播磨の絶景低山ハイキング。加古川と淡路島を一望できる平荘湖アルプスへ
兵庫県の北東部付近から瀬戸内海へと流れ下る長大なる一級河川、加古川(かこがわ)。その下流域の右岸に、平荘湖(へいそうこ)というダム湖があります。これを囲むように小さな山々が連なっていて、近年「平荘湖アルプス」という呼び名が定着しつつあります。
文・写真=根岸真理、トップ写真=平荘湖アルプス・升田山の「八十の岩橋」
近辺には、岩場の多いご当地アルプスが点在
平荘湖の北東には、紅山(べにやま)・惣山(そうざん)などが連なる「小野アルプス」、西側には高御位山(たかみくらやま)を主峰とする「播磨(はりま)アルプス」があります。南西には古代から石材「竜山石(たつやまいし)」の産地として知られている竜山、巨岩がご神体となっている「石の宝殿」もあり、平荘湖周辺は凝灰岩の岩場が多く分布するエリアです。播磨アルプスのさらに南西には「的形(まとがた)アルプス」と呼ばれる山の連なりもあります。
平荘湖アルプスは、最も標高が高いのは飯盛山(いいもりやま)で215m、ほかは100m前後と極めて低い山ばかりですが、海が近い平野部に位置することから、標高の割に眺望がよいのが特徴です。湖畔にはぐるりと遊歩道が通っており、時間や体力に合わせてコースが選べます。ただし、一部ガケの際を歩いたり、傾斜の強い岩場や踏み跡が不明瞭なところもあるので、注意が必要です。
絶景の岩尾根がある升田山へ
公共交通機関でアクセスする場合、JR加古川線日岡(ひおか)駅が最寄り。駅から西へ、加古川左岸の遊歩道へ入ります。下流側へと進み、ブルーに塗られた水管橋をめざします。川の堤防上から対岸に見える顕著な岩場がある山が一座目の升田山(ますだやま)。その上流側のなだらかな山が二座目の嶽山(だけやま)です。
加古川は、幹川流路(河口から水源までの流路の長さ)96kmに及ぶ大きな川で、河口に近いこのあたりはかなり川幅が広く、水管橋は約450mもの長さがあります。ちなみに、これから向かう平荘湖は、東播磨臨海工業地帯へ工業用水を安定的に供給するために作られた人造湖で、貯水した水を送るために作られたのがこの水管橋です。
右岸側に着いたら、川沿いの遊歩道を上流方面へ。カーブの先に横断歩道があるので、車に注意しながら渡ります。信号機はありません。渡った右手に登山口があります。鳥居をくぐって、斜面を巻き上がるように登っていきます。中腹にあるお堂までは歩きやすい登山道です。
岩に貼りつくように立っているお堂を右側から回り込むと、裏手から鎖がかけられた急な岩場が始まります。修験道の行場のようです。
ステンレスの鎖がかけられていますが、基本的には頼らなくても登れます。傾斜がありますが、わずかな登りで眺望が開けて、加古川の流れを足元に見下ろしつつ、遠く淡路島や六甲山(ろっこうさん)、丹生山(たんじょうさん)などの山並みが見渡せます。
このあたりは「八十(やそ)の岩橋」と呼ばれています。大昔、この岩場は天まで延びていて、イザナギ・イザナミほか、八十柱の神様が降臨されたという伝説があるのだとか。
岩橋の上はなだらかで幅の広い岩尾根になっていて、景色を楽しみながら歩けます。後方右手には淡路島の島影も見えます。着いた升田山の山頂は、標高105mとは思えないほど視界が広がります。
プロフィール
根岸真理(ねぎし・まり)
六甲山西端の神戸市須磨区生まれ。現在は六甲山東端の宝塚市在住。アウトドア系を得意とするフリーライター。親に連れられ、歩き始めると同時に須磨の山に登っていたため六甲登山歴60年。アルパイン歴は約30年。 神戸新聞「青空主義」欄で月に1回六甲山の情報(六甲山大学)を発信中。主な著書に『六甲山を歩こう!』『六甲山シーズンガイド春夏』『六甲山シーズンガイド秋冬』など。兵庫県立六甲山ガイドハウスで「山の案内人」ボランティア活動中。
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