東北の低山も花の季節。春の妖精が彩る高館山

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読者レポーターより登山レポをお届けします。こうさんは山形県の低山、高館山(たかだてやま、273m)へ。

文・写真=こう


雪国の山形県にも、次第に春の風は吹き出しており、雪に覆われた季節に終わりを告げるように、低い山から順に彩りを取り戻していく。山形において、その先陣を切るのが高館山だ。

登山道の両脇を埋めるように咲き誇るカタクリが最も目をひくが、それ以外にも雪割草やショウジョウバカマ、キクバオウレン、エンレイソウ、ミズバショウ、ヤマエンゴサク、コシノカンアオイなど、多彩な春の妖精たちを見ることができる。

足元の景色もさることながら、遠景もよく、展望のいい場所からは雪をまとった鳥海山(ちょうかいさん)や月山(がっさん)を眺めることができる。そんな春ならではの景色を求め、高館山へと向かった。

大山公園駐車場からスタートして、大山下池へと向かう。車道を歩いていくことも可能だが、眺望を楽しみたかったため、公園内の北櫻ヶ丘へと登った。開花を控えたサクラの木が立ち並んでおり、奥に進んでいくと白い鳥海山の姿が見えた。

北櫻ヶ丘からの景色
鳥海山の山頂は雲に隠れていた

さっそくの絶景に気をよくして、大山下池へと下っていく。ラムサール条約にも登録されている大山下池からは、鳥の鳴き声がよく聞こえてくる。池の周りにはウォーキングコースがあり、非常に歩きやすい道だったが、登山口方向へと進んでいくと、次第に自然豊かな道へと変わっていった。

高館山と大山下池
高館山と大山下池

大山公園内に立てられていたクマ注意の看板は、登山口にももれなく備え付けられていた。冬山気分がまだ抜けない私は不覚にも熊鈴を忘れてしまったが、この日はたくさんの人が入っていたためことなきを得た。

大沢コース登山口
大沢コース登山口

スタート直後からカタクリが咲き乱れており、足元は彩り豊かだ。よく目を凝らしてみると、白い毛をまとった小さな赤い物体があり、それはシロキツネノサカズキモドキだった。そのほかにも道中にはキクザキイチゲ、ショウジョウバカマがあり、上を見上げればヤマザクラが日差しを浴びて輝いていた。

シロキツネノサカズキモドキ
シロキツネノサカズキモドキ
ショウジョウバカマ
ショウジョウバカマ
ヤマザクラ
ヤマザクラ

地図上には分岐はなかったが、道は二手に分かれていた。方角的には左手の道が合っていたため進むと、どうやら正解のようだった。道がたくさんあり、わかりづらいのは里山につきものであるため、地図や方角を確認して、正しい道に進むよう注意したい。

地図にはない分岐
地図にはない分岐

登山道は濡れていなかったが、粘土質な土壌や落ち葉のせいで滑りやすかった。我々が歩くときには厄介だが、水はけの悪い粘土質の土や水分をよく含む落ち葉の存在は、春の妖精たちにとっては好都合なのだろう。

依然としてカタクリが登山道を彩ってくれており、途中には一帯がカタクリの紫で覆われているところがあり、その鮮やかさに驚嘆した。

カタクリ群生
カタクリロード
カタクリの花
花びらの開き方に個性があっておもしろい

そこからほどなくして登山道は終わり、車道へと出た。縁起がよさそうな紅白の鉄塔を目にしつつ進んでいくと、古びた展望台が現われ、その下にあるあずまやに山頂と記されていた。あずまや付近は団体でにぎわっていたため、足早に山頂を後にした。

あずまやに山頂の灯台
雰囲気があってやや不気味だったが景色はいいらしい
高館山山頂のあずまや
高館山山頂はたくさんの人でにぎわっていた

その後はしばらく車道を歩いて下っていく。カーブ地点は日本海側の景色が開けており、青空と海が織りなす美しい二色の青に思わず見惚れた。日本海の反対方向には、月山の姿を捉えることができ、まだ大量の雪を蓄えているように見えた。

青空と日本海
青空と日本海
雪を蓄えた月山
雪を蓄えた月山

車道を進んでいくと途中から登山道へと上がることになるが、ややわかりづらいため、地図を確認しながら進みたいところだ。登山道を進んでいくと、雪割草の代表格であるオオミスミソウがぽつぽつと控えめに咲いていた。

オオミスミソウ
オオミスミソウ

八森山の山頂を過ぎると、傾斜が急な泥下り坂となる。かなり滑りやすかったため、トレッキングポールを使用して、バランスをとりつつ下った。こちらにはカタクリ、キクザキイチゲの他にイワウチワも咲いていた。

イワウチワ
可憐なイワウチワ

分岐を右に進むと、斜面を横切るように道が切られている。狭い足元は落ち葉で滑りやすいため、滑落には要注意だ。この先には、登りでは会わなかったヤマエンゴサクやカンスゲ、コシノカンアオイなどが咲いている。ヤマエンゴサクは美しい瑠璃色に目を惹かれるため自然と目に入ってくるが、落ち葉の下に隠れるように咲いているコシノカンアオイを見つけるのは至難の業だ。

ヤマエンゴサク
ヤマエンゴサク
コシノカンアオイ
コシノカンアオイ
カンスゲ
カンスゲ

砂利の車道に出て少し歩くと、左手に上池コース入り口の看板が現われるので、案内に従いそちらへと進む。日の当たらない林の中にはエンレイソウがあったり、湿地帯にはミズバショウが咲いていた。緩やかな上り坂を進んでいくと、再びカタクリが現われる。つづら折りになっているところに咲いているため、しゃがんだときにカタクリが目線の高さになり、写真が撮りやすくありがたかった。

上池コース入り口
上池コース入り口
斜面に咲いているカタクリ
斜面に咲いており撮影しやすくありがたかった

ほぼ平坦な道を歩いていくと、大山公園内のあずまやへとたどり着く。ここまで来るとほぼゴールなのだが、歩き足りなかったため、下池を周回するように歩いてから駐車場へと戻った。高館山に登っているときに見つけた花がちらほらと咲いているくらいで、特に目新しいものはなかったが、少しでも長く自然の中を歩くことができ満足だった。

暗い林道に差し込む光が神々しい
暗い林道に差し込む光が神々しい

(山行日程=2025年3月29日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 4時間
行程:大山公園・・・大沢コース・・・高館山・・・八森山・・・大山公園
総歩行距離:約10,400m
累積標高差:上り 約582m 下り 約582m
コース定数:18
こう(読者レポーター)

こう(読者レポーター)

山形県在住。東北の山のほか関東甲信越、日本アルプスを月に6~8回のペースで登り、風景写真を撮っている。

この記事に登場する山

山形県 / 朝日山地

高館山 標高 273m

朝日山地周辺の山。 2011年4月1日の国土地理院の発表によると、三角点再設置により標高はかつての274mから273mと、1m低くなっている。麓に、ラムサール条約に登録されている上池・下池をたたえている。

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