夏山シーズン前に知っておきたい! 令和のテント泊事情&主要インフォメーション【山と溪谷6月号】
最新ギアの情報を紹介している雑誌『山と溪谷』2025年6月号の企画「2025テント泊装備」から、近頃のテント泊事情と主要なテント場の今年の情報を整理したページをご紹介。昔は違った……とならないように、事前に最新の情報を確かめておこう。
文=吉澤英晃 イラスト=ヤマグチカヨ トップ写真=小池美咲
時勢による変化もあれば、変わらない魅力もある
山中でテント泊をしたいと思ったら、国内ではテント場が集中している日本アルプスで計画を考える人が多いだろう。そこに、同じくテント場が集まる八ヶ岳を含めて昨今のテント泊事情を紹介すると、今と昔とでは変わった点がいくつか目につく。
ひとつは予約制だ。コロナ禍以降、密を避けるために導入され、それが定着。予約が必要なテント場は全体で見ると多くはないが、計画を立てるときには注意したい。
同様に利用料金にも変化が見られ、高くなったと感じている人は少なくないはず。これは物価の上昇によるもので、山中にあっても値上げの波からは逃れられないのが現実だ。
マイナスに感じる話が多いものの、テント泊登山は依然として人気が高い。多くの登山者が日本アルプスや八ヶ岳を中心に、テントを背負って思い思いの山行に出かけている。
その背景には、テント泊にはいつの時代も変わらない魅力があり、それが時を超えて多くの登山者の心をつかんでいるのだろう。自然との距離が近く、山の息づかいをダイレクトに感じられる感覚は、テント泊ならではの醍醐味だ。その喜びを多くの人と共有するために、マナーを守ってテント泊を楽しもう。
テント泊山行の、その前に!
そのテント場、予約は?
山中のテント場(キャンプ指定地)の利用方法は、コロナ禍を境に様子が変わった。コロナ禍以前は基本、予約をする必要がなかったが、現在は予約制を導入しているところがいくつかある。予約の仕組みはさまざまで、完全予約制のところがあれば、週末や大型連休といった繁忙期の特定日のみ必要というところも少なくない。予約不要で自由にテント場を利用できた時代は過去の話。計画を立てるときは、必ず泊まる予定のテント場の予約の有無を確かめること。人気が高いところは予約が埋まってしまうこともあるので、計画は早めに立てたほうがいい。
いまは1人1泊2000円がアベレージ
予約制の導入と同様に、今と昔で大きく変わったのが料金だ。燃料価格や人件費などの高騰の影響を受けて、多くのテント場が料金の値上げを実施。日本アルプスにあるテント場の料金は、現在は1人2000円のところが大半を占めている。なかには人数と設営するテントの張り数それぞれに料金がかかるところもあり、この場合、2人以上でテント場に泊まるのであれば、ひとつのテントを複数人で利用したほうが費用を安く抑えられる。ちなみに、料金の支払いはキャッシュオンリーの山小屋がいまも多い。現金は多めに用意しよう。
登山者として肝に銘じたいテント場でのルール&マナー
設営は受け付けを済ませてから
テント場に到着したら、山小屋に近い場所や眺めのいいところなど、好みのロケーションにテントを張りたくなるもの。しかし実際にテントを立てられるのは、受け付けを済ませてから。なかには受付時に場所を指定されるテント場もある。いくつもある空きスペースから設営場所を自由に選びたいのであれば、早めの到着を心がけるか、混雑が予想される大型連休や週末を避け、閑散期や平日に計画を立てるのもひとつの方法だ。
設営スペースはなるべく詰める
テント場の設営スペースには限りがある。張れる数が少ないところや人気のキャンプ指定地では、なるべく多くの人が利用できるように、間隔を詰めてテントを立ててほしい。グループで計画を立てる場合は、1人1張りにしたい気持ちも分かるが、テントを共同装備にして複数人で利用するのも親切な対応だ。状況によっては、テント場の管理スタッフから場所の移動をお願いされる場合もある。その際は素直に指示に従おう。
日没後は静かに!
テント場での過ごし方は人それぞれで、翌日の行動に備えて早く体を休ませたい人もなかにはいる。その近くで夜遅くまで会話を楽しんでいたら、寝ている人に迷惑をかけてしまう様子は容易に想像できるだろう。テント内にいると気づきにくいかもしれないが、隣のテントと間を隔てるものは薄い生地しかないので、話し声は意外と聞こえるものだ。テント場に決まった就寝時間はないことが多いが、基本、20~21時以降は静かに過ごそう。
出たゴミは持ち帰ろう
テント泊で出たゴミはすべて持ち帰るのが鉄則だ。ゴミだけでなく、パスタなどの茹で汁やラーメンの残り汁なども外に捨ててはいけない。飲みきったり、使い切る工夫をしたりして、こちらも残さず持ち帰ること。すべては貴重な自然を守るためである。ゴミに関しては以前、近くの山小屋に処分してもらえないかお願いする人がいると聞いたことがある。大人の登山者として恥ずかしいことなので、厳に謹んでもらいたい。
年代別に見る“テント泊スタイル”の変遷
テント泊の魅力は時代を問わず不変だが、スタイルは大きく変化。『山と溪谷』誌面をひもときつつ時代ごとの特徴を紹介しよう。
1970S
1970年代はフレームザックからインナーフレーム縦型ザックへ、テントは三角型(家型)から自立型ドームタイプへと変わりつつあった時代。だが、横幅のある帆布製キスリングを背負った、いかにも“山ヤ”然とした登山者もまだ多かった。ニッカーボッカーにTシャツ、頭にタオルを巻いてガシガシと山を登る。でかいキスリングに満載したテント泊装備はずしりと重たかったはず。
1990S
登山用具やウェアに機能だけでなくデザイン性が加味された時代。ザックやジャケットはパープルやピンク系カラー全盛で、ラガーシャツにスラックス、より軽やかに短パン(丈短め!)にハイソックス、頭に赤いバンダナを巻けば90年代スタイルの完成だ。テントも軽量化が進み、1~2人用で2kg前後に。現代につながるテント泊スタイルは、このころに完成したとみていいだろう。
Now
現代のテント泊スタイルは、おしなべてスマートに。UL(ウルトラライト)スタイルを突き詰めずとも、装備類の小型化・軽量化が進み、ザック容量は50Lもあれば充分。登山用ウェアも軽くて高機能のものが増えた。いまどきのテント泊ソロハイカーは、アーシーな色味のシュッとしたウェアに身を包み、吟味された装備を詰めたザックを穏やかな表情で担ぎ、テント泊を楽しんでいる。
(山と溪谷2025年6月号より転載)
プロフィール
吉澤 英晃
1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出合い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンとして約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。
雑誌『山と溪谷』特集より
1930年創刊の登山雑誌『山と溪谷』の最新号から、秀逸な特集記事を抜粋してお届けします。
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