達磨山と金冠山、冬晴れの西伊豆絶景稜線を歩く

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読者レポーターより登山レポをお届けします。下島朗さんは伊豆の低山を繋ぐ絶景の稜線へ。日帰りで登れる山ですが、麓で一泊して満喫したそうです。

文・写真=下島 朗


冬、太平洋側は乾燥した晴れが続きます。朝夕はそれなりに冷え込みますが、日中は暖かさを感じることも。明るい日差しの下、ゆったりと低山歩きを楽しめる季節です。

今回は、絶景の稜線で知られる西伊豆へ行ってきました。

達磨山登山&夕日観賞

昼前に自宅を出発して、伊豆半島の達磨山(だるまやま)へ。西伊豆スカイラインの戸田(へだ)駐車場に着いたのが午後3時ごろ。支度を整えて、さっそく山頂をめざします。

戸田駐車場の標高は880m、達磨山が982mなので標高差は約100m。達磨山は、この山域の最高峰ですが、ゆっくり登っても20分ほどで山頂に到着します。

南側から見た達磨山
南側から見た達磨山。手前の駐車場から手軽に登ることができる

山頂に着いたとき、すでに冬の日は傾き始めていました。駐車場にいるときから西風が強かったのですが、山頂はいっそう風が強く、雪こそないものの気分は冬山でした。

とはいえ景色はすばらしく、三六〇度見渡すことができます。

日が傾きはじめて光が赤味を帯びている
16時前なのに、日が傾き始めて光が赤味を帯びている
駿河湾越しに富士山と愛鷹山、手前に金冠山と小達磨山が見える
駿河湾越しに富士山と愛鷹山、手前に金冠山と小達磨山が見える
手前の水面は駿河湾の最も奥まったところ
手前の水面は駿河湾の最も奥まったところ。淡島の向こうに沼津アルプス、さらに奥に箱根の山が見える
南東には天城山脈を遠望する
南東には天城山脈を遠望する。左寄りのピークが天城山の最高峰・万三郎岳
駿河湾に夕日が沈む
駿河湾に夕日が沈む。正確には御前崎のあたりですが

下りは約10分。夕日を見てから下山しても、明るいうちに駐車場まで戻ることができました。

金冠山・達磨山縦走

翌朝、未明に戸田峠の駐車場へ。空が白み始めるのを待って金冠山(きんかんざん)へと向かいました。こちらも、駐車場から山頂まで徒歩15分。日の出前に到着しました。

夜明け前の金冠山山頂
夜明け前の金冠山山頂、まだ対岸の街明かりが目立つ

日の出の時刻が近づくと、富士山の山頂が赤く染まりました。標高が高い富士山の山頂部には朝日が当たっていますが、標高が低い金冠山ではまだ太陽が見えません。

山頂部の雪
今年は山頂部の雪が少ない。それでも富士山の気品と神々しさが際立つ
手前の山にも光が当たり始めた
手前の山にも光が当たり始めた。この瞬間に立ち会えたことに感謝

富士山の右側には箱根の山が見えています。左側には南アルプスが見えるはずなのですが、このときは雲に隠れていてほとんど見ることができませんでした。

そうこうしているうちに富士山にも雲がかかり始めたので、下山することに。といっても駐車場まで10分くらい、登山としてはもの足りません。

そこで、装備を整え直して達磨山へと向かいました。昨日は南側から登りましたが、今日は北側からのアプローチ。戸田峠からコースタイムで1時間ほどの稜線歩きです。

達磨山への登山道は、この階段から
達磨山への登山道は、この階段から

1時間とはいえ、稜線を行くので適度なアップダウンがあります。冬なので木々の葉が少なかったのですが、夏や秋にはみごとな樹木のトンネルになっていることでしょう。

よく整備された登山道の両側から木々が枝を伸ばす
よく整備された登山道の両側から木々が枝を伸ばす
場所によっては、明るく開けたところも
場所によっては、明るく開けたところも

途中で小達磨山(こだるまやま)を通過します。山頂は展望がないのですが、反対側へ下ると達磨山が見えてきます。

北側から見た達磨山
北側から見た達磨山。主峰だけあって大きくて立派、形もいい

また、このコース上には戸田の街と港が見える場所がたくさんあります。

西側に戸田の街と港が見える
西側に戸田の街と港が見える。駿河湾の向こうは清水市あたり

いったん車道に出て、100mくらい進むと達磨山の山頂に向けた最後の登りが始まります。高度が増すにつれて、さらに展望がよくなります。登山としては短い距離ですが、日差しが暖かく前日と違って風がないので少し汗ばむくらいでした。

山頂は、やはり三六〇度の大展望。いつの間にか、南アルプスの山並みがだいぶ見えるようになっていました。しかし富士山は、大きな雲に包まれたままです。

ふたたび、達磨山の山頂へ
ふたたび、達磨山の山頂へ。昨日と違って景色が青い
遠くに南アルプスが見える。その右に毛無山
遠くに南アルプスが見える。その右に毛無山
ダイナミックに雲をたなびかせる富士山
ダイナミックに雲をたなびかせる富士山

富士山の雲が切れるのを1時間ほど待ったのですが、見えたのは山頂部の左側だけでした。達磨山ではあまり風を感じませんでしたが、上空には西風が吹いているのでしょう。駿河湾を渡ってきた風が雲を作っていたのだと思います。

駿河湾の上に浮かぶ雲
駿河湾の上に浮かぶ雲。海に雲が映っている

空はおおむねまぶしいくらい晴れていたのですが、箱根や天城山の上にも雲が湧いていました。そのため、山というより空と雲の写真をたくさん撮って帰路に就きました。来た道を戻ります。

この後も富士山がすっきり見えることがなかったのですが、達磨山の北斜面からの展望はこんな感じ。

たおやかな稜線と海、その向こうに富士山と南アルプス
たおやかな稜線と海、その向こうに富士山と南アルプス

この広がり、明るさ、開放感が堪らなく気持ちいい。このまま空を飛びたい気分です。

修善寺から歩くと1日がかりですが、車なら1時間かからずにこのすばらしい景色と出会うことができます。季節を変えて通いたくなりました。

最後に、朝一で登った金冠山とあらためてご対面。こうして見ると地味な山ですが、山頂からの展望は達磨山に負けず劣らずみごとです。

中央の白い鉄塔がある山が金冠山。その後ろの雲の中に富士山がいる
中央の白い鉄塔がある山が金冠山。その後ろの雲の中に富士山がいる

登山の後は温泉と味噌ラーメン

下山後の楽しみは、まず温泉。帰路に就く前に温泉に入っておくと、疲れの抜け方が違います。たいてい、スマホかカーナビで「近くの日帰り温泉」を検索します。

そして、下山メシ。私の定番は味噌ラーメンです。

以前は、帰りの運転中に眠気に襲われて困りました。仮眠を取っても、すぐまた眠くなります。

で、あるとき気づきました。眠気の原因は、疲れや寝不足ではなく栄養不足じゃないかと。汗で失われた塩分やミネラルの欠乏で、脳に栄養が足りなくなっているのではないかと思ったわけです。

そこで試したのが味噌ラーメン。これが効果てきめんで、その後は眠気が大幅に軽減されるようになりました。

普段は高速道路のサービスエリアで食べることが多いのですが、今回は高速に乗るまで距離があります。そのため、事前に目星をつけておきました。道の駅 伊豆月ヶ瀬の"伊豆味噌ラーメン"です。

2019年12月にオープンした道の駅
2019年12月にオープンした道の駅。まだ新しく、小規模ながらオシャレ感が漂う

館内に入り、階段でワンフロア下がったところに Restaurant & Cafe 月ヶ瀬テラスキッチンがあります。

メニューを見て気になったのが季節限定の"ずがに"。カニが一匹入った、ずがにアラビアータ、ずがにラーメン、ずがにうどんに心が揺れました。でも、ここはやはり味噌ラーメンです。

食事のスペースも明るくて清潔感があります。年末に近い平日の午後にもかかわらず、かなり席が埋まっていました。ほどなくして食券番号を呼ばれ、伊豆味噌ラーメンとご対面。

白髪ネギが美しいラーメン
白髪ネギが美しい、大きなチャーシューがうれしい

まず、スープをひとくち。そして、ビックリ。予想していた味とだいぶ違いました。Webサイトにはピリ辛仕上げと書いてあったのですが、魚介の風味が口の中に広がります。そしてクリーミー。味噌ラーメンというより、魚介の出汁が効いたクリームスープのような印象です。それでいて、サラッとしています。

ネギをよけて麺を持ち上げると、またビックリ。太い!

柔らかすぎず硬すぎず、適度な噛み応えの極太麺
柔らかすぎず硬すぎず、適度な噛み応えの極太麺

そして、厚切りのチャーシューが、とろけるように柔らかい。煮込んだザク切り野菜が入っているのもうれしいポイントでした。

最初はどんぶりが小さいように思ったのですが、深さがあるため見た目より量があります。不思議なことに、食べ進むうちに味噌の風味を感じるようになりました。もちろん、スープまで完食です。

ちなみに私は、普段ほとんどラーメンを食べません。年齢とともに食べたいと思わなくなったし、食べてもおいしいと思わなくなりました。味噌ラーメンをおいしく感じるのは下山後だけです。

伊豆味噌ラーメンのおかげで、今回も無事に帰宅することができました。

(山行日程=2024年12月23~24日)

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MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 2時間35分
行程:戸田峠・・・金冠山・・・戸田峠・・・達磨山・・・戸田峠
総歩行距離:約5,600m
累積標高差:上り 約485m 下り 約485m
コース定数:11
下島 朗(読者レポーター)

下島 朗(読者レポーター)

“絶景ハンター”と称して、写真を撮りながら山を歩く中高年登山者。好きが高じて自己サイト『絶景360』を開設し、撮り溜めた絶景写真を公開している。

この記事に登場する山

静岡県 / 箱根山・伊豆半島

達磨山 標高 982m

 富士山を眺める展望台はあちこちにあるが、この達磨山からは真っ青な駿河湾を前面に配し、富士山の全容を見ることができる。特に雪をまとった富士山は、ことのほか美しく、まさに登る山ではなく見る山だと改めて思う。  達磨山は標高982mだが、一等三角点補点で、さえぎるものがない展望は、駿河湾の向こうに愛鷹(あしたか)連峰、富士山、箱根の山々、丹沢山塊、安倍山系が望め、その奥には大きな南アルプスの展望も得られる。  達磨山の北方には小達磨、金冠山、奥山が、南方には古稀山、伽藍山(がらんやま)といった小さなピークが続く。稜線はササにびっしり覆われているが、西風が強いためか背が低く歩きやすい。  現在伊豆半島のほとんどの尾根にはスカイラインが走っている。船原峠から戸田(へた)峠に通じる西伊豆スカイラインを利用すれば、達磨山へは10分とかからない。

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