三六〇度の大絶景が広がる山頂、大小アルプス
読者レポーターより登山レポをお届けします。スラ男さんは栃木県のご当地アルプス・大小アルプスへ。
文・写真=スラ男
日本各地に存在するご当地アルプス、なかでも南栃木には小規模ながらバリエーション豊かなご当地アルプスがハイカーを楽しませています。佐野市から足利市にかけて横たわる低山帯は、大小山(だいしょうやま)をメインピークとした“大小アルプス”と呼ばれ、300m前後の標高とは思えないほどの大パノラマが広がっています。駅からハイキングが可能なのもうれしいところです。
朝一番の電車を利用して、JR富田駅へ。日が出始めたばかりのシンとした空気の漂う町中を縫って、まずは大小山の登山口をめざします。途中の何カ所かには道標も設置されているのが親切でありがたい。地元によく愛されているコースなのだなと実感します。
大通りに面した三柱(みはしら)神社を左に曲がり、田園風景を眺めながら歩いていくと、山並みに白く輝く「大」と「小」の巨大看板が見えました。その正体は、大小山に住まう大天狗と小天狗のことだそうで。登山口には阿夫利(あふり)神社があり、本家である丹沢大山(たんざわおおやま)から勧請されたものです。ということは、大小天狗は大山からついてきたのでしょうか。
ちなみに、大小山はあの一帯の総称で、最高峰は妙義山(みょうぎさん)です。
さて、登山コースは二通りあるのですが、ぼくは迫力ある岩登りができる妙義山回りのコースへ。ゴルフボールがついたおもしろいゲートをくぐると、いきなり段差の激しい急登となります。とはいえ、標高の低さもあり10分もかからないで尾根に上がりました。開けた場所から振り返れば、眼下には端正な西場富士、その奥には佐野の山並みと筑波山のシルエットが見えました。
雑木林の茂る尾根は露岩まじりで、石灰岩がよく採れる南栃木の地質を感じさせます。尾根をふさぐように現われた巨大な岩壁は大岩という奇岩スポット。ロープと鎖を使ったアスレチックのような動きを要求されますが、登り切った岩の上からの眺めは絶品です。
岩稜帯の登りを繰り返し歩いていくと、岩場の山頂、妙義山に到着です。大小山というピーク自体はここから少し南にありますが、大小山の絶景といえばここを指します。
山頂からの眺めはすばらしく、北には日光連山、西には佐野の低山と筑波山、東にはこれから歩く大小アルプスの連なりと、その奥に上州の山々、赤城山と浅間山まで!
そして、なによりも感動したのは関東平野の大パノラマ! 神奈川の大山から始まる丹沢山地、その奥に冠雪した富士山が頭をのぞかせ、奥多摩、秩父と山脈をなぞっていくと、右端に特異な山容の荒船山までくっきりと見えました。
妙義山で絶景を堪能しつつ、大小アルプスを進んでいきます。途中には崖を思わせるような岩場の下りや、岩場のトラバースもあり油断なりません。特にこの時期は落ち葉も堆積しており、「低山だから」という軽い気持ちでの入山は遭難のリスクにつながりますのでお気をつけください。
幾度かのアップダウンを経て、越床(こしどこ)峠からエスケープも可能です。病院がすぐ近くにあることから、かつては生活道だったのでしょうか。この先、北側が足利鉱山の所有地で一部立入禁止となっているので、迂回路を経てアルプスをつなげていきます。
本日最後のピーク、意外と大きな山頂標識の大坊山(だいぼうさん)は、かつて山火事に見舞われた悲劇の山。今では緑を復活させましたが、足利で山火事と聞くとお隣にある両崖山(りょうがいさん)での山火事が記憶に新しい。それもあってか、この山域では「山火事注意」の看板が非常に多く見られました。
足利市街地が近づいてくると、紅葉に合わせたお祭りでしょうか。太鼓の音が響いてきました。こういった生活音が山の中まで入ってくるのも低山の魅力なのかなと個人的には思います。
(山行日程=2024年12月1日)
下山メシ
「食事処ひじり」のからあげ定食
山の楽しみのひとつに「山で食べるごはん」というのがありますが、今回はそれをグッとこらえ、「下山後に食べるごはん」、いわゆる“下山メシ”を楽しみにしてきました。大坊山から30分ほど町中を歩いて、「食事処ひじり」さんへお邪魔します。こちらのからあげ定食は、なんと同時にお店に入ったお客さん全員が注文するほどの人気メニュー。ザクザクとした食感の薄衣の中からジューシーな鶏肉が現われ、ご飯がすすみます。
相席になった地元のお父さんとも話が弾み、また足利の町が好きになってしまいました。
ドラマ『下山メシ』放送中!
・各話放送直後より「TVer」にて見逃し配信
https://tver.jp/series/srwqr08jrt
・各話放送終了後より「Netflix」にて見放題独占配信
https://netflix.com/title/81944249
ドラマの原案となった山と溪谷オンラインの連載はこちら。
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=19
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スラ男(読者レポーター)
関東近郊の低山をメインに活動。低山で出会う、人と山とが深く結びついた歴史や民俗などを調べるおもしろさにのめりこみ、低山ワールドのさらなる深みへ。そのおもしろさを親子で分かち合いたく、子どもたちの原体験を育む意味も込めて親子ハイキングを始める。
この記事に登場する山
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