北アルプスの絶景をめざして、上高地から霞沢岳へ

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読者レポーターより登山レポをお届けします。ともさんは穂高連峰の絶好の展望台・霞沢岳(かすみざわだけ、2646m)へ。

文・写真=とも


昨年の秋に登ってみたいと思った霞沢岳。その時には徳本峠(とくごうとうげ)小屋の営業期間が終了していたので、今年の営業開始を待って1泊2日の山行を計画しました。下山日は3連休の最終日であり、午後には上高地バスターミナルや道路の大混雑が予想されたため、1日目に霞沢岳までピストンして徳本峠小屋に宿泊、2日目は下山のみという計画でした。

1日目は夜行バスで早朝に上高地バスターミナルに到着しました。今年初めての上高地、しかもお天気がよいのでテンションが上がります。

上高地バスターミナル
朝5時過ぎの上高地バスターミナル

少しひんやりとした空気の中、まだ観光客の少ない河童橋を横目に見ながら、明神館の先にある徳本峠への分岐をめざします。多くの登山者が徳沢や横尾に向かうため、分岐を右に進んだあとしばらくは前後に誰もいない状態となり、熊鈴を盛大に鳴らしながら歩きました。

徳本峠に向かう分岐
徳本峠に向かう分岐
同行者
しばらくは前後に登山者がなく、歩いているのは自分と同行者のみ

軽トラックなら通れそうな道の終点に短い橋があり、そこからが本格的な登山道となります。クマザサの茂るつづら折りの道、徒渉が3カ所ほどありました。3カ所目は登山道が若干崩落していたので、慎重に通過しました。

登山道
登り始めの登山道の様子
登山道の崩落
登山道が崩落している場所

このすぐ先にある「穂高ビューポイント」では、明神岳(みょうじんだけ)の鋭い峰々が目に飛び込んできました。さらに40分ほど歩いて徳本峠に到着です。

穂高ビューポイントからの景色
穂高ビューポイントからの景色
本峠小屋
お世話になった徳本峠小屋

小屋の軒下に一部の荷物(持参したワインなど)をデポさせていただき、まずはジャンクションピークへ。ここでの眺望は一方向だったため、さくっと先に進みます。

ジャンクションピークからの下りでは何組かの登山者とすれ違い、この先の様子を聞くたびに期待が高まる一方、思いのほか長い下りに、これをまた登り返すんだよな~という不安も募りました。

御嶽山と乗鞍岳
ジャンクションピークからの下りで見える御嶽山(左奥)と乗鞍岳(右奥)

鞍部を超えるとK1ピークへの登りが始まります。かなり急登だという事前知識はありましたが、想像をはるかに超えていました。

K1ピークへの急登の始まり
K1ピークへの急登の始まり
続く急登
まだまだ急登が続く

斜面はザレザレで、つかまるロープや岩、木の根がないときには、生い茂っているクマザサを束ねてつかんだりしながら、はうようにして登りました。しかも暑い!!

そうしてやっとのことでたどり着いたK1ピークでは、すばらしいごほうびが待っていました。焼岳(やけだけ)、笠ヶ岳(かさがたけ)、穂高(ほたか)連峰、常念岳(じょうねんだけ)などの稜線……。圧巻でした。

K2ピークと霞沢岳
K2ピーク(右)と霞沢岳(中央)
焼岳
K1ピークからの焼岳
笠ヶ岳
同、笠ヶ岳。手前には帝国ホテルの赤い屋根
穂高連峰
同、穂高連峰
常念山脈
同、常念山脈

しかしこの急登ですっかり体力を削られました。K2ピークと霞沢岳は目の前とはいえ、なかなかのアップダウンと距離があるように見え、先に進んだら16時までに宿泊地にたどり着けないと思い、K1ピークで折り返すことに……。そう決めたら時間に余裕ができたので、景色を堪能しながら長めの休憩をとって下山開始です。

ヤマキンポウゲ
急登での疲れを癒してくれる、ビタミンカラーのミヤマキンポウゲ
ハクサンフウロ
可憐なピンクのハクサンフウロ

鞍部からジャンクションピークまでの登り返しは、さきほどの急登を思えばつらくはありませんでしたが距離は長く感じたので、早くビールを飲みたい!と思いながら歩みを進め、徳本峠小屋には15時に到着しました。

徳本峠小屋の営業開始は大正12年、建物は登録有形文化財だそうで、代々受け継がれているように見える太い柱や梁があり、温かみを感じる室内でした。小屋番さんによると、改装する際には事前に申請する必要があるそうです。

食堂兼談話室
風格のある柱がすてきな食堂兼談話室

そんな歴史のある山小屋で念願のビールを飲み、夕食までの時間は持参したワインを飲みながらほかの宿泊者と山の話をして楽しく過ごしました。こうした時間も早めに小屋に着いてこその醍醐味!

食事は夕食・朝食ともおいしく、そして野菜メニューが豊富で全体のボリュームが多すぎないという点が、いちおう“女子”である私にはうれしいものでした。

山小屋の夕食
夕食・朝食ともに野菜メニューが豊富(写真は夕食)
ニホンザル
2日目の朝5時ごろ、ニホンザルの群れが小屋の周囲で朝食中

翌朝も晴天、景色を楽しみつつもさくさくと下山し、何事もなくバスターミナルに到着かと思いきや、上高地ビジターセンターの前で、建物の裏手を流れる川の対岸(山の斜面)に、なにやら動くものが……。またニホンザルかな、と思いましたが、黒い! いくら木々が茂って暗い場所とはいえ、黒すぎる! ツキノワグマだ!!

そのクマは川の上流に向かって歩いていき、その後見えなくなったのですが(斜面を登ったよう)、念のためビジターセンターの職員の方にお伝えしました。

数時間後、同センターのクマ目撃情報にアクセスしたところ、バスターミナルとビジターセンターで1時間の間に3回の目撃情報があり、もしそれらが同一個体だったとすると、自分たちが見たのは親子グマの「子」だった可能性があることがわかりました。

バスターミナル到着直前に山での危険性を再認識することになりましたが、霞沢岳K1ピークからのすばらしい景色を満喫した山行となりました。

河童橋からの焼岳
河童橋からの焼岳

(山行日程=2025年7月20~21日)

MAP&DATA

高低図
最適日数:2泊3日
コースタイム:【1日目】9時間30分
【2日目】2時間30分
行程:【1日目】
上高地バスターミナル・・・河童橋・・・明神・・・徳本峠・・・ジャンクションピーク・・・K1・・・ジャンクションピーク・・・徳本峠
【2日目】
徳本峠・・・明神・・・河童橋・・・上高地バスターミナル
総歩行距離:約20,800m
累積標高差:上り 約1,816m 下り 約1,816m
コース定数:47
とも(読者レポーター)

とも(読者レポーター)

山とお酒が大好物! 登山後の一杯は至福の時間です。日帰りでは奥多摩や中央本線からアクセスしやすい山に、夏山シーズンには北アルプスあたりまで出かけます。

この記事に登場する山

長野県 / 飛騨山脈南部

霞沢岳 標高 2,646m

 常念山脈の最南端にそびえるのが霞沢岳。上高地のウエストン広場から梓川を隔てて見上げると、梓川の清流の向こうにそびえる、小柄だが筋肉質のいい貌(かお)をしている山だ。  山の名は東面を流れ下る霞沢からつけられている。近代登山の黎明期に、この沢を上高地入りの登路にしたこともあったが、あくまでもバリエーション・ルートで、徳本峠が本道であった。  上高地の真上にそびえるいい山だが、ほとんど登らず、名も知らぬ人が多い。登山道はなく、八右衛門沢をつめるのが唯一のルートだった。しかし最近では徳本峠から稜線通しの道ができて、ようやく日の目を見るようになっている。北隣の六百山とともに見直したい山だ。  登山道は上高地から明神、徳本峠経由で7時間。

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