抜群のフィット感&操作性のグローブ スワニー/トレイルフレクサーグローブ|高橋庄太郎の山MONO語りVol.114
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回はスワニー「トレイルフレクサーグローブ」を紹介します。
文・写真=高橋庄太郎
人が身に着けるもので、もっとも繊細さを要求されるのが、グローブだ。寒い時期、細い指先は凍傷を起こしやすく、凍傷を起こさないまでも指がかじかんで細かな作業ができなくなる。同様に骨と関節が集中している指先はケガもしやすく、なにかと切り傷や火傷も起こしがちである。
ホームセンターに行って驚くのは、各種作業用のグローブの幅広い品ぞろえだ。DIYから農作業、水産業用、焚き火用までありとあらゆる作業用が並んでいる。それに比べれば、登山用の種類は少なく思えるほど。たとえば、クライミング系のロープワークに適したもの、岩場やヤブで活躍するものなどだが、やはりいちばんポピュラーなのは“防寒”がメイン用途のタイプである。
まずは細部をチェック
今回ピックアップしたのは、スワニーの「トレイルフレクサーグローブ」。柔らかなゴートレザー(山羊皮)を使った防寒グローブだ。
最大の特徴は、モデル名に入っている「フレクサー」だろう。辞書的な意味では「屈筋(収縮によって関節を曲げる骨格筋)」となるが、要するに「関節に沿って曲がっている」もしくは「関節に沿って曲がりやすい」グローブだと考えれば、おおむね外れていないはずだ。
そんな「フレクサー」ゆえに、手の甲の側を見ると、指の部分はちょうど関節の上でレザーが縫い合わせられている。

この設計によって指先に向かって自然に曲がる立体的なデザインが実現している。
一方、手の平の側は、少しすっきりとした見た目だ。

指の表側は関節に合わせて2カ所で縫製されていたのに対し、裏側は指の根元に近い1カ所のみ。

先のほうにも縫製箇所を設けてしまうと指先付近に違和感が出てきて、操作性が損なわれるからだろうか。
横から眺めると、指がきれいに曲がっていることがわかる。

この曲線は“手に力を入れていない状態”とほぼ同じ。つまり、脱力した手の状態そのままの形状を再現したグローブなのである。手を入れてみるとわかるのは、グローブ生地による圧力によって指が伸ばされたり、反対に曲げられたりする感覚が非常に少ないことだ。
トレイルフレクサーグローブのメイン素材はゴートレザーだが、甲の部分にはストレッチ性の生地が用いられている。

光沢があるレザーに対してマットな質感のブラックの部分で、防寒タイプのグローブにしては少し薄手。裏地との間に防水透湿性のゴアテックスが使われた“ゴアテックスインフィニアム”である。

ゴアテックスインフィニアムは、ゴアテックスシリーズのなかでは完全なる防水性までは追求していないものだが、その代わりにデザインの自由度を高めて製品化できるのが特徴のテクノロジーだ。そのために、トレイルフレクサーグローブも特に防水性はうたっていないものの、水濡れには強く、ウインドストッパーで防風性も充分だ。
裏地はさらっとした感触のポリエステル素材になっている。

詳しくは後述するが、吸汗性や蒸れを排出する機能は高いようだ。
その他のディテールといえば、手首にフィット感が変えられる面ファスナーがつけられていることや、使用しないときにカラビナなどで固定するためのハンギングループを備えている程度。

基本的にはシンプルなグローブだ。
サイズはXS~Lまでそろえられており、重量は90g(Mサイズ、実測)。

このグローブはけっこうタイトな形状だ。同社のウェブサイトにはサイズの選び方が記載されているが、僕はそれに合わせて選ぶと締め付けが強く感じたため、結局ワンサイズ大きめをテストに使った。オンラインショッピングよりも、店頭でサイズ感を確認して購入することをおすすめしたい。
フィールドテスト開始
テストを行なった山中の気温は、登山口で約3℃。標高差を考えれば、山頂では0℃以下になっていたと思われる。

歩いていると暑くも寒くもなく、冬山としては良好なコンディションとはいえ、グローブなしではさすがに歩けない。事実、撮影の際には何度かグローブを外したが、すぐに指先はかじかんでしまった。
さて、ここからは実際の使用感に移っていく。
デザイン、素材ともに柔軟なトレイルフレクサーグローブは、手首部分の可動性も高い。手首の角度に合わせ、ほとんどストレスなく曲がってくれる。また、面ファスナーによるホールド感も充分だ。

ただ、この部分は個人的にはあと1~2cmほど長いほうが使いやすかった気もする。ときどきアウターの袖との間で肌が出てしまったからだ。とはいえ、1~2cm長いと、今度は腕時計と干渉して邪魔に感じた可能性もあり、簡単に“使いやすかった気もする”などとは言えないかもしれないのだが。
指の屈曲性はさすが良好である。

指を曲げると関節の上の縫製箇所がゴロついて違和感を覚えるのではないかと心配していたが、まったくの杞憂だった。

縫い合わせて重なる部分を極力減らし、使用素材とデザインに無駄がないからだろう。よくできていると感心した。
雪がうっすらと積もった山中を歩き続ける。

ときおり風が強まり、アウターのフードを被ることもあったが、防風性に富むトレイルフレクサーグローブの内部の手には風を感じなかった。
足場が悪いところでは、木や岩を握りながら進む。

木の幹を握ったときのグリップ性は上々だ。トレイルフレクサーグローブのゴートレザーには適度な厚みがあり、幹の上の凹凸をしっかりと感じる。見た目以上に皮膚感覚が残されていて、使っていて違和感がない。
岩を握ったときも同様である。

木の幹以上に凹凸はあるのだが、尖った場所を握っても指先に痛みを覚えることはない。
しかし、ロープとは相性があるかもしれない。

山中につけられていたこの白いロープは少しツルツルした素材(おそらくポリプロピレン)で、強く握らないと少し滑った。おそらく大半のロープはあまり滑らないだろうが、念のため注意はしたほうがいい。
ともあれ、ただ手にはめているときに限らず、木、岩、ロープなどを握ったときの感触は、僕がこれまで使ってきた中厚のレザー製グローブのなかでは間違いなくトップクラスだ。
しかし、レザーというものは通気性や透湿性をもたないため、ずっと使っていると指先を中心にある程度は蒸れを感じる。特にフィット感が高いタイプは内部の空気が抜けにくく、蒸れやすいものである。だが、トレイルフレクサーグローブは過度の蒸れにはならなかった。これは手の甲の部分に使われているゴアテックスインフィニアムのおかげだろう。グローブの末端である指先に多少湿気がたまっても、行動しているうちにグローブ全体に湿気が回り、最終的にはここから蒸れが排出されていっていると思われる。もちろん気温や行動の仕方などの使用状況によって違いは出てくるだろうが、少なくても今回のテスト時は快適であった。
どんなグローブにも言えることだが、手が汗ばんでいるとグローブは脱ぎにくくなるものだ。トレイルフレクサーグローブのようにフィット感が高いタイプはなおさらである。

僕はいつもGPSと連動した登山地図アプリと紙の地図を併用しながら山を歩いている。行動中にスマートフォンを多用したい場合に着用するグローブは、指先に伝導糸などを使った生地を採用したタッチパネル対応のものが便利だ。だが、トレイルフレクサーグローブの指先はタッチパネル対応ではない。だから、スマートフォンを操作するときはグローブを外さねばならなかった。
スワニーはタッチパネル対応のグローブも販売している。聞くところによると、トレイルフレクサーグローブの指先もタッチパネル対応にできたそうなのだが、現状ではすぐに劣化して反応が悪くなるために、無理には採用しなかったらしい。これは厚手の素材を用いたグローブであればどこのメーカーにも言えることで、登山用グローブの今後の課題ともいえよう。
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