安曇野・光城山(ひかるじょうやま)でお花見登山|北アルプスだけじゃない「東山」の魅力
長い冬が終わり、信州にも待ちに待った春が訪れました。3月にストーブの薪が尽きるという悲しいできごとがありましたが、文明の利器を使って、なんとか冬を乗り切りました。わが家の庭では、ムスカリやハナニラが一斉に咲いて、植物も春の訪れを喜んでいるようです。私は冬眠から覚めたばかりの動物のようで、まだ寝ぼけまなこ。登山シーズンに向けての体ならしを兼ねて、安曇野市の「光城山(ひかるじょうやま)」に登りました。
文・写真=鈴木俊輔
季節を問わず気軽に登れる「東山」の魅力
安曇野といえば北アルプスの山々を思い浮かべますが、じつは他にも魅力的な山があります。それが「東山」と呼ばれる低山が連なるエリアです。西側にそびえる北アルプスと向かい合うように、市街地を挟んだ東側にも山並みがあります。そこから望む北アルプスの景色は格別で、移住者にも人気の居住エリアになっています。東山の魅力は季節を問わず気軽に登れることで、光城山や長峰山(ながみねやま)は登山初心者や家族連れでの登山もおすすめです。
1500本もの桜が彩る光城山
光城山は安曇野市にある標高912mの山。桜の名所としても知られていて、お花見シーズンは多くの登山者でにぎわいます。約1500本もの桜の木が見ごろを迎えるのは、4月の中旬ごろ。元は1912年の大正天皇の即位を記念して植えられたものだそうで、その後も地元の人の手で植栽が行なわれています。満開時に現われる、登山口から山頂へと続くピンク色に彩られた桜の並木道は見ものです。
鉄道の最寄り駅は、JR篠ノ井線の田沢駅。駅から登山口までは歩いて30分くらいかかりますが、松本駅から1駅(約10分)でアクセスできます。
私が登ったのは、4月17日。この時期は雨も多く、毎日、天気予報と開花情報とにらめっこしながら、ベストなタイミングを待ちました。わが家から登山口までは車で約20分。光城山には前にも何度か登ったことがありますが、桜の季節に来るのはこれが初めてです。
無料で利用できる登山口駐車場は、閑静な住宅街の中にあります。広い駐車場があるので、「平日だから余裕っしょ」と、高をくくっていたのですが、朝の8時過ぎに着くとすでに満車。交通誘導の方の案内で、駐車場に空きが出るのを待ちます。県外ナンバーの車も思いのほか多く停まっています。
満開の桜と残雪の北アルプス
主な登山コースは、「さくらコース」と「北回りコース」の2つ。今回は、往路は山頂まで60分の「さくらコース」、復路は自然散策路を通る45分の「北回りコース」を歩いて登山口に戻ります。
登山道は少し急ですが、整備されていて歩きやすいです。登り始めると、さっそく満開のソメイヨシノが出迎えてくれます。桜並木のすき間からは、残雪の北アルプスが顔をのぞかせます。そのなかでひときわ目立つのが常念岳で、形の整った三角の山容が特徴です。わが家からは、前の山に隠れて山頂部分しか見えませんが、場所が変わると見え方も大きく違ってきます。この時期だけの桜と北アルプスの景色をフレームに収めるために、スマホやカメラで撮影する人の姿も。途中には濃いピンクの花を咲かせたハナモモもあり、まさに春らんまんの景色です。
山頂から望む北アルプスの大パノラマ
初夏を思わせる気温に、歩いているとすぐに汗ばんできて半袖姿に。心配していた花粉はほとんど感じず、春の空気をいっぱい吸いながらぐんぐん歩きます。途中で何カ所か道が分岐しますが、後で合流するので道に迷うことはありません。方向音痴の私にも優しい山です。
8合目付近では、桜はまだ五分咲き。登山口と山頂付近とでは、1週間くらい開花のタイミングがずれるようです。写真を撮りながらゆっくり登りましたが、1時間もかからずあっという間に山頂に到着。
展望エリアでは、南は蝶ヶ岳、北は白馬岳までを見渡せる北アルプスの大パノラマ。景色を眺めながらお弁当を食べている人や写真を撮っている人など、思い思いの時間を過ごしています。
山頂には「古峯(こみね)神社」があり、光城山の歴史についての説明書きがあります。それによると、光城山は戦国時代(16世紀)に海野六郎幸元という武将によって築かれた山城とのこと。山頂からのろしを上げて他の城と連絡を取り合い、古峯神社は火の守り神としてまつられていたそうです。
長峰山への縦走も可能
山頂から北に下って少し歩くと道標があり、「北回りコース」と「長峰山山頂」に分岐。標高933mの長峰山への縦走も可能で、40分ほど歩くと山頂にたどり着きます。前回訪れたときは、長峰山に向かう途中にある「天平(てんぴょう)の森」の食堂に立ち寄り、ボリューム満点の定食を味わってから、展望台へ向かいました。長峰山からの眺望も素晴らしいので、時間と体力のある人にはおすすめです。
ボリューム満点の定食と長峰山からの眺望は捨てがたいですが、今回は縦走せずに北回りコースで下山。傾斜の少ない山道は、さくらコースよりも人が少なく、自分のペースで歩けます。桜は見られませんが、北アルプスと安曇野の町並みが望めます。
静かな林の中を歩いていると、時折鳥の鳴き声や木の葉が風に揺れる音が聞こえてきます。途中に「桜池」の道標があり、「どこにあるのかな?」と思いながら下山しているうちに登山口に到着。桜池を探すべく、来た道を少し引き返すとありました。登山口駐車場のすぐ裏にある小さな池。近くの桜がみごとに満開で、そちらに目を奪われ、池には気付きませんでした。おそらく半数くらいの人は気付かずに通り過ぎるでしょう。
私が光城山を初めて登ったときは、たまたま行き合った男性が、山や植物のことをいろいろ教えてくれました。この男性は近くに住んでいて、日常的に登りに来ていると話していました。なかには、毎日登っている人もいるそうで、この山が地元の人たちにいかに愛されているかが伝わってきます。光城山は気軽に登れて桜と北アルプスの景色が楽しめる魅力的な山。どの季節に登っても気持ちが良いので、ぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。
MAP&DATA
- 田沢駅〜さくらコース登山口〜光城山〜北回りコース〜田沢駅 約3時間10分
- 田沢駅~さくらコース登山口~光城山~烏帽子峰~長峰山
(長峰荘コース)~長峰荘 約3時間55分
(雲龍寺コース)~塔ノ原城跡~雲龍寺~明科駅 約4時間35分
プロフィール
鈴木俊輔(ローカルライター・信州暮らしパートナー)
長野県池田町を拠点に、インタビュー取材・撮影・執筆を行なう。また、長野県の信州暮らしパートナー、池田町の定住アドバイザーとして移住希望者の相談に乗る。2015年に神奈川県から長野県へ移住したことをきっかけに登山を始める。北アルプスの景色を眺めながらコーヒーを飲むのが毎日の楽しみ。趣味は、コーヒー焙煎、まき割り、料理。野菜ソムリエプロ。
山のある暮らし
都内の出版社で働くサラリーマン生活に区切りをつけ、家族とともに長野県池田町に移住した筆者が、「山のある暮らしの魅力」を発信するコラム
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