アジサイとブドウを楽しむ猛暑の大平アルプス

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読者レポーターより登山レポをお届けします。スラ男さんは涼を求めて栃木県栃木市の大平山神社(おおひらさんじんじゃ)のアジサイを見にいきました。その後は猛暑の大平(おおひら)アルプス縦走へ。

文・写真=スラ男


今年の梅雨はどこへやら。連日の猛暑に熱中症が心配です。日本アルプスやそのほかの高山がシーズンを迎えるなか、ぼくが主に活動している低山は厳しい季節です。そんななかで少しでも涼をと、栃木県栃木市にある太平山神社(おおひらさんじんじゃ)のアジサイを見に行きました。

太平山&晃石山の案内板
大平町のご当地アルプス「大平アルプス」をゆく

最寄りはJR大平下駅ですが、東武鉄道利用で新大平下駅からスタート。登山口をめざして歩いていくと、大きな町の案内板があったので本日の行程を確認。ぼくは大中寺(だいちゅうじ)から謙信平(けんしんだいら)、あじさい坂を経て太平山神社へ行く予定です。目の前に横たわる低山帯は大平町の地名をとって「大平アルプス」(※太平アルプスとも)と呼ばれます。

緑色のブドウ畑
町なかのアジサイ、緑色のブドウ畑で涼を感じる

駅から歩いてきてすでに猛暑でぐったりですが、7月上旬までが見ごろのアジサイが元気に咲いているのがうれしいかぎり。また、この時季はブドウも旬で、ブドウ畑にたわわに実ったマスカットの緑色がまぶしい。

大中寺の参道
参道のアジサイの花はちょっと少なめ? これには理由が

大中寺の参道の脇には色とりどりのアジサイが……!?と思いきや、ちょっと少ない印象。地元をよく歩かれている方の情報によれば、猛暑の影響なのかここ1~2年アジサイの花付きがいまいちだそうで。それでも境内に入るとたくさんのアジサイが迎えてくれました。

また、大中寺は上田秋成(うえだあきなり)の『雨月物語』の「青頭巾」ゆかりのスポットでもあります。境内にある七不思議をたどっていくと、背筋がゾクっとして暑さが和らぐかも。

謙信平からの眺め
よい眺め! 中央に見える特異な山は岩船山

大中寺の境内奥から太平山神社までの登山道は急な登り。ゴツゴツした露岩が目立ち、栃木の低山らしさを感じます。上杉謙信がその眺めを絶賛した故事にちなむ謙信平(けんしんだいら)に着くと、確かに「おお~!」と暑さを吹き飛ばす景色が飛び込んできました。

中央に見える特異な山容の岩船山(いわふねやま)は、日本三大霊山のひとつとして数えられ(※諸説あり)、そのロケーションから撮影地としても使われています。大平アルプスはあそこまで続いていますが、本日はセクションハイクの予定です。暑いので。

白いアジサイ「アナベル」
品のある白いアジサイ「アナベル」

謙信平は秀逸な眺めだけではなく、さまざまなお茶屋さんとその味覚を楽しむテラスが設置されています。白いアジサイに囲まれ、風鈴の音に癒やされる。なんて素敵な空間でしょうか。

今回は早朝のためお茶屋さんの営業時間前ですが、太平山の三大名物「焼き鳥」「玉子焼き」「太平だんご」はぜひいただきたいグルメです。

花手水
グラデーションのかかったアジサイ
あじさい坂
花手水、グラデーションのかかったアジサイ、そして待ち受ける石段

謙信平から直接神社まで登ることができますが、あじさい坂を経由したいためいったん下ります。六角堂から続くあじさい坂は、太平山神社を代表するフォトジェニックな人気スポットですが、石段の数は1000段といわれ、実際にこの坂を歩くにはなかなかの体力を要します。小さいお子さんも一歩ずつがんばって歩いていました。

太平山神社
茅の輪が設置された太平山神社

あじさい坂を登りきると空気は一変し、神社の“神域”へ入っていきます。ともあれ、また石の階段です。もうボーナスステージと割り切って、最後までがんばりましょう(笑)。

鮮やかな朱色の社殿が見えてきたら、太平山神社に到着です。6月末なので茅の輪が設置されています。茅の輪はくぐるけれど、30日に行なわれる「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」には参加したことがないんですよねえ。

展望スポット
縦走の各所に好展望スポットがあるので、秋冬に再訪したい

神社から奥宮までは5分ほどですが、ここからはしっかりと登山道です。参拝客もここまではお参りしにきますが、普段着の方には「この先は行かないほうがいいですよ、暑いので」と伝え、ぼくはひとり灼熱の低山へ。

太平山(おおひらさん)、晃石山(てるいしさん)と峠を交えたアップダウンを繰り返し、低山における熱中症のことを考える。歩いていて痛感しますが、やはり盛夏の低山縦走はかなりハード。山を楽しむならショートハイクにすべきですね。

落石
下山路にあったあまりにも大きな落石。いったいどこから?

桜峠で大平アルプスからエスケープします。途中、スズメバチに接近されますが、慌てずに対処。夏から秋の低山はスズメバチとの遭遇も怖いですよね。山麓の清水寺(せいすいじ)に下りてきてアジサイをと散策しますが、やはりこちらも花付きがいまいち振るいません。

ブドウ直売所
人気のシャインマスカットから変わった品種も

帰路の新大平下駅をめざしていきます。大平町はブドウ栽培が盛んで、大平アルプス南麓にはブドウ団地が広がります。ぶどう通りと名付けられた通りを歩いていると、目の前に直売所に人だかりが。そこには朝採れのフレッシュなブドウがたくさん並んでいました。「試食どう!?」と元気なお姉さま方からいただいたブドウの美味しさときたら。ハイキングで熱された体にしみ入る甘さです。

お土産は「クイーンニーナ」というなかなか流通しないというブドウをおすすめしてもらいました。こういった地域の人・モノとの出会いが低山歩きの醍醐味ですねえ。

大平アルプスと田園風景
大平アルプスと田園風景

ブドウ団地から南に折れて振り返ると大平アルプスの見事な山並みが。これはご当地アルプスにふさわしい風格を感じます。また、田植えの終わった田んぼの風景もみごとで、そういえば栃木県のお米収穫量は全国8位。令和の米騒動などいわれる時代ですが、この美しい日本の原風景がいつまでも続いてくれるように願うしかありません。

(山行日程=2025年6月29日)

下山メシ
インパクト抜群の絶品ざる蕎麦!

「いろり庵洗心」のざる蕎麦

食欲が落ちる日本の猛暑ですが、冷たいお蕎麦は今が食べどき! JR大平下駅の近くにある「いろり庵洗心」さんは、開店と同時に満席となるほど地元に愛された人気店。こちらのざる蕎麦は、大きな竹筒状の器に盛られてインパクトも大!サクサクのかき揚げや、名物の焼きまんじゅうとセットでお腹いっぱい。幸せです~。

MAP&DATA

コースマップ
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 約5時間45分
行程:新大平下駅・・・大中寺・・・あじさい坂・・・太平山神社・・・晃石山・・・桜峠・・・清水寺・・・ぶどう通り・・・新大平下駅 (立ち寄り:いろり庵洗心)
総歩行距離:約14,000m
スラ男(読者レポーター)

スラ男(読者レポーター)

関東近郊の低山をメインに活動。低山で出会う、人と山とが深く結びついた歴史や民俗などを調べるおもしろさにのめりこみ、低山ワールドのさらなる深みへ。そのおもしろさを親子で分かち合いたく、子どもたちの原体験を育む意味も込めて親子ハイキングを始める。

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