ペダルを漕いで、あきる野市の戸倉城山へ!道草も楽しむワンデイトリップ【ルポ・チャリ登】
山形県をホームグラウンドにロングトレイルを歩き続ける斉藤正史さんは、海外のロングトレイルを歩くかたわら、東京都心の超低山巡りを続けています。これまで電車・バスなどの公共交通機関を利用して登っていた山ですが、バス区間を自転車に置き換えるだけで、楽しみ方が大きく変わることに気づきました。たとえば、バス時間に制限されない自由。ちょっと帰りに寄り道して、サイクリング気分も楽しめます。せっかくの休日、山だけ、自転車だけ楽しむのはもったいない。自転車×登山、略して「チャリ登」の楽しみをご紹介します。
文・写真=斉藤正史
武蔵五日市駅から朝の町を走って登山口へ
7月某日。仕事で東京へやってきました。いつものように上野駅で降り、自転車を組み立て、自転車を置くスペースがある定宿に入ります。さて、いよいよチャリ登を決行するのですが、この暑さなので今回はどこの山から始めようかと悩みます。
まずは、最初だし都心からあまり遠くない山から行こうかと、地図を見てあきる野市の城山(戸倉城山)にターゲットを絞りました。駅で降りたらどこの登山口から登ろうか。第1回目だし、自転車の盗難も心配です。そんなこともあり、光厳寺(こうごんじ)脇にある登山口から登ることにしました。人の目がある寺なら、盗難の心配も少ないかなと考えたわけです。
チャリ登当日は前日から続く暑さが予想されました。始発にはさすがに間に合わなかったので、2番目の列車に乗り込みます。この暑さですから、できれば昼ごろには山を下りてこられたらいいなと考えました。乗車する電車だけ決めれば、あとはバスの時間も気にしなくてすむのがチャリ登のいいところです。
今回のチャリ登の相棒は、ブロンプトン。なんと今回東京初デビューでした。新車は手が出なかったので、中古をチョイス。しかも台湾製です。ブロンプトンといえば英国ブランド。ファンからは、「それ、ブロンプトンじゃない」と言われそうです。台湾ブロンプトンは、本家ブロンプトンとは折り畳みサイズが少し違ったり、パーツも異なったりしますが、折り畳んだときの圧倒的なコンパクトさは変わりません。新幹線の荷物棚にも楽に入れられますし、電車の座席の奥行サイズとほぼ同じなので、電車の入口付近に置いても邪魔になることもありませんでした。
もちろん、私が愛用する自転車カジュアルブランド「リンプロジェクト」の専用設計のブロンプトン用の輪行バッグも、ブロンプトンキャリーハンドルもばっちり装着できました。これでショルダーハーネスが付けられるので、持ち運びも楽になります。
3度ほど電車を乗り換えると、武蔵五日市駅にたどり着きました。まだ朝ということもあり、学校へ向かう小学生や高校生の通学の列と遭遇しました。
山形の田舎に住む私には、初めて聞いた駅、そして初めて降り立った駅でした。実は、この武蔵五日市駅のある五日市線は、浅野財閥の私鉄五日市鉄道が建設したものだそうです。1940年に同じく浅野財閥の私鉄・南武鉄道に合併され五日市線となりましたが、戦時買収により国有化されたそうです。私鉄が国有化されるとは、あまり耳にしないケースですね。
まずは、軽く武蔵五日市駅の歴史をおさらいしつつ、ブロンプトンを組み立てて走り出します。
橋を渡るとすぐに洋菓子店「おかしやパージュ」があるのですが、当然朝は閉まっていました。でも、安心してください、お店は閉まっていても自動販売機はありますから。行動食をお忘れの方は自動販売機をご利用ください。
檜原街道をそのまま進んでいくと、いろいろありますが特に気になったのがこれ。五日市日枝神社の脇にある、ミヤザキ商店です。「食料品製造販売業者」とグーグルマップには書いてあるのですが、何屋かよくわからないのです。さすがに早朝ですし、ドアを開ける勇気もなく軽くスルーしてしまいました。さらに檜原街道を進んでいくと、行動食を買おうと思い目を付けていた「事務用品・駄菓子むらの」があります。まさか7時から開いている駄菓子屋があるとは思いませんでした。さっそく自転車を停めると……。「10時に帰ってきます」と張り紙が。なんと、まさか行動食が手に入らないというトラブルに見舞われたのでした。先ほどの「おかしやパージュ」の自動販売機で買ってくればよかったと思えど、後悔先に立たず。仕方ないのでそのまま進んでいきます。
子生神社(こやすじんじゃ)手前からは本郷通りを進み、勢いをつけて緩やかな登り坂を上っていきます。この周辺には、道路に面した蛇口がいくつかあります。汲んでもいいのかなと思いつつ、光厳寺(こうごんじ)へ向かいます。しかし、ここから一気に急な登り坂が現われたのでした。どうやら光厳寺は小高い山の上にある模様です。山を登る前に乳酸が溜まってはたまらんということで、素直に自転車を降り、ゆっくり登っていきます。
気温はどんどん上がっていき、すでに汗だくでした。光厳寺に着くころにはすでにTシャツもびしょびしょ。低山登りには暑すぎる空模様となっていくのでした。
この記事に登場する山
プロフィール
斉藤正史(さいとうまさふみ)
1973年、山形県新庄市出身。ロングトレイルハイカー。
2005年に、アパラチアン・トレイル(AT)を踏破。2012年にパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)を踏破。2013年にコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)踏破し、ロングトレイルの「トリプルクラウン」を達成した。日本国内でロングトレイル文化の普及に努め、地元山形県にロングトレイルを整備するための活動も行なっている。
自転車 × 登山
自転車と登山を組み合わせると、クルマや公共交通機関とはひと味違った風景が見えてきます。自転車のサドルにまたがって、あの山めざしてペダルを踏めば、新しい楽しみに出合えます。
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