いの字山で「いの字」を発見! 北アルプスから富士山と諏訪湖まで見える眺望を楽しむ
読者レポーターより登山レポをお届けします。今井良子さんは、長野県・いの字山(いのじやま、1280m)へ。気持ちのよい秋の一日、アルプスから富士山まで見渡せるみごとな眺望を楽しみました。
文・写真=今井良子
MAP&DATA
明瞭でわかりやすい登山道を登っていく
気持ちよく晴れた秋空の下、長野県いの字山を歩いてきたので紹介します。
この日はあまり時間がなかったのですが、所用の帰り道にたまたま通りかかり、思い立って登ることにしました。登山口には「ここから35分」と記されています。
背丈以上あるふわふわのススキの中を歩いていくと、看板が見えます。いくつも案内板があり、道に迷うことはありません。
今年はクマのニュースが絶えないので、この辺りも油断はできません。クマ鈴を鳴らしながら、クマがいないか遠くを確認しながら、ゆっくりと登っていきます。クマ鈴と一緒にサクサクという落ち葉の音が心地よく響きました。
小さな沢と倒木を越えたあたりでしょうか。シカの鳴き声が聞こえました。姿は見えません。ケモノの気配に一抹の不安を覚え、とりあえずクマ鈴を鳴らしました。シカには効果ないと思いますが、気やすめに。
名前の由来になった「いの字」を過ぎると、つづら折りの登りに
しばらくしてヤブがパッと開けます。ここが、いの字山の名前の由来になった場所。ガラガラとした石が2本の筋状になっている、幅10m長さ100mに及ぶこの安山岩崩落地が「い」の字に見えることから名付けられたそうです。
登山道は「い」の真ん中を行きます。ここからは斜度がきつくなり、つづら折りを登っていくと息が上がります。ふーっと息をつくと、カラマツに日が当たって黄葉がきれいに見えました。日に照らされたカラマツの葉がキラキラと舞い落ちてきました。深呼吸しながら登ります。
富士山、北アルプスなどが望める頂上へ
登りきって左へ曲がるとすぐに山頂。山頂からは、電線があってちょっと残念な感じではありますが、ばっちり富士山が見えました!
なかなかの展望で、北アルプス、南アルプス、中央アルプス、富士山と諏訪湖までがよく見えます。狼煙リレーが行なわれる場所なので展望よく、また、火事にならないよう整備されているのかもしれません。
狼煙リレーは長野県内のほかの地域や山梨でも時々行なわれています。狼煙リレーと特急あずさ(文明の利器)とどちらが早く伝達できるかを競うイベントなどもあり、ニュースになっていました。結果は狼煙リレーの勝ち!
山友と合流、水源地へ
さて、ここで山友さんをひとりで待つことになりました。すごく健脚な山友さんなので、私は先に出発して途中で合流しようという作戦です。黙って静かにしていると危険なので、クマ除けに名前を叫んでみたところ、下のほうから「はーーい」と返事が返ってきました。無事に合流し、山頂でゆっくりしました。
水源地があるのでそこに寄ってみます。帰路は2人で、登山道の看板に従って分岐を曲がります。
落ち葉に覆われていますが、しっかりと湧き出ていました。ただ私の記憶だと、石碑のすぐ下から湧き出ていたような気がしたのですが、今日は少しズレたところから出ていました。枯れてしまったのか、記憶違いなのか……?
そんなことを考えながら石碑のコケをはらってみたところ「明治」「5月」などが読みとれ、中央にはおそらく「水神」と書かれているのではないかと想像します。
この水は田川(たがわ)、そして奈良井川(ならいがわ)となり、最終的に日本一長い信濃川(しなのがわ)になります。つまり日本海とつながる大河の始まり。最初の一滴はここだけではありませんが、たくさんある中のひとつですね。いったい日本海まで何日なのか、何十日なのか……、どれくらいかかるのでしょう。 そんな話をしながら下ってゆくと、夏の名残を見つけました。
「もうあなたの主様はいないかもしれないけれど」と、山友さんがつぶやきました。私は心の中で「なるほど」とつぶやきました。私だけではそういうコメントは出てきません。ソロもいいですが、山友さんと行くと、いろんな刺激をもらえます。
いの字山は通常であれば登って下りて約1時間のところ、気づけば2時間20分。カラッとした気持ちのいい秋の日に、山友さんと一緒に山のパワーをもらえた、そんな楽しい山行でした。
(山行日程=2025年11月15日)
プロフィール
今井良子(読者レポーター)
長野県在住。山の中で育ったせいか森が好き。そして歩くことが好き。ケモノは怖いのでいつもドキドキしながら里山や街道歩きを楽しんでいる。
山と溪谷オンライン読者レポーター
全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。
山と溪谷オンライン読者レポート
山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。
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