駿河湾・南アルプスも見通す眺望が魅力の沼津アルプス
読者レポーターより登山レポをお届けします。上町嵩広さんは静岡の人気のご当地アルプス・沼津(ぬまづ)アルプスへ。
文・写真=上町嵩広
ご当地アルプスのひとつ、西伊豆にある沼津アルプスの縦走に行ってきました。沼津駅の南の多比(たび)バス停から、海岸線沿いの丘陵を縦走して沼津駅に戻るように北上します。標高400mにも満たない丘陵地帯ですが、想像以上に起伏に富み、なかなか侮れないハイキングコースでした。
JR東海道本線・沼津駅から路線バスに乗りおよそ25分、多比バス停で下車してスタートです。バス停から北側にそそり立つ丘陵に向かって歩き出します。丘陵の中腹までは簡易舗装された坂を上がっていきますが、登山靴の足には少しつらい。
ルートはやがて山道となり、手作り感満載の道標に従ってようやく稜線に上がりました。行く手の鷲頭山(わしずやま、392m)の山頂も頭を出しています。稜線は意外に岩が多い印象です。露岩であったりガレ場であったり。その尾根の両側にウバメガシなどの常緑広葉樹がニョキニョキと生い茂り、一帯はまるで緑のトンネルです。
稜線を北へ進みいったん多比峠まで下ると、今度は鷲頭山の頂上に向かって一気に急斜面を登り上げます。なかなか手強い。ふくらはぎとアキレス腱がピーンと伸ばされます。石灯篭が見えてくると、今回のルートの最高点の鷲頭山です。
山頂からは左手に駿河湾の眺望が広がっています。海岸線のさらに奥、青空を背景に遠く見える白い頂の連なりは南アルプスの峰々。はっきりとは識別できませんが、聖岳(ひじりだけ)、赤石岳(あかいしだけ)や荒川三山(あらかわさんざん)が突き出ているようです。さっそくの展望に感嘆します。この日でいちばんの眺めでした。
鷲頭山を下り、稜線を再び北上。この先、小鷲頭山、徳倉山(とくらやま)そして横山と小ピークが連なります。そのたびに登り返しが断続しますが、ピークの前後はいずれもけっこうな急傾斜です。この時期は道を覆う落ち葉に足を取られて滑りやすいので油断できません。特に鷲頭山と小鷲頭山の前後はいわば核心部といえるかもしれません。
小鷲頭山を越えて中将岩(ちゅうじょういわ)まで下ると一安心。ここは源平争乱の折、源氏に捕らわれた平家の有力武将・平重衡(たいらのしげひら)が隠れ住んだと伝わっている岩屋です。
中将岩から森を抜け出て一転、ススキ原が広がります。開放的で爽快な稜線歩きが楽しめます。駿河湾の眺めはもちろん、振り返ると踏破してきた鷲頭山のピークを確認することができました。
さらに稜線を北上していきます。再び常緑広葉樹の森となり、徳倉山そして横山へと稜線の登降を何度も繰り返します。けっこうシンドい。ようやく横山まで来ると沼津市の中心地にも近づき、町の音がよく聞こえてくるようになりました。
横山を下るといったん車道に出ます。道路を渡って向かいの斜面に取り付き、最後のピーク・香貫山(かぬきやま)をめざします。舗装道路と山道を交えて斜面を登り詰めていくと香貫山公園の桜台に出ました。香貫山は沼津の桜の名所として知られており、ソメイヨシノが周囲にたくさん植栽されています。
今回は香貫山公園の展望台へ向かいました。展望台に着くと四方がぐるりと見回せます。残念ながら午後から雲が空を覆うようになりましたが、それでもなかなかの展望です。背後にはこれまで歩き続けてきた沼津アルプスの山並み。正面には駿河湾、そして右へ目を移すと富士山と愛鷹山(あしたかやま)、さらに右手には箱根外輪山の連なりでしょうか。さえぎるものがないパノラマ風景は壮観。本コースの最後のごほうびとしてゆっくり堪能しました。
展望台から車道を下り、香陵台(こうりょうだい)を経て沼津市街の黒瀬(くろせ)側の登山口に出ます。今回はここがゴールです。近くにバス停もありますが、沼津駅までは徒歩で30分程度です。
沼津アルプスは、南アルプスまでも見通せる駿河湾の眺望がすばらしく、また起伏に富んで歩き応えもあり、冬の低山縦走に絶好のハイキングコースだなと感じました。今度は桜の季節にまた来たいと思います。
(山行日程=2024年12月20日)
下山メシ
「沼津餃子の店 北口亭」の沼津餃子
下山メシは「沼津餃子の店 北口亭」さんにおじゃましました。沼津餃子は“ゆで焼き餃子”と評されることもある、ちょっと独特な餃子です。いったん焼いて焼き目を付けてからたっぷりのお湯でゆで上げており、そのため食感は柔らかくもっちりとしています。焼き餃子のようなパリパリ感はありませんが、余計な油が落とされあっさりしてつるんといただけます。具だくさんの餡がうれしいです。
お店は沼津駅北口から徒歩10分ほどの県道414号沿いにあります。ごちそうさまでした。
ドラマ『下山メシ』放送中!
・各話放送直後より「TVer」にて見逃し配信
https://tver.jp/series/srwqr08jrt
・各話放送終了後より「Netflix」にて見放題独占配信
https://netflix.com/title/81944249
ドラマの原案となった山と溪谷オンラインの連載はこちら。
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=19
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上町嵩広(読者レポーター)
登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。
この記事に登場する山
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