ヤマヤの超難題!? 家族に笑顔で見送られて、山に行く方法は?
質問:友人に誘われて、はじめて山に登った頃は2ヶ月に一度程度の登山で満足していましたが、現在は「山に夢中」です。週末は、ほぼ毎週山に出かけています。最初は日帰りが中心だったのですが、最近は土日とも山に行くことが増えています。
妻も最初は「健康的で良い趣味ね」と理解してくれていましたが、週末のほとんどを山に行くようになってからは、あきれ果てて週末が近くなると露骨に不快な様子です。ちなみに妻はインドア派で、一度、一緒に山に行って虫に刺されたり筋肉痛になったりしてから、「山は絶対に行かない」と宣言しています。
家族に笑顔で見送られて山に行く方法はないのでしょうか?
ヤマヤの超難題!? 果たして対策はあるのか…?
結論から言って「家族に笑顔で見送られて山に行く」なんて方法は、なかなか難しいです。
登山も月に一回程度、日帰りで近郊の山に登っている間は良い趣味・・・と言ってもらえるものですが、登山というのは奥が深く、最初は満足できていた日帰り・近郊の山からステップアップするものです。
「こんな楽しみ方もあるのか!」と山小屋泊からテント泊、単純な登頂から縦走、だんだんとバリエーションルートにも興味が出てきて、クライミングにも手を染めだし、「俺は冬山だけは絶対にやらない!」なんて言っていたはずが、アイゼンやピッケルなども使うようになるものです。
しかも、たまに行くだけでは本格的な登山をする体力や技術が身につかないので、時間がある限り山に行かないと不安になり、気が付いた時には家族の目が本気で怒っている・・・、という例は山にはまってしまったヤマヤが一度は経験する運命です。
・・・で対策は?
最も良いのは「家族も山に連れて行く」「家族も山好きにしてしまう」こと、です。
そうはいっても・・・
真夏の低山に山に連れて行って暑い思いをさせたり、いきなり行動時間の長い山に連れて行ってバテさせたりしてはいけません。爽やかな好天の日に無理のない山に一緒に登って「たまには汗を流すのも悪くないな」と山の良さを知ってもらいましょう。こんな登山を月に一度程度は行くのが最も理解を得られる道です。
ただし本格的な雪山やバリエーションルート、海外遠征となると、生命の危険もあるうえにお金もかかります。それでも「家族に笑顔で見送られて・・・」は、どう考えても難しいものです。
普段から、家族との時間を意識的に作り、早起きして家事もガンバリ、仕事も一生懸命やって、社会の中に一定の居場所を得る等と相当の努力が必要です。
2016年5月に、僕の主宰する「風の谷」でヒマラヤの5000m峰に登山した後、『山と溪谷』で「登頂者座談会」をやったのですが、「一番、難しかったこと」が、高所の苦しさでも、アタックの日の長時間行動でもなく「家族の理解」だったことを思い出しました。
登山にハマってしまった人! 毎週のように山に行くためには、登山以外の部分もガンバルしかありません!
プロフィール
山田 哲哉
1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。
著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
⇒山岳ガイド「風の谷」
⇒質問・お悩みはこちらから
山の疑問・難問、山岳ガイドが答えます!
登山に必要な知識は、どのように学んでいますか? 今知るべき、知識や技術に関する質問を、山岳ガイドが次々に回答していきます。