和歌の浦と桜の絶景が楽しめる低山歩き。名草山と章魚頭姿山をつなぐハイキング
日本最古の巡礼道といわれている西国三十三所巡礼。和歌山市にある紀三井寺(きみいでら)はその第二番霊場で、早咲きの桜の名所として知られています(桜の見頃は、例年3月下旬~4月中旬)。すぐ裏手には名草山(なぐさやま)、そして紀三井寺西方にある名勝・和歌の浦(わかのうら)には、変わった名前の章魚頭姿山(たこずしやま)があり、どちらも眺めが抜群です。古来、和歌にも多く詠まれ、名勝として名高いエリアにあるこれら2つの絶景山をつないで歩けば、変化に富んだハイキングを楽しめます。
文・写真=根岸真理、トップ写真=章魚頭姿山から紀三井寺と名草山方面の展望
今回のハイキングで訪れる紀三井寺は温暖な紀州の海辺に立地し、近畿地方ではどこよりも早く桜が開花することから、「春を呼ぶ寺」ともいわれています。
2024年の大河ドラマ『光る君へ』にも登場した花山法皇(かざんほうおう)がこの寺を訪れた時に詠んだ和歌があります。
「ふるさとを はるばるこゝに きみいでら はなのみやこも ちかくなるらん」
ここ紀三井寺にて、はるか遠くになってしまった都を思って詠まれたこの和歌は、ご詠歌として今に伝わっています。
海の絶景と桜がうつくしい名草山から紀三井寺へ
今回は、まずお寺の背後にある絶景の名草山に登ってから紀三井寺に立ち寄り、もう一つの絶景山・章魚頭姿山をめざします。JR紀勢本線・紀三井寺駅を東側へ出て、紀三井寺の門前から住宅街の中の道を内原(うちはら)方面へ。内原神社の境内左手が、名草山の南登山口になっています。
よく整備された登山道をたどっていくと、ひと登りで海を見下ろす大展望のマリーナ台へ。紀の川と有田川にはさまれた和歌浦湾が一望でき、紀州ならではの明るい海の色が楽しめます。
山頂へのルートはいくつかありますが、現地の道標に従っていくと、南西側からの尾根ルートへ誘導されます。山頂部はなだらかな広場状になっていて、西側には和歌浦とその沖合の海の景色が広がっています。
山頂広場にはソメイヨシノがたくさん植えられていて、開花シーズンには花見がてらに登って来るご近所の方も多いのではないでしょうか。誰もが気軽に登れる地元の裏山という風情です。
下山は、山頂から北側へ続く尾根へ。30分ほど下ると分岐点があるので、左側へ折り返すような形で水平道へと入り、やがて紀三井寺の境内の上部へ出ます。紀三井寺は名草山の中腹にあるので、西側の眺望が楽しめます。山上からの景色と見比べてみましょう。
プロフィール
根岸真理(ねぎし・まり)
六甲山西端の神戸市須磨区生まれ。現在は六甲山東端の宝塚市在住。アウトドア系を得意とするフリーライター。親に連れられ、歩き始めると同時に須磨の山に登っていたため六甲登山歴60年。アルパイン歴は約30年。 神戸新聞「青空主義」欄で月に1回六甲山の情報(六甲山大学)を発信中。主な著書に『六甲山を歩こう!』『六甲山シーズンガイド春夏』『六甲山シーズンガイド秋冬』など。兵庫県立六甲山ガイドハウスで「山の案内人」ボランティア活動中。
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