テントを背負って雲取山へ。大展望の尾根と原生林の森を歩く

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読者レポーターより登山レポをお届けします。ケロケロさんは雲取山(くもとりやま、2017m)をテント泊で楽しんだそうです。この春に奥多摩小屋跡に整備された五十人平(ごじゅうにんだいら)野営場の様子もレポート。

文・写真=ケロケロさん


東京都、山梨県、埼玉県の3都県にまたがり、東京都最高峰でもある雲取山は、多くの登山者でにぎわう人気の百名山。このほど山頂近くにある五十人平野営場が新たに整備されてオープンしました。テントサイトは広々とした尾根上で、富士山や奥秩父の山並みを眺めることのできる絶好の場所。こんなところにテントを張ったら気持ちいいだろうなあ!と以前から憧れていました。運よく予約が取れたので、久しぶりにテント泊装備を背負って新緑の雲取山を歩いてきました。

1日目:鴨沢~七ツ石山〜五十人平野営場

奥多摩駅から立ち乗り満員のバスに揺られて、登山口の鴨沢(かもさわ)バス停で下車しました。ゴールデンウィークとあって、大勢の登山者がバス停付近で身支度をしていました。

雲取山 鴨沢バス停
鴨沢バス停。大半の乗客がここで降りる

集落を通り抜け登山道に入ると、山腹についたトラバースを緩やかに登っていきます。めざす五十人平野営場まではコースタイムで約4時間半、長い登りが続くのであせらずにゆっくり登ります。基本的に歩きやすい道ですが、道幅が狭くなっている箇所はスリップしないよう注意が必要です。

雲取山 明るい新緑の森を歩く
明るい新緑の森を歩く

堂所(どうどころ)を過ぎると道がだんだん急になっていきます。荷物8kgの重さがこたえて、七ツ石小屋のすぐ下あたりでは息が切れてしまいました。

雲取山 七ツ石小屋
七ツ石小屋。自炊小屋だがアットホームな雰囲気が人気

七ツ石山(1757m)の山頂へ立つと、ぐるりと視界が開けます。雲取山へ広い尾根道が真っすぐ延びて気持ちのいい景色です。

雲取山から七ツ石山を経て奥多摩駅まで延びるこの石尾根は、山火事の延焼を防ぐために幅広に伐採されているそう。おかげで抜群の眺望を楽しみながら歩くことができます。

七ツ石山から石尾根縦走路を望む。右奥が雲取山
七ツ石山から石尾根縦走路を望む。右奥が雲取山
富士山の手前に重なる奥秩父の山並み
富士山の手前に重なる奥秩父の山並み。カラマツの芽吹きとオオヤマザクラが彩を添える

五十人平野営場へは獣除けの重たい鉄の扉を開閉して中に入ります。道の片側がテントを張っていい区画になっていて、なるべく平らな場所を見つくろってテントを設営しました。

奥多摩小屋の跡地には新しいトイレと管理棟が立っていて、管理棟は無人、販売物はなし、とシンプル。5分下ったところにある水場は管理されていないそうなので、気になるなら七ツ石の水場で汲んで行くといいでしょう。

夕方見回りに来た管理人の方に尋ねたところ、この日の予約は30張。まだ試験運用の段階で当面は予約数を絞っているとのことでした。

雲取山 五十人平野営場
草地にテントを張る。背後に森、前面には富士山の眺望というすばらしいロケーション

あとは、担いできたビールを飲んでボーっとするタイム。山で空を眺めながら、ビールを飲んでボーっとする以外にすることがない、なんとも幸せな時間を過ごしました。

2日目:五十人平野営場~雲取山〜白岩山~前白岩山~霧藻ヶ峰~三峯神社

翌朝3時に起床、星の瞬く中でテント撤収しました。雲取山山頂での御来光を狙う計画だったのですが、やや強い風にテントをあおられて撤収に手間取ってしまい、出発が遅くなってしまいました。御来光は小雲取山のあたりで見ることになりました。

小雲取山のあたりで見たご来光
御来光
奥多摩の山々
振り返ると奥多摩の山々

明るくなるにつれて周囲の山並みが姿を現わしました。山々が染まる夜明けの数十分の美しさ。山中に泊まってこそ見ることのできる贅沢な光景に、来てよかった!と足を止めて深呼吸しました。

雲取山山頂
雲取山山頂。富士山や南アルプスの山々も白い姿をのぞかせた
雲取山荘
雲取山荘。広場のベンチを借りて朝食をとった

雲取山の山頂を越えるとコメツガやシラビソの原生林に入り、景色はこれまでとは違った雰囲気になります。足元にふさふさと豊かなコケが広がり、コケの間からバイカオウレンが可憐な花をのぞかせていました。

バイカオウレン
バイカオウレン

三峯神社へは、この深い原生林と苔むした石灰岩の道を、アップダウンを繰り返しながら下降していきます。

白岩山(しらいわやま)を越えて崩壊の進む白岩小屋まで来ると、和名倉山(わなくらやま、2036m/別名・白石山)の巨大な姿が現われました。

雲取山 白岩小屋から和名倉山を眺める
白岩小屋から和名倉山を眺める
雲取山 ゴツゴツとした尾根を歩く
ゴツゴツとした尾根を歩く

前白岩山を越え、急な下降で岩場や鎖場に注意しながら通過します。高度を下げるにつれ、苔むす原生林は明るい落葉樹の森に変わっていきました。最後のピークを登ったところで霧藻ヶ峰(きりもがみね)休憩舎に出ました。

ここでコーヒーを注文すると、小屋番の新井さんが山の歌をひとつ歌ってくださいます。「穂高よさらば」から滝谷やジャンダルムの話に花が咲き、楽しいひとときを過ごしました。

雲取山 霧藻ヶ峰休憩舎のテラス
霧藻ヶ峰休憩舎のテラス

霧藻ヶ峰からはバス停まで約1時間。道は広く緩やかになり、妙法ヶ岳分岐あたりからは軽装のハイキングの人や観光客とすれ違いました。

11時過ぎに三峯(みつみね)神社へ到着。神社へ参拝してお土産を買って、バス停へ向かうと長蛇の列が待っていました。道路も大渋滞。立ち乗り満員のバスに乗って西武秩父駅に着いたのは15時を過ぎていました。もしテントで朝寝を楽しんでいたら帰宅は終電近くになっただろうと思います。夜明け前に歩き出したおかげで御来光も見て、明るいうちに帰宅することができて大正解でした。

たっぷり歩いて、広々とした展望の尾根と、手つかずの原生林の森の両方を楽しんだ、2日間の山旅でした。雲取山に泊まる選択肢が一つ増えたのはうれしいことです。

左から前白岩山、白岩山、雲取山
左から前白岩山、白岩山、雲取山。歩いて来た山並みが見える

(山行日程=2025年5月4~5日)

立ち寄り情報
三峯神社

三峯神社
オオカミの狛犬で知られる三峯神社は、珍しい三ツ鳥居や樹齢800年の御神木などの見どころがたくさん。茶屋や土産物屋もあり、ゆっくり回れば1~2時間ほどかかるでしょう。時間に余裕があればぜひ寄ってみたい観光スポットです。

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:1泊2日
コースタイム: 【1日目】4時間15分
【2日目】5時間35分
行程:【1日目】鴨沢・・・小袖乗越・・・堂所・・・七ツ石小屋・・・ブナ坂・・・五十人平野営場
【2日目】五十人平野営場・・・小雲取山・・・雲取山・・・雲取山荘・・・大ダワ・・・白岩山・・・白岩小屋跡・・・前白岩山・・・お清平・・・霧藻ヶ峰・・・炭焼平・・・妙法ヶ岳分岐・・・三峯神社
総歩行距離:約21,100m
累積標高差:上り 約2,457m 下り 約1,949m
コース定数:50

関連リンク

ケロケロさん(読者レポーター)

ケロケロさん(読者レポーター)

散歩をするように山を歩いて、木々や草花の折々の姿や、生き物との偶然の出会いを楽しみたい。双眼鏡をぶらさげて、関東近郊の山をのんびり歩いています。

この記事に登場する山

東京都 埼玉県 山梨県 / 関東山地

雲取山 標高 2,017m

東京、埼玉、山梨の都県境となる山。東京都の最高峰。山頂からの展望は北を除いて非常によく、山並みのはるかかなたに富士山も眺められる。

プロフィール

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全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。

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