北八ヶ岳でシーズン終盤のスノーハイク

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読者レポーターより登山レポをお届けします。勝五郎さんは1泊2日で北八ヶ岳の縞枯山(しまがれやま)から白駒(しらこま)池へ。

文・写真=勝五郎


今年の北八ヶ岳は雪が多いとは聞いてましたが、3月になると暖かい日が続いていたので雪の状態が心配でした。JR茅野駅から北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅行のバス停は、この時期多くの登山者でにぎわいますが、この日はなぜか人がまばらでした。ロープウェイ山麓駅に到着しても駐車場には多数の空きがあり、スキーヤーばかりで登山者が少なかったので余計心配になりました。ところが、ロープウェイの山頂駅に到着すると辺り一面が銀世界でサングラスがないと目が開けられないくらい輝いていました。心配は無用でした。風は強くて空は多少霞んではいましたが、南アルプスや中央アルプスを望めました。

1日目:北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅~縞枯山~麦草ヒュッテ

ロープウェイ山頂駅から雨池(あまいけ)峠まではほぼ平らな道が続きます。久しぶりに雪山を歩くメンバーにはこの平らな道がちょうどよかったようです。雪を踏みしめる感覚やアイゼンの装着具合などを確認しながら歩いていました。なかには新品のワカンを持ってきたていたメンバーもいて「いつ装着しようかな」とか「どんな状況のときに装着しようかな」などと他愛のない話をしながら歩いていました。

縞枯山荘を過ぎて雨池峠に到着すると道が分かれます。真っすぐ行くと雨池方面ですが、我々は南に90度曲がり縞枯山の山頂をめざします。山頂までは約150mの直登が続き、今回一番の難関でした。先に登った人の踏み跡を頼りに登るようにしていましたが、途中から踏み跡も崩れて乱雑になってしまい頼りになりません。キックステップやハの字で登り、疲れたら道の横で休みながら約40分かけて登り切りました。

北八ヶ岳 縞枯山の急登
縞枯山の急登で休憩中のメンバー

山頂は木々に覆われて眺望はありません。木々の上では強烈な風切音が聞こえていたので「強風だな」と話していました。山頂近くの展望台に行くと予想通り強風で真っすぐ立っていられません。展望も見ずに次のピークに向かって出発です。

北八ヶ岳 縞枯山の山頂
縞枯山の山頂は木々に覆われて眺望はなし

縞枯山の由来は、頂上部の木々が縞柄のように立ち枯れていることから縞枯山と呼ばれているそうです。樹林帯は風を避けて歩けますが、眺望はありません。その反面、立ち枯れ部は直接風にさらされますが、眺望がよいのが特徴です。立ち枯れ部を通る際は前傾姿勢で風を受けながら、横目で南アルプスや中央アルプスの展望を楽しみました。

北八ヶ岳 縞枯山の立ち枯れ部
強風に耐えながら立ち枯れ部を通過中

茶臼山(ちゃうすやま)を過ぎると次の大石(おおいし)峠までは約200mを一気に下ります。登りと同じように急斜面でしたので、今度は横向きでフラットフッティングやかかとでキックステップをしながら降りました。踏み外してしまった時のことを考えて、前の人との距離をとって休み休み歩きました。休憩した際に目線を上げると奥秩父方面の山々が見えました。休憩せずに降っていたら見逃していた風景です。風景を見ながら「休憩してよかった〜」と思わず声が出てしまいました。

北八ヶ岳 茶臼山
茶臼山の傾斜も急でした
北八ヶ岳 茶臼山からの下りで見えた奥秩父方面の山並み
茶臼山からの下りで見えた奥秩父方面の山並み

大石峠を過ぎるとなだらかな道になります。「さっきの傾斜すごかったね」などと話しながら歩いていると麦草(むぎくさ)峠が見えてきました。そして、この日お世話になる麦草ヒュッテに到着です。

北八ヶ岳 麦草ヒュッテ
お世話になった麦草ヒュッテ

麦草ヒュッテでは、暖かい薪ストーブと温かいお茶が出迎えてくれました。チェックインを済ませ、アイゼンや靴を指定の場所に置いてから部屋に行くと、暖かいストーブとこたつが待っていました。部屋が暖かいことに感謝です。夕食まで時間があったので、さっそく今日の反省会をスタートしました。

北八ヶ岳 麦草ヒュッテの薪ストーブ
受付兼土間には薪ストーブ
北八ヶ岳 麦草ヒュッテの部屋
部屋にはストーブと暖かいこたつがあった

2日目:麦草ヒュッテ~白駒池~出逢の辻~五辻~北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅

2日目も晴れでした。雲の流れが早いので山頂部は昨日と同様、強風のようです。しかし、この日は山麓をスノーハイクする計画だったので、強風の心配はありません。少し遅めの8時半に出発です。森の中を歩いていると木々の間から朝日が差し込んできました。光線が森に入り木々や雪に反射してとてもきれいでした。「黒曜の森」と書かれた看板を見つけ「コケが雪の下で眠っているんだな〜」とメンバーがつぶやいていました。

北八ヶ岳 朝日が差し込んだ黒曜の森
朝日が差し込んだ黒曜の森

朝日が差し込んだ森を抜けると、真っ白で平らな場所が見えました。完全結氷した白駒池です。ここ数年毎年来ていますが、何度来ても感動します。湖畔まで降りたらザックを置いて湖面に入る準備です。カメラを準備するメンバーもいれば、スノーシューを装着して走る準備をするメンバーもいました。子どものように湖面の上で寝転んだり飛び跳ねたりもしました。結局30分ぐらい遊んだと思います。

北八ヶ岳 完全結氷した白駒池
完全結氷した白駒池
北八ヶ岳 完全結氷した白駒の池
遊んだ跡

白駒池からメルヘン街道(国道229号)に出てそのまま茅野市方面に向かって約3km歩きました。国道の上は雪が硬いと思っていましたが、意外と柔らかくて歩きづらい状態です。雪上車が通ったあとは凹凸が増えてしまい余計に歩きづらい状態でした。今回は持ってきませんでしたが「スノーシューだとスムーズに歩けるんだけど……」と少し後悔しました。

メルヘン街道(国道229号)最高地点
メルヘン街道(国道229号)最高地点

途中、「コケモモの庭」入口で休憩。コケモモはすべて雪に隠れていますが、雪がない季節にはコケやコケモモ観賞に入山する方も多いようです。今回歩いたルートを雪がない季節にもう一度歩いても楽しいのではないかと思いました。

メルヘン街道から右に外れ、茶臼山の裾野に沿って五辻方面に向かいます。山頂近くと違って大きい木々の間を通り抜けます。「出逢の辻」まで来ると道幅も広がります。ここは茶臼山と縞枯山の鞍部に繋がる道と交差するので、ロープウェイの山頂駅から茶臼山を経由してこの場所に降りてくる人がいます。

北八ヶ岳 出逢の辻
出逢の辻

五辻を過ぎると木々がなくなり、眺望が広がります。風はなく穏やかな天気でした。多少黄色く霞み「八ヶ岳ブルー」とまでは言えませんが、昨日ゆっくり見ることができなかった南アルプスや中央アルプスがよく見えてました。

北八ヶ岳 五辻周辺
五辻周辺。南アルプスや中央アルプスが見える

しばらく歩いているとロープウェイの音が聞こえてきました。もうすぐスノーハイクも終わりに近づいてきました。楽しかった思い出と、終わってしまう残念な気持ちとが入り混じり複雑な気持ちになりました。みんな同じ気持ちだったと思います。

「縞枯山の急登はキツかった」とか「山頂の強風もすごかったよ」「白駒池が楽しかった」などと話したり、立ち止まって記念写真を撮ったりして最後の余韻を楽しんでいました。そして、ロープウェイの山頂駅に到着して、キツツキの前で記念写真を撮って今回のスノーハイクを終えました。

北八ヶ岳 ロープウェイ山頂駅前のキツツキ
ロープウェイ山頂駅前のキツツキ

(山行日程=2025年3月22~23日)

下山メシ
そば処茶屋

JR茅野駅前「そば処茶屋」

JR茅野駅前、ベルシア1階に「そば処茶屋」というお店があります。この店はお酒と肴が豊富で昔ながらのそば前が楽しめ、地元の肴をあてに地酒を堪能できます。八ヶ岳の帰りは毎回立ち寄っていますが、自分は信州名物の馬刺しと、地元のそば焼酎をそば湯で割って飲むのがお気に入りです。せいろも温かいそばもおいしかったです。

店内にはボディービルダーの写真が貼ってあり、プロテインがメニューに書かれています。店主の話ではボディービルのトレーナーをしているとのこと。大会がある時などは臨時休業するそうです。

店先には大きな荷物を置く台があります。我々のようにザックを背負ってくる人のためにザック置き場として設置してくれてます。登山者には優しくておいしいお酒と肴があって、そばもおいしいお店です。ぜひ立ち寄ってみてください。

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:1泊2日
コースタイム: 【1日目】4時間
【2日目】4時間
※積雪状況による
行程:【1日目】北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅・・・雨池峠・・・縞枯山・・・茶臼山・・・大石峠・・・麦草ヒュッテ
【2日目】麦草ヒュッテ・・・白駒の池・・・メルヘン街道・・・出逢の辻・・・五辻・・・北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅
総歩行距離:約13,000m
累積標高差:上り 約627m 下り 約626m
コース定数:24
勝五郎(読者レポーター)

勝五郎(読者レポーター)

奥多摩と高尾周辺を中心に活動しています。時々日本アルプスへも遠征します。山頂をめざすより、その山の自然や歴史を感じるのが好き。下山後は飲食店に駆け込みます。

この記事に登場する山

長野県 / 八ヶ岳

縞枯山 標高 2,403m

 茶臼山と雨池峠の間にある縞枯山は、ほぼ東西500mにわたる頂上部をもち、シラビソやコメツガの森に覆われている。これらの樹林が立ち枯れたものが、数段の白い横縞をつくっているところから山名が生まれた。縞枯現象は風、降雨、日射などの自然現象によるもので、100年から300年の周期で世代の交代を繰り返すものといわれている。この現象は蓼科山や北横岳の西面、茶臼山などにも分布していて、縞枯帯の中へ入ってみると、枯れた樹幹の根元に緑の幼木が育っていることが分かる。茶臼山の山頂から西へ入った露岩の展望台は、縞枯山の縞枯現象の大要を観察するのにもってこいの場所である。  長野県茅野市と同南佐久郡八千穂村(現・佐久穂町)の境に位置し、山頂の東端にある展望台に立つと、天狗岳や麦草峠付近のパノラマが展開する。  近くには岩石累々とした坪庭、神秘なムードに包まれた雨池、茶臼山の南には麦草峠の草原がある。縞枯山と茶臼山の諏訪側には、国有林監視用の歩道があって、坪庭下から五辻を経て冷山歩道へつながっており、南八ヶ岳の山々を遠望することができる。  麦草峠から2時間弱、坪庭(ピラタスロープウェイ山頂駅)から1時間の行程だ。

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