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軽さと快適さを両立させたテントを、伝説の池の畔で試す ビッグアグネス/タイガーウォールUL2 EX

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2018年07月31日

今月のPICK UP Big Agnes(ビッグアグネス)/タイガーウォールUL2 EX

価格:58,000円(税別)
使用人数:2人
収納サイズ:13×37cm(ポールは別収納:45cm)
重量:1,190g

メーカーサイトへ >>

 

設営前に。重量など、パーツや仕様をチェック

いまや1人用ならば重量1㎏を切るものも登場するようになった山岳用テント。もちろん軽いものは使用生地が薄く、ポールも細いものになりがちで、耐久性がそれなりになるのは否めない。しかし、その点を踏まえて注意しながら使用すれば、充分に日本の山でも活躍する。

今回ピックアップしたテントは、アメリカのメーカー、ビッグアグネスの「タイガーウォールUL2 EX」だ。「UL」とはすなわち「ウルトラライト」。日本のカタログによれば、2人用のサイズで最大重量が1.19kgである。一方、アメリカ本国のサイトでは、Packed Weight:1.13kg、 Trail Weight:992g、Fast Fly Weight:765gとなっている。どうやら、Packed Weight とはインナーテント、フライシート、ポールの主要3パーツ以外に、購入時に付属しているペグやガイライン(張り綱)などの「すべて」を含めた重量で、Trail Weightとは「付属品の一切を抜いた」重量だ。そしてFast Fly Weightは、インナーテントも使わず、その代わりに別売りのフットプリントを加えて「フロアと屋根のみ」の重量である。少々複雑でわかりにくいので、僕が自分で計ってみたところ、ペグ抜きの実測重量は約1.10kg。付属のペグは0.09kgだったが、これは自分で別のものを用意し、それと組み合わせて使うこともできる類のものなので、重量を測る際は除外しておいてよいだろう。

繰り返すが、これは2人用。現状では1人用は発売されていないが、もしも開発されれば1㎏を切ると思われる。いわゆるテントとポールと組み合わせるだけで立体化する「自立型」で、かつインナーテントの上に雨除けのフライシートをかぶせることで前室もできる「ダブルウォール」のテントでは、相当な軽量性だ。

以下は主なパーツである。

左がインナーテント(テント本体)とフライシートで、ガイラインがあらかじめ各部に取り付けられている。中央はポールで、計4本がハブで連結されているタイプ。右のペグは8本。軽量なテントに付属しているペグには極細のピンペグが多いのだが、このテントのものは一般的な太さのジェラルミン製である。

これらを付属のスタッフバッグに収納すると、以下のような状態になる。

折り畳んだポールの長さは45㎝で、ポール以外のものをスタッフバッグに入れたときの収納サイズは13×37㎝。このスタッフバッグには小さなメッシュポケットがついており、そこにポールを差し込み、さらにストラップで固定できる。個人的にはこのように一体化させた状態ではバックパック内にパッキングしにくく、メッシュポケットやストラップは重量増に直結するとも思われる無用なディテールとも思うが、バラバラにならないほうがうれしい方もいるだろう。

このスタッフバッグのストラップは縫い付けられており、邪魔な場合は自分で切り取るしかない。だが、考えようによっては、このような形に圧縮して収納するのにも利用できる。

それにしても、ここで思うのは、タイガーウォールUL2 EXは「可能な限りの超軽量性に挑戦」といった方向性で考えられたテントではない、ということだ。なぜならば超軽量性を目指すタイプであれば、スタッフバッグにこのようなストラップをわざわざつけることはないだろうし、ペグも極細のものを組み合わせるはずだからである。おそらく無理に軽くするよりは、快適性と使いやすさを重視しようという開発方針に違いない。

 

池の畔のキャンプ場へ。設営して感じた、「快適性」に配慮した構造

今回のテストの場は、東北地方を代表する山脈、朝日連峰。怪魚タキタロウの伝説で知られる大鳥池のほとりには、東北地方では数少ない山中のキャンプ指定地があり、そのさらに上には日本200名山の以東岳もそびえている。

泡滝ダムの登山口を出発し、大鳥池から流れ出した清流が作り出す水風景と、東北らしいブナ林を眺めながら標高を稼いでいく。

歩行3時間ほどで、大鳥池。看板の後ろには水面が光っている。

すぐ近くにはタキタロウ小屋(大鳥小屋)もあり、この日も多くの登山者が利用していた。

キャンプ指定地に移動し、早速テントを設営。インナーテントとポールを組み合わせると、以下のような状態になる。テントの出入り口はこの写真の正面、テントの長辺側だ。

ビッグアグネスには「フライクリーク」という超軽量テントの大人気シリーズがある。じつはこのタイガーウォールは、フライクリークと非常に似た構造なのだが、最大の違いは、フライクリークの出入り口がテントの短辺にあるのに対し、タイガーウォールは長辺にあるということ。そのために入口のパネルも大きく、フライクリーク以上に出入りしやすい構造なのだ。

そしてこちらはテントのサイド、短辺の方向から見た様子だ。タイガーウォールは上から見ると「Y」字型にポールが取り付けられているため、右から見た場合と、左から見た場合では、形状が異なる。

「Y」の形をしたポールのうち、左はポールが左右2本に分かれているほうで、テントの幅は132㎝。右はポールが中央に1本あるほうで、テントの幅は107㎝。このテントを2人で使う場合は、幅の広い132㎝のほうに頭を並べて使うことになる。そして、出入り口は両サイドに2つ付けられている。

テントに使われているコード類は、ガイライン含め、すべて極細だ。すぐに切れてしまいそうだが、ただ結び付けてあるだけなので交換は容易。好みによってもっと太いものに変更していいだろう。

おもしろいのはテントのボトム部分は2カ所からコードで引っ張る形になっていること。このコードが結びつけられた2カ所の間にはバー状の張りのある素材が用いられており、テントの内部空間を広げる役割を果たしている。

このタイガーウォールはインナーテントをフックでポールにかける「吊り下げ式」。そのフックは軽量で小さいが、指をかけると簡単に取り外しができる最新型だ。また、テントの天井部分には短めのポールがあり、これも内部空間を広げる役割を担っている。

ポールの先端はボール型で、これを樹脂製パーツのくぼみにはめて固定する。

タイガーウォールの出入り口のパネルは、メッシュ地も併用した2重構造。出入り口が長辺の2か所にあるため、メッシュにしておくと風が気持ちよく抜ける。

その入り口にはファスナーが2本使われ、閉めると角の部分に引き手が集まる。このために開閉時にはファスナーの引き手がどこにあるのか一目瞭然だ。

それにしても、耐水圧1200㎜というシルナイロン製の生地の薄さは驚異的である。下の写真はインナーテントのフロア部分。見事に下に生えている草が透けて見える。

今回は地面が柔らかな草だったので、フットプリント(グラウンドシート)的なものはなにも敷かないで使用した。だが、地面が小石や土の場合、すぐに小穴が空いてしまうだろう。なんらかのシートを併用するのが現実的だ。ちなみにタイガーウォールUL2 EXには別売り純正フットプリントがあるが、カタログに重さの記載がなく、僕の手元にも現物がないので重量は不明。いずれにせよ、フロアをあまり傷めないように実践的に使おうとすると、フットプリントやシート分の重量増は否めない。

次にフライシートをかぶせる。オレンジ色で派手めだったインナーテントに比べ、上品な印象である。

フライシートの開閉部は中央にあり、生地をまくり上げたときはサイドにまとめる方式だ。

以下はインナーテントとフライシートの出入り口を開閉した際の、いくつかのパターンである。

フライシートは左右のどちら側もまくり上げられ、インナーテントの出入り口はメッシュにもでき、しかも2か所。このために、風の向きや陽射しの方向によってフライシートの留め方を変え、気温や虫の有無などによって入口をメッシュにするか、完全に閉じるかなどと変化させていけば、細かい部分まで含めると、軽く数十のパターンが作れそうだ。

ところで、ここまで設営して気付いたのは、付属ペグが8本しかない、ということだ。タイガーウォールにはテントのフロアで5カ所、前室部分に2カ所、そしてフライシートに付けてあるガイラインが3本と、計10本のペグが必要なのである。どこに打つという前提で、ペグを8本のみにしたのだろう?

フロアとガイラインでちょうど8本にはなるが、前室を固定しないで使うなどということはあり得ない。だから、8本しかなければフロアと前室の計7カ所を優先的に使い、ガイラインの3本はペグで固定しない、もしくは1カ所のみ固定することになりそうだ。ともあれ、付属のものだけではペグの本数は足りず、十分な強度を発揮させるのは不可能なのである。

ペグというものは純正の付属品を使う必要はなく、自分であと2本追加して持っていけばいいだけとも言える。しかし日本の登山者は、付属ペグをそのまま使っている人が大半だ。せっかくペグを8本までは用意しているのだから、あと2本も追加で付属させておけば、誰もが最大の強度で張れるようになるはずなのに……と思わざるを得ない。

 

テント内から「居住快適性」をさらに細かくチェック!

テント内に荷物を配置すれば、夕食の時間までのんびり過ごすだけである。この日は陽射しが強く、外にいるだけで汗が噴き出してくるほどだ。だが、虫はほとんどいない。

そこで、インナーテントの出入り口は2面とも大開放して風を取り込み、フライシートも大々的にまくり上げる。これにより「風が通る日陰」を確保でき、なかなか快適な空間を作り上げることができた。

インナーテント出入り口のパネルをしっかりと留めるには、左の写真のように丸めてからストラップとトグルで固定すればいい。これは多くのテントに共通する一般的な方法だ。

しかしタイガーウォールには「door keeper」という文字が書かれた赤いテープ状のパーツがあり、ここにパネルの生地を引っかけることで、右のように簡単に留めることもできる。風が強い場合は生地に風圧がかかって解けてしまうが、ユニークで便利な工夫だ。

先に述べたように、タイガーウォールには天井部分に短いポールが渡されている。そのためにテント内の壁は垂直気味に立ち上がり、天井部分も広くなっている。

兄貴分的な先行モデルであるフライクリークの欠点は天井部分の狭さにあったが、タイガーウォールでは完璧にクリアされているようであった。

内部にはポケットが3カ所あり、出入り口に近い部分の左右に小さめが2つ、天井部分に大きめが1つ。

幅が広い天井部分のほうには、ポケットの角に切れ込みが作られていて、ヘッドフォンなどのコード類を通すことができるようになっている。

フライシートのファスナーはダブルタイプで、上だけを空けてベンチレーターとして機能させることも可能だ。これならば多少雨が降っているときでも換気性が向上する。

このフライシートの出入り口で生地が重なっている部分は、丸いベルクロで固定する。しかしこのベルクロはとても小さく、きちんと合わせないとくっつかないばかりか、簡単に外れてしまう。今回は強い風ではなかったので剥がれることなく固定されていたが、悪天候時は雨が漏れてくるかもしれない。改善の余地はありそうだ。

前室は奥行き、高さともに程よいサイズ感である。ブーツやクッカー、水筒などを充分に置ける面積があり、なにも問題はない。ただし、フライシートはかなり地面に近い部分まで覆うので、閉め切ったときは空気が遮断され、結露が起こりやすい。その反面、悪天候時は風雨をしっかりと遮ってくれるはずだ。

このタイガーウォールは「UL2」と2人用だが、僕は今回ひとりで使用した。そのために当然ながら内部の広さには余裕を感じた。実際に2人で使ったら、かなり窮屈だっただろう。とくに足元は狭い。今回はマットをテントの壁から離して置くことができたが、これが2人ならば、夜になるとテントの壁に起こりえる結露で寝袋が触れてしまい、持ってきた荷物を置く場所もない。

この広さで1㎏ちょっとという重量を考えれば、実際には1人用として使うほうが快適だろう。2人用としてはそれほど占有する面積が広いわけでもなく、これをひとりでテント場に張って使っていても、よほど混雑しているときでもなければ気が引けることはなさそうである。

 

快眠の一夜を過ごし、翌朝は結露の程度もチェック

夜になり、ランタンをつけて外に出る。低照度にしていても、生地の薄さのために外から見てもかなり明るい。

トイレなどで少し遠くへ離れても、テントがどこにあるのか、すぐにわかりそうだ。

少し気になったのは、各部に付けられているリフレクターだ。下はフライシートとインナーテントをつなぐバックル部分で、そのテープ部分が光を受けると反射するリフレクターになっているのだが、ほとんど光っている感じがしない。

これはライトの光の強弱を変えても同様。もう少し効果的なものでなければあまり意味がないように思えた。このリフレクターが機能してくれれば、遠くからライトを当ててテントを探すときに、より有効だろう。

心地よく睡眠できた翌朝。テントの外に出て状況を確認してみると、湿気の多い夏とあってフライシートはかなり結露していた。だが、これは山中で使うどんなテントでも避けられないことで、結露自体はとくに問題というわけではない。

だが、タイガーウォールはインナーテントとフライシートの生地が足元で触れてしまいやすいようだ。就寝時に内側から足で押してしまったのかもしれないが、それにしても上部までべったりとくっついてしまっている。タイガーウォールの足元側のほうは、ガイラインが中央の一カ所しかなく、左右を引っ張ってテンションをかけることができない。また、フロア部分もコードで引っ張ってペグ打ちするだけで、テンションのかけ具合を変えられない。そのために生地が少し緩みがちなのだ。この状態で大雨が降ると、少しずつ浸水してしまうに違いなく、なんらかの対策を考えたほうがよさそうだ。

フライシートの入口のパネルも、結露すると使いにくい。トグルとテープでまとめる部分がかなり地面に近い位置のため、それよりも上の部分が垂れ下がりやすく、固定するためにはしっかりと巻いてやる必要がある。そのとき、結露でフライシートが濡れていると、伝って流れ落ちる水分で手や腕がぐっしょりと濡れてしまうのだ。

先が平らになっているトグル自体は使いやすいので、固定する位置が少し上であれば、もっと使いやすそうである。

トグルといえば、下の写真の中央のように、フライシートの裏側にも小さなトグルがついていた。説明書にも本国サイトにも使用方法が書かれていないために、謎のパーツのままで帰宅したのだが……。

これはフライシートのファスナーの引き手を掛け、簡易的にフライを固定するためのパーツだった。フライを完全に開かなくても、適度に換気できるようにする工夫らしい。後ほど判明したことなので現地で試してみることができなかったが、有用なのだろうか?

その後、僕は周囲の山を歩き、正午近くにテントへ戻った。あれほど結露で濡れていたテントはすっかり乾燥し、むしろ内部はサウナのようになっていた。

だが全面的に開放して換気をすれば、すぐにクールダウン。僕は少しの間、テント内で休み、それから撤収作業を開始した……。

 

まとめ。タイガーウォールUL2 EXは軽さと快適さを両立させたテント

タイガーウォールUL2 EXは、超軽量性を実現したテントであることは間違いない。だが一方で快適性も充分に考慮した設計だ。

ただ超軽量なだけを目指すならば、出入り口は2カ所ではなく、1カ所だけにすればいい。それほど使わなさそうなトグルをフライシート裏側につける必要もなく、天井部分の空間を広げようと思わなければ、天井部分のポールも省略できる。しかし、あえてそれらをつけることで、快適に使えるように考えているのだろう。一方で、使用生地はとにかく薄い。このタイプのテントは耐久性と引き換えの超軽量性であるが、タイガーウォールはそこへさらに快適性というベクトルも加えて設計されているのが興味深い。

一般的にテント泊山行のときは、歩行時間よりもテント内で過ごす時間のほうが長く、テントの快適さが山行自体の楽しさを大きく左右すると、僕は考えている。もちろん軽量であればあるだけ、歩行中の体力減少を抑えられる。そういう意味では、タイガーウォールUL2 EXは快適性と軽量性を高いレベルで両立させており、とても好感が持てるテントだ。これからさらにさまざまな条件下でさらに試してみたいと思っている。

 

大鳥池

朝日連峰の以東岳の北西の山中にある湖。怪魚タキタロウが住んでいるという伝説で有名。
以東岳の大鳥登山口から約3時間で大鳥池に到着する。さらに以東岳までは4時間弱の行程。

関連する登山記録はこちら

テント用品 日本の山
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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