滝観賞に、白峰三山が見える絶景稜線歩き。南アルプス・鳳凰三山テント泊
読者レポーターより登山レポをお届けします。なおさんは、南アルプス・鳳凰三山(ほうおうさんざん)をテント泊で周回しました。
文・写真=なお
夏のテント泊縦走に向けたトレーニングを兼ねて鳳凰三山へ行きました。
思い立ったときには鳳凰小屋のテント場は予約で埋まっていたので、南御室(みなみおむろ)小屋を利用することに。南御室小屋泊の場合は、夜叉神(やしゃじん)峠から入山することが多いと思います。
しかし、トレーニングとなると全行程をテントを背負って歩きたい、けれど久しぶりのテント泊なので、コースタイム10時間超えは少し怖い。かつ、月曜の仕事を考えるとなるべく日曜の行程は短くしたい。
……といったことを踏まえ、青木鉱泉から入り、周回コースを反時計回りで歩くのがいいだろうという結論に至りました。
1日目:青木鉱泉〜鳳凰小屋〜地蔵岳〜観音ヶ岳〜薬師ヶ岳〜南御室小屋
朝5時30分ごろ、青木鉱泉の駐車場を出発。出発するころには登山口に近い駐車エリアは満車でした。出発準備中に到着する車も複数あり、人気の高さがうかがえます。
ドンドコ沢コースから、まずは鳳凰小屋をめざします。コースタイム約5時間の道のりは、急な登りが続きます。
道がわかりづらい箇所がいくつもありましたが、赤い目印がいたる所につけてあったため、ほとんど迷うことなく歩けました。
「ドンドコ沢」の名前の通り、このコースは沢をいくつも渡ります。この日はかなり暑かったので、冷たい水で首を冷やしたりと、沢に救われました。
ロープを使って岩をよじ登る箇所もありました。
このコースには滝が3カ所あります。こちらは、1カ所目の南精進ヶ滝(みなみしょうじがたき)です。
ずっと急登が続きます。暑いし、荷物は重いし、なかなか大変です。
途中、富士山の頭が見えるスポットがあります。このときは曇り空でしたが、富士山はきれいに見えました。山頂の展望が期待できます。
3カ所目の滝、五色ノ滝(ごしきのたき)に到着です。こちらは、滝の目の前まで行くことができました。
かなりの水量と落差で、大迫力です。風と水しぶきでとても涼しかったです。
滝から40分ほど歩くと、それまでとはうって変わって、平らで開けた場所に出ました。庭園のような雰囲気です。ここまで来たら、鳳凰小屋まであと少しです。
登山開始から約5時間、10時30分に鳳凰小屋に到着しました。小屋では、水がじゃぶじゃぶ出ていて、冷たくて本当に気持ちがよかったです。持ってきた水がほぼなくなりかけていたので、ありがたく補給させていただきました。
また、小屋にはキバナノアツモリソウというとても珍しい花が咲いていました。見頃は2週間ほどのようで、とてもラッキーです。
昼食をとり、手ぬぐいを購入し、11時前に地蔵岳(じぞうだけ)に向かって出発しました。
25分ほど歩くと樹林帯が終わり、白い砂の道が現われました。とても急なうえに滑るので、思うように進めません。しかも、この頃から晴れてきて、直射日光が当たります。
休み休み登りきり、11時30分ごろ、地蔵岳の山頂に到着しました。山頂には、「オベリスク」と呼ばれるかっこいい岩の塔がそびえ立ちます。
そして、地蔵岳の名の通り、お地蔵さんがたくさん置いてあります。「地蔵を1体背負って下山し、祈念をすると子を授かり、お礼に2体の地蔵を山にお返しすれば、子が健やかに育つ」という言い伝えがあるそうです。
登ってきた方向と逆側には、甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)や仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)が見えます。
オベリスクの下からは富士山が見えました。
続いて、観音岳(かんのんだけ)に向かいます。途中にあるアカヌケ沢ノ頭まで着くと、白峰三山(しらねさんざん)が現われます。天気がよく、絶景です。
白峰三山を眺めながら観音岳へ。白い砂と岩の道がとてもきれいです。
道端には、イワツメクサが咲いていました。
山頂まであと40分のところで、この急な登りが現われます。とにかく暑くてきつくて、心が折れそうになります。
なんとか登りきり、地蔵岳を出発してから約25分、13時25分ごろに観音岳に到着しました。標高2840m、鳳凰三山の最高峰です。
この頃には雲が上ってきていましたが、雲の合間から富士山が見えます。
後ろを振り向くと、雲をまとった甲斐駒ヶ岳が見えました。
景色を楽しみながら30分ほど休憩し、薬師岳へ向かいます。薬師岳までは、さほど急な登りはありません。とてもきれいで心地のいい縦走路です。
14時10分ごろ、薬師岳山頂に到着しました。登山開始から約8時間40分、やっとここまで来ることができました。
山頂から薬師岳小屋まで下ったあと、砂払岳(すなばらいだけ)を登り返します。そこからは、南御室小屋まで30分ほど下り続けます。
15時過ぎ、南御室小屋に到着。久しぶりのテント泊装備を背負っての長時間の山行、がんばりました。
こちらのテント場は予約不要のため、空きがあるか不安でしたが、まだまだ余裕がありました。水はじゃぶじゃぶ出ており、無料で給水可能です。
翌日は、砂払岳で日の出を見る予定です。
2日目:南御室小屋〜薬師岳〜中道~青木鉱泉
3時半ごろ、南御室小屋を出発。砂払岳に向けて歩きます。登りは急ですが、まだ日が出ておらず涼しいのが救いです。
砂払岳まで登ると、雲海から顔を出す富士山が! 雲が透けていて、うっすらと全体も見え、なんだか神秘的です。
4時35分過ぎ、日が昇り始めました。
白峰三山の朝焼けもきれいです。
薬師岳で絶景の見納めをし、中道登山道から青木鉱泉へ下山します。
青木鉱泉への下り道はとても長く、急な箇所や段差が高い所も多かったです。
下り始めてから3時間ほどで、林道に出ました。林道の途中に、青木鉱泉へショートカットができる徒渉コースの目印があります。
森の中を少し歩くと、川へ下りる道があります。増水していると渡れないそうですが、この日は大丈夫でした。岩が滑りやすいので、注意が必要です。
南御室小屋を出てから約5時間45分、9時15分ごろに青木鉱泉に到着しました。
富士山や南アルプスの山々を眺められ、オベリスクや滝など見どころが多く、ハードさもある、とても達成感のある山行になりました。
(山行日程=2025年7月5~6日)
MAP&DATA

なお(読者レポーター)
神奈川県藤沢市を拠点に、夏はアルプス、秋〜春は関東近郊や九州の山に夫婦で登っています。特に北アルプスと伊豆が好きです。
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