の高い樹木や笹が繁茂しているが、ときおり海の方角の視界は開け、曇り空のなかにブルーグリーンの海が眺められた。

ルートの途中には小さな沢や湿地も点在し、水たまりや細い水の流れが各所に見つけられる。どこかにイノシシのヌタ場もあることだろう。僕が履いていた沢靴はドロドロになってしまい、ソックスの内側には小さなヒルさえついていた。

浄水器を持ってさえいれば、こんな場所ですら飲料水を確保できる水場に見えてくるのだから、不思議なものだ。しかし喉を潤せるほどの量の水を得るためには、アウターボトル内にたっぷりと水を入れなければならないが、上の写真のようにアウターボトルだけで浅い流れから水を汲める量には限度がある。こういう場所で使うことも想定すれば、別途水汲み用のカップを持ち歩いたほうがよいだろう。直接アウターボトルですくい取っていると、コーヒーフィルターなどで事前濾過をすることもできないのである。

森の中を延々と歩き、山頂に到着。標高は441mしかないが、海岸線から歩き始め、足場が安定しない亜熱帯ジャングル内を通ってきたこともあり、思いのほか喉が渇いていた。

山頂で飲んだ水は、先ほどの泥っぽい水たまりで汲んで浄水したものだ。このテドウ山に登った人の中で、あんな場所の水を飲んだことがある人はいるだろうか? その味はほのかに甘く、雑味もなくておいしかった。なによりその山域の水を安心して味わえると、自分が自然と一体になっていく気分が高まり、うれしくなってしまうのであった……。

改めて本商品のメリット、デメリットを考察

最後に、UL.ウォーターピュリファイヤーボトルのメリットとデメリットをまとめたい。

デメリットがあるとすれば、150Lの水を浄水できるというフィルターの性能だろう。他社のポンプ式や吊り下げ式に付属している浄水器には、この10倍以上、なかには数十倍も使えるものが珍しくない。150Lだけでは思ったよりもすぐに使用限度を迎え、交換用の浄水カートリッジを何度も買わねばならず、費用がかかってしまう。だが浄水器が必要な場所に行く機会が少なく、使用頻度が少ない人ならば、大きな問題ではないはずだ。もうひとつ問題は、圧力をかけるときに大きな力が必要なことだ。女性や子どもが使用するのをためらう原因になりかねず、今後はそれほどの圧力が必要ではない浄水カートリッジが開発されるとよさそうである。

一方、メリットといえば、なんといっても簡単に使えることだ。何度もレバーを押して圧力をかけなければならないポンプ式、浄水をするたびにチューブや水筒をセッティングしなければならない吊り下げ式、疲れていると吸い込む力をかけることすら嫌になる一般的なボトル式に比べ、圧倒的といってもよいほど扱いが楽なのである。通常の水場はいうまでもなく、歩いているうちに偶然見つけた水たまりや沢からでも瞬時に水が飲めるのは、大きなアドバンテージだ。ボトルは少々重めだが、破損を気にしなくてよいほど丈夫であり、しかもそのまま水を入れて持ち運べるのもよいポイントである。

フィルターの能力を考えれば、UL.ウォーターピュリファイヤーボトルの使用は行動中にとどめ、テント場などでの調理や出発前にグループ全体の飲料水を確保するためには、大量の水を濾過できるフィルター付きの他の浄水器を併用するのが正解かもしれない。だが、もしも持っていける浄水器がひとつだけだとしたら……。僕自身はフィルターの買いなおしをたびたびしなければならないとしても、このUL.ウォーターピュリファイヤーボトルを選ぶだろう。それだけ、この浄水器の簡便さは大きなメリットなのである。

 

登った山
テドウ山 標高441m

料理・食料
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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