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夏山シーズン目前! 岩稜帯にも対応するライトアルパインブーツを、残雪の焼岳でインプレ

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2018年06月30日

今月のPICK UP Zamberlan(ザンバラン)/バルトロGT [キャラバン]

価格: 45,000円+税
重量: 約800g(EUR42片足)

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ライトアルパインブーツとは…。登山前にバルトロGTの仕様を細かくチェック

豪雪地帯の高山でも本格的な雪解け時期を迎え、梅雨が明ければ夏山のシーズンが始まる。今年こそ北アルプスのような高山に挑戦したい、もしくは今年も再訪したいという方も多いのではないだろうか? 森林限界を超えた高所を歩く醍醐味は、なんといっても眺望のよさ。澄んだ空気の中で見渡す限りの絶景を楽しみたい。

ただし、森林限界を超えた稜線や山頂付近は岩や小石ばかりで、ときにはつま先だけを岩に引っかけるようにして険しい岩稜帯を進まねばならないこともある。そんなときに必要なのが、ライトアルパイン系ブーツだ。ソール、アッパーともに硬く、岩場のような不整地でも安定感が高いタイプで、その頑丈さゆえに岩場同様に足元が不安定な雪山や重い荷物を背負ったテント泊縦走などにも向き、トレッキング系ブーツよりも一段階ハードなシチュエーションを得意としている。

今回テストしたのは、イタリアのシューズメーカー、ザンバランの「バルトロGT」。同社の定番ともいえる製品で、厚みのあるスウェードレザーを主体に化繊を組みあわせたアッパー、摩耗に強くて滑りにくいビブラムソール、そしてつま先やかかとなどの要所を補強するラバーというコンビネーションは、見るからに頑丈そうである。丈夫な分だけ重量は片足800g(EUR42/26cm)あり、特別に重くはないが、軽いわけでもない。

ライトアルパイン系ブーツに使われているソールの特徴は、第一にその硬さだ。自分の体重のみならず、テント泊の荷物を背負っていてもあまり曲がることはなく、ソールの一部だけでも足場に引っかかっていればスリップを起こさず、安心して体重をかけられる。反対にソールが柔らかいと足場からずれやすく、体のバランスが失われて転倒を起こしかねない。

ソールのもうひとつの特徴は、つま先やかかと部分の反り上がりがわずかしかなく、全体的にフラットであることだ。湾曲が強いと岩の上の細かな突起をとらえにくく、体重をかけたときにスリップを起こしやすいのである。

今回のバルトロのソールも従来のライトアルパイン系ブーツのセオリーを踏襲し、かなりフラットな形状だ。つま先部分は多少反り上がっているが、かかと部分は完全にまっ平らで地面と平行に接している。もちろんソールの硬度は高く、エッジも効いているので、雪面や雪渓を通過する際にはつま先やかかとから安心して雪上へ蹴り込めるだろう。

かかとにはアイゼン用のコバ(段差のあるミゾ)がついている。しかし、丸みを帯びたつま先には、とくにコバのようなものはない。つまり、このブーツはセミワンタッチアイゼン対応の仕様。現在のライトアルパイン系ブーツはつま先にもコバをつけ、ワンタッチアイゼンを付けられるようにしたものが多いが、バルトロGTの先端部分はトレッキング系ブーツのようにシンプルなのである。

このバルトロGTの内部には保温材などは使われておらず、厳冬期は使いにくい。しかし残雪期や初冬の気温であれば十分に対応できるだろう。その際にアイゼンを併用するならば、間違ってワンタッチアイゼンを組み合わせないようにしたい。

バルトロGTのブーツ内部は、視認性が高いオレンジ色だ。暗い時間帯に脱ぎ履きする際は足元が見えやすく、デザイン的な美しさにも貢献している。

靴紐を緩めると、上部は大きく開く。だが、すんなりと足が入るわけではない。バルトロGTのアッパーは見た目以上に硬く、同時に足首の部分をタイトなフォルムに仕立てあり、足を入れようとすると、いったんその部分で足が引っかかるのだ。だが、さらに足を押し込んでしまえば、足首部分が細いからこそ過不足なく足全体を包み込んでくれる。このようなアッパー上部も含め、ブーツ全体の足型が立体的によくできている印象だ。

 

足入れしてみて、さらに細かく。ソール、タン、フックまでチェック

とはいえ、ブーツの足型が合うかどうかは、履く人の足の形状次第である。以前、専門家に計測してもらったことがある僕の足は、日本人としてはわりと一般的な形で「癖がない」タイプらしいが、バルトロGTに足入れした感触でいえば、足型は合っていそうだ。あえていえば、つま先のほうがいくらか狭い気もするが、ある程度長い時間歩いてみないと本当に問題があるかどうかは判断できない。

ブーツの内部にはフットベッド(インソール)が敷かれている。裏面が起毛しているのは寒冷な時期の保温やしみこんだ汗を発散させる効果を期待しているのだろう。

ただし、このフットベッドはあまり厚みがなく、それほど立体的でもない。衝撃吸収性はイマイチだ。よりよい履き心地を得るためには、フットベッド専用メーカーのものに買い直したほうがいいかもしれない。

ソールを見てみよう。バルトロGTは岩稜帯に強いライトアルパイン系だけあり、つま先には一般的に「クライミングゾーン」などと呼ばれている、ミゾを減らした平坦な部分がある。岩稜帯ではこの部分を岩の突起に引っかけ、スリップを防止するのである。

バルトロGTの興味深い特徴は、かかと部分も同様にクライミングゾーン的にミゾを減らしていることだ。他のブーツメーカのモデルのかかとには、このようなパターンのソールは少ない。岩場での機能性を高めるため、バルトロGTに加えられた工夫なのであろう。

バルトロGTのライニングにはゴアテックスパフォーマンスコンフォートが使用され、当然ながら防水性は高い。構造上、上から2番目のフックくらいまでは長靴のように完全防水が期待でき、少々深い水たまりに足を踏み入れたり、小さな沢を徒渉したりしても内部は濡れない。一方、アッパーのメインは分厚いレザーなので、この部分からの透湿性は期待できないが、タンから続く部分は化繊のコーデュラナイロンであり、ここからは内部の湿気が逃げていく。

Dリングなどの靴紐を締めるためのパーツは、部分によって3種類が使い分けられている。それほど力を入れなくてもフィット感が調整しやすく、なかなかの使い勝手だ。

また、使用されているフックはゴツめのブーツにしては小型である。アッパー上部のフックが大きいと、歩行中に逆の足の靴紐が引っかかって転倒するといったトラブルの原因になるが、このブーツであれば危険は少ないはずだ。

フックの大きさは付属の靴紐の太さともぴったりと合い、軽く引っかけるだけで締め付け感を固定できる。フィット感の調整方法はまったく問題ない。

こんな感じで、左右の足にブーツを合わせ、歩行を開始。ブーツ内に入れた足にはとくに圧迫感はないが、見た目はかなり細身のシルエットだ。

今回のテストの場は北アルプスの焼岳。初夏の山にはまだまだ雪が残り、岩場に加えて残雪の上も歩けるルートである。

 

いよいよ焼岳へ。徐々に馴染んでいくバルトロGTの履き心地は?

上高地を出発して少し標高を上げただけで、梓川が作り出す谷間が眼下に広がり始める。

早朝の山には霞がかかっているが、これから青空が広がることを期待したい。

歩き始めてから1時間くらいまでのバルトロGTの印象は、とにかく「硬い」ということだ。アッパーがほとんど曲がらず、とくに登り道では前方への体重移動がままならないのである。しかし1時間を超えるころから、その印象は変わってきた。歩き続けることによってアッパーのレザーがわずかながらも曲がるようになり、違和感が徐々に減っていったのだ。もとより、今回の僕はこの手の重厚なブーツを慣らし履きもせずに試しているのだから、違和感があったとしてもブーツに問題があるわけではないのだが……。

しかし、このことを逆に考えれば、1時間程度で足なじみがだいぶよくなったのだから大したものだ。今回は日帰り登山でのテストだったが、さらに数日間履き続ければ、ますますよくなったに違いない。

稜線まで上がると、焼岳が近付いてくる。標高が低いからか、周囲の山々に比べれば残雪の量は少ない。

モノトーン的なこの時期も美しいが、新緑が色濃くなるに従って、また別の美しさが増してきそうである。

稜線上にはいかにも火山らしい大きな岩が点在し、ソールのグリップ力をテストするには好都合だ。バルトロGTのソールが岩をとらえる力は申し分なく、つま先のクライミングゾーンだけで体を支えてみてもほとんど滑らず、足を置いた岩が欠けでもしない限りは、行動に支障は出ないだろう。僕は下の写真以上に傾斜が強い場所でも試してみたが、まったく支障はなかった。

こういう場所ではアッパーの硬さも非常に効果的だ。足首にあまり力を入れなくてもアッパーが体の左右のブレをしっかり抑えてくれ、バランスがとてもとりやすいのである。その結果、滑落の危険は大幅に減る。そんなソールとアッパーの性質こそが、ライトアルパイン系ブーツが岩稜帯に向いている理由であり、バルトロGTも例外ではない。

穂高連峰を背中に、山頂へと進んでいく。この日は土曜日で上高地は朝からにぎわっていたが、焼岳の登山道は比較的静かだ。

雪解けして間もないこともあり、シーズン真っ盛りの時期よりも登山道の上には小石も多く、ときどき石車に乗って足を取られる。

しかし、バルトロGTの硬いソールはスリップを止めてくれ、転倒には至らない。小さな石であっても、それが地面に埋もれて固定されていれば、確実に足場として拾ってくれるのだ。

足場をグリップしきれずに少々滑ったときもないわけではないが、多くの場合は僕が足を置く位置が悪かったのである。ソール自体の性能は充分であろう。

山頂に到着し、北峰と南峰の間にある正賀池を見下ろす。ここは何度来てもよい場所だ。

上高地や新穂高温泉方向から登る人は少なかったが、中の湯方面からの登山者は思いのほか多く、山頂は騒がしい。誰もが抜群の眺望に喜んでいるようだった。

僕は山頂から中の湯へと下山していった。こちら側から登ってきた登山者の大半はちょうど山頂付近にいるというタイミングで、すれ違う人は少ない。

焼岳の南東斜面には大きな雪渓となっていたが、雪はほどよく緩み、アイゼンがないほうが楽に歩ける状態だ。バルトロGTのかかとは確実に雪面へ蹴り込まれ、体のバランスはしっかりと保てる。雪渓上はじつにスムーズに進めた。

雪渓を過ぎて樹林帯に入ると、登山道の一部は泥と化していた。足を踏み入れるのはためらわれるが、アッパーの防水性と撥水性のテストだと割り切って歩いていく。

新品のブーツだけに防水性は心配していなかったが、レザーの撥水性も十分だ。泥水から足を引き上げ、数歩歩けば大半の水分は弾け飛ぶ。とはいえ、レザーの撥水性は必ず落ちていくもので、撥水スプレーなどによる日ごろのメンテナンスが欠かせないわけだが、少なくても今回の初期状態での性能は文句ないといえる。

その後、森の中を下り、車道へと下りた。そして中の湯バス停まで歩いた僕は、バスで再び上高地に入った。

河童橋付近からは焼岳がよく見える。つい数時間前には、あの山頂にいたのが信じられない。それにしても、初夏の上高地は本当に気持ちよく、帰るのが惜しくなってしまった……。

 

総評:ザンバラン バルトロGTは、岩稜帯の縦走でこそ、真価を発揮しそうだ

今回は日帰りとはいえ、林道、森、岩場、雪渓、泥などルートにはバリエーションがあり、バルトロGTの基本性能はおおむね把握できた。最後に改めてバルトロGTの特徴とテストの感想をまとめたい。

冒頭で書いたように、バルトロGTを含むライトアルパイン系ブーツの大きな特徴は、ソールやアッパーに代表される「硬さ」だ。この硬さが岩場や雪上といった難所での安定感を生み、スリップによる滑落の恐れを減らす。また、足首をホールドする力が強いので、足にあまり力をかけなくても体のバランスが支えられるわけだ。

しかし、この「硬さ」は傾斜がきつい岩場や足元が崩れやすいザレ場などでは大いに頼りになるが、整備が行き届いて歩きやすい登山道ではむしろ負担になる。今回は歩行開始から1時間以上経つといくらか柔軟になったとはいえ、バルトロGTは他のライトアルパイン系ブーツよりも全体的に硬い印象で、今回のルート上でいえば、上高地から稜線に上がるまでの森の中、そして山頂と雪渓を過ぎてからの下り道では、少々歩きにくかったことは否めない。その分だけ足へ負担はかかり、疲れやすくなってしまう。

あくまでも僕の印象だが、焼岳への日帰り登山に使うには、バルトロGTはしっかりし過ぎていた。この時期の焼岳では、ライトアルパイン系ブーツの中でも、もう少し軽めのタイプのほうがよかったかもしれない。だが、今回のシチュエーションにはゴツ過ぎたというだけで、バルトロGT自体は優れたものであり、今回とは異なる状況のほうが合っていると思うだけである。

適しているシチュエーションの一例は、森林限界を超えた稜線を数日かけて縦走するとき。土や落ち葉のような柔らかい地面にはバルトロGTの硬さは合わず、疲れが増すばかりだが、稜線上の岩場を長く歩く際には歩行が安定し、むしろ疲労の防止になる。また、荷物の軽い日帰り登山よりも、トータルの装備が重くなるテント泊縦走に向いている。北アルプスであれば、焼岳の山頂往復ではなく、表銀座や後立山連峰の縦走のようなときに実力を発揮するのだ。また、北アルプスでは急峻な岩場が連続する大キレットやジャンダルムなどにも適している。重くて硬いブーツで多少疲れやすいとしても、それ以上に難所での安全性がアップするメリットは捨てがたいからだ。

やはり道具は、適材適所。バルトロGTの強靭さを必要とするシチュエーションはそれほど多くはないかもしれないが、とくに難所やハードルートを目指す人であれば、ブーツ選びのひとつの選択肢に入れる価値はありそうである。

 

登った山
焼岳
長野県・岐阜県
標高2,455m

教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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