天空のビーチ・日向山&甲斐駒ヶ岳の展望台・鞍掛山へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

読者レポーターより登山レポをお届けします。白麻佑季さんは甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ、2967m)の展望台、日向山(ひなたやま、1660m)と鞍掛山(くらかけさん、2037m)へ。

文・写真=白麻佑季


「天空のビーチ」で知られる山梨県・日向山とその先の鞍掛山まで挑戦することにした。

最寄りの駐車場は矢立石(やたていし)登山口駐車場で、山行距離が短いが駐車スペースは狭い。そこで、矢立石登山口まで歩いて1時間ほどプラスとなるが、駐車場が広く公衆トイレがあることから尾白川(おじらがわ)渓谷駐車場を利用した。平日にも関わらず朝7時には多くの車が駐車していた。黒戸尾根を歩いて甲斐駒ヶ岳をめざす人や尾白川渓谷散策、キャンプ場利用者もいるだろう。日向山にも相当数が登っていると思われた。

キャンプ場を過ぎて分岐を右へ登って行くと、右手に苔むした岩と湿地が現われた。木漏れ日が差し込み、緑が美しく輝いている。

日向山 苔岩と沼地
苔岩と湿地

6月中旬を過ぎて気温が一気に上昇。蒸し暑さも加わり、少し登るだけでも汗が流れ落ちる。普段より多めに水を持参しこまめに補給した。急登ではあったが足元は固く締まって安定し、歩きやすい道だ。美しい木漏れ日に癒やされながら気持ちよく登った。

矢立石登山口まで登ると車数台が停まっていた。歩く距離が短いため、体力に不安がある方や急ぎの方はここから登るのがいいだろう。ここから日向山までは1時間半程度。すれ違った人は予想外に少ない。歩きやすく整備された道を登って行くと、日向山山頂に到着。すぐ先が、「天空のビーチ」こと花崗岩の風化でできた真っ白な砂礫地、雁ヶ原(がんがはら)だ。ほぼ貸し切り状態で、澄み切った空と八ヶ岳連峰をバックに、趣味である山ヨガを存分に楽しんだ。

日向山 八ヶ岳をバックに倒立
八ヶ岳をバックに倒立

この時点で相当満足したのだが、今回はその先まで進みたい。前回ここまで登った時は砂礫地の傾斜に足がすくんでその先まで降りられなかったので、次こそはとゆっくり慎重に降りて行った。ここでスマホを落としたら、あっという間に見えなくなりそうで、せっかくの景色だったが楽しむ余裕はなかった。

日向山の砂礫地を振り返る
日向山の砂礫地を振り返る

緊張しながら樹林帯まで降り切ったがすぐに道迷いしてしまった。地図アプリを見ると左にそれて錦滝方面に進んでいることが判明。修正したつもりだったが、なぜかルートを外れていた。踏み跡がさまざまな場所にあり、わかりづらい。「日向山から先は一気に難易度が上がる」という登山記録を多く読んでいたため、こういう感じの道なのだろうと思い込んでいた。違和感のある足場もそのまま進んで最終的には無理矢理よじ登った所もあった。体力を消耗するので注意が必要だ。

日向山の先の鞍掛山へ
登山道を外れてしまうこともしばしば

細かいアップダウンを繰り返しながら、細い尾根筋やザレ場を慎重に進む。息が上がり何度も立ち止まっては少しずつ進んで行き、ようやく展望のない鞍掛山までたどり着いた。その先の鞍掛山展望台はいったん降りてから登り返す。慎重に進んで行くと小さな砂礫地が現われ、守り神のような石仏達が出迎えてくれた。

鞍掛山展望台の石仏
鞍掛山展望台の石仏

日向山からすれ違ったのは2組のみ。鞍掛山展望台には誰もいない。お陰様で眼前の甲斐駒ヶ岳や鋸岳(のこぎりだけ)などを一人でゆっくりと堪能した。

甲斐駒ヶ岳を見ながら山を表現したヨガのポーズ
甲斐駒ヶ岳を見ながら山を表現したポーズ

甲斐駒ヶ岳山頂の雲が切れるのをしばらく待ちながら、昨年、尾白川渓谷駐車場から甲斐駒ヶ岳の日帰りピストンに挑戦したことを思い出した。私が挑める限界の山行だったが、さらに甲斐駒ヶ岳、鞍掛山、日向山を日帰り周回してしまう屈強な人たちがいることに驚く。

山行中、目に留まった植物は、マイヅルソウとイワカガミ。花は終盤に差し掛かっていたが、可憐に咲く姿に気持ちが和んだ。

マイヅルソウとイワカガミ
マイヅルソウとイワカガミ

時折、鳳凰三山のオベリスクや、市街地の展望も見えて気持ちが上がる。

日向山〜鞍掛山 展望が開ける所
展望が開ける所が時々ある

復路は道迷いしないよう気を付けたつもりだったが、やはりルートを外れてしまった。下山開始直後に木の根っこが張り出しているザレ地で迷い、往路で迷った雁ヶ原の近くの樹林帯でも、岩伝いに歩いたがルートから外れた。

さらに日向山手前の砂礫地では、背中から差してくる直射日光と疲労の蓄積によって、足を上げるのが相当重く感じられた。それでもやはり雁ヶ原の景色は神秘的で目を奪われた。

日向山手前の砂礫地
砂礫地に生きる木の木陰がありがたい

午後の八ヶ岳連峰もしっかりと見ることができた。ありがたいことにここでも貸し切りで、一人景色を堪能してから出発。

日向山 午後の雁ヶ原
午後の雁ヶ原。奥に八ヶ岳連峰

ここまで無事に降りてきて気が抜けたようだ。足先が痛み始めて急激にペースが落ち、気持ち悪さもあったが我慢してしまった。

日向山 矢立石登山口
矢立石登山口

なんとか矢立石登山口まで降りた所で休憩を取ることにしたが、ここに車を停めればよかったと後悔するほど、疲労困憊していた。

バックパックの中に友達からもらったゼリーがあることに気付いた。食べてみたらとてもおいしく喉越し爽やかでどんどん入っていく。食欲が戻り、驚くほど回復できた。どうやらシャリバテしていたようだ。自分では行けると思っても補給のタイミングは少し早めの方がいいかもしれない。そのことも含めて学びの多い山行となった。ケガなく無事に帰れたことに感謝したい。

(山行日程=2025年6月18日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 9時間10分
行程:尾白渓谷駐車場・・・矢立石駐車場・・・日向山・・・雁ヶ原・・・駒岩・・・鞍掛山・・・展望台・・・鞍掛山・・・駒岩・・・雁ヶ原・・・日向山・・・矢立石駐車場・・・尾白渓谷駐車場
総歩行距離:約12,800m
累積標高差:上り 約1,771m 下り 約1,771m
コース定数:39
白麻佑季(読者レポーター)

白麻佑季(読者レポーター)

中央&南アルプスに挟まれた、長野県上伊那郡在住。ヨガを仕事にしていて山でもヨガをするのが趣味。さまざまな自然が身近にあるおかげで、毎日元気にゆる~く生きてます。

この記事に登場する山

山梨県 /

日向山 標高 1,660m

日向山は、南アルプスの前衛、背後に甲斐駒ヶ岳を仰ぐ位置にある。大きな山に囲まれて目立たないものの、魅力が多く訪れる登山者も多い。 とくに山頂付近に雪のように広がる白いザレは人気で、そこから広がる南アルプスや富士山や八ヶ岳の展望、そして美しいカラマツ林など見どころが多い。開けた山頂の真っ白な大地と、新緑の緑のコントラストも美しい山。

山梨県 /

鞍掛山 標高 2,037m

南アルプスの主脈から外れ、ひっそりとそびえる山だが、甲斐駒信仰に結びつく、時代を経た石仏や祠が残る山だ。山頂からの展望はないが、山頂から南に下ったところに展望台があり、甲斐駒の迫力ある北東面の雄姿が目に飛び込んでくる。

プロフィール

山と溪谷オンライン読者レポーター

全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。

山と溪谷オンライン読者レポート

山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。

編集部おすすめ記事