金色に輝く尾瀬を歩こう。色とりどり煌めく秋の尾瀬、さまざまな秋を観察するために――

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尾瀬が最も色鮮やかになる時期が秋。厳しい冬を迎える前に、一瞬煌めく秋の尾瀬を深く楽しむために、尾瀬の自然環境の保全・調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が、たっぷりと魅力を紹介する。

 

金色に輝く草紅葉から始まる尾瀬の秋

春のミズバショウ、夏のニッコウキスゲ、秋の紅葉が尾瀬の3大ピークと言われ、秋が終わると4月まで長い長い冬が始まります。まもなく訪れる冬を前に、色とりどり煌めく美しい尾瀬を楽しんでみませんか? 今回は、そんな秋に見られる尾瀬の絶景を紹介します。

紅葉と聞くと、多くの方は山肌が真っ赤に燃え上がる姿をイメージされるのではないでしょうか。山岳地域にとっての紅葉は、そうした木々の紅葉が一般的ですが、尾瀬で紅葉と言えば、湿原が金色に染まる「草紅葉(くさもみじ)」が見どころです。例年9月中旬~下旬が見頃で、その後、10月中旬にかけて徐々に木々の紅葉に移っていきます。

福島県、群馬県、新潟県にまたがる尾瀬ヶ原は赤色の紅葉がよく映える

 

尾瀬国立公園内を歩くコースはいくつかありますが、当然どこを歩くかで出会う景色も変わってきます。尾瀬ヶ原をはじめ、多くのコースはナナカマドやヤマウルシ、カエデ類の赤がよく映えます。一方の尾瀬沼周辺は、針葉樹林帯が多く、ダケカンバやカラマツの黄色が主になります。

尾瀬ヶ原と尾瀬沼を縦走してみると、紅葉の色合いの違いから、生えている植物の違いをよく感じられると思います。どちらの雰囲気がご自身に合うか、ぜひ歩いて感じてみてください。

針葉樹林帯に位置する尾瀬沼は黄色系の紅葉が多い

 

会津駒ヶ岳は一度にいろいろな紅葉を楽しめる

また、 尾瀬はいたる所に湿原が点在しているため、どのコースを歩いても草紅葉を楽しむことができます。標高に合わせて変化する紅葉の見頃や色合いも楽しみの一つです。

その中でも会津駒ヶ岳は、尾瀬の紅葉を一挙に楽しめるオススメの場所の1つです。尾瀬国立公園に位置し、日本百名山の一つでもある会津駒ヶ岳の魅力の1つが、馬の背のような稜線に点在する山頂湿原です。紅葉の時期は空気も澄んでいますので、遠くの山々を見渡しながら気持ちの良い稜線歩きが楽しめます。

また、登山口から山頂にかけての標高による変化も見どころの一つです。麓から中腹まではブナやカエデ類が占める広葉樹林帯ですが、山頂に近づくにつれオオシラビソの針葉樹林帯へと変化していきます。一度に色々な色合いが楽しめるのが、会津駒ヶ岳の紅葉の大きな魅力です。

会津駒ヶ岳から中門岳へ続くの稜線の草紅葉

 

10月中下旬、尾瀬ももうすぐ閉山という頃に尾瀬へと繫がる周辺地域の紅葉が見頃を迎えます。

福島県側の玄関口となる檜枝岐村には、尾瀬に行く際に通るブナの原生林「ブナ平」という場所があり、この場所は紅葉の季節になると素晴らしい景色を見せてくれます。道路がブナ平の中を通っていくので、ドライブ+写真を目的にお越しになる方の姿もよく見かけます。

このポイントだけでも楽しい場所ですが、御池から沼山峠までの乗合バスに乗ることでブナ平を一望することもできます。

檜枝岐村に位置するブナの原生林「ブナ平」の素晴らしい景観

 

天気が良い日の朝に降りる霜に注意

ここまで紅葉の魅力を紹介して来ましたが、自然を楽しむ上では注意が必要なこともあります。

9月になると、朝夕の冷え込みが一層厳しくなりますが、特に晴れの日の朝は放射冷却で冷え込みます。そんな朝には気を付けてほしいことがあります。それは、冷え込んだ日の朝方は霜で木道など登山道が滑りやすくなることです。日が昇るとすぐに融けてしまいますが、日陰は遅くまで残るので注意が必要です。

大霜となった大江湿原。霜の白と紅葉のコントラストが神秘的な景観を作る

 

ただし、霜が降りた際には神秘的な景観を作り出します。こうした瞬間を楽しみたい方は、ゆっくりと山小屋やテントに泊まることをオススメします。

朝方に到着して歩き始めたのでは湿原の霜は消えている可能性がありますが、宿泊するとすぐ目の前に尾瀬の大自然が広がっていますので、こうした瞬間も見逃すことなく楽しめることでしょう。さらにこの季節は空気が澄んでいるため、夜は満天の星空や天の川なども期待できます。

 

紅葉の色・種類――、色々な秋を観察しよう

春から夏は、花に注目しがちですが、秋は葉が一番の主役になる時期ではないかと思います。赤や黄色など色とりどりに染まった葉は、多くの人の目を楽しませてくれます。代表的な秋の色を紹介するので、ぜひお気に入りの色を見付けてみてください。

左上から時計回りに、ヤマウルシ、キンコウカ、カラマツ、ヒツジグサの紅葉

 

また、尾瀬と言えば木道ですが、意外と知られていないのが木道の材料として使われている「カラマツ」の紅葉です。尾瀬の木道には、湿気に強いカラマツが尾瀬外から集められ使われていますが、10月中旬になると写真のように黄葉し、ポロポロと葉を落とす落葉針葉樹になります。地面に敷き詰められたカラマツの黄色い絨毯はつい写真を撮りたくなる美しさです。

左上から時計回りに、タマゴタケ、エゾリンドウ、ナナカマドの実、ニホンヤマネ

 

そして、秋の楽しみをさらに増やしてくれるのが、実やキノコ、動物など何気ない一つ一つの観察です。夏に見た花はどうなっているだろう、あのキノコはなんだろう、色々な発見や気付きがあることでしょう。

動物たちも冬を越す準備で活動が活発になっていて、普段あまり出会うことのない動物にも出会う機会が多い気がします。

ぜひ、いろいろな発見・出会いを楽しんでもらいたいと思います。

プロフィール

公益財団法人 尾瀬保護財団

群馬県前橋市に事務所を置く公益財団法人。環境保全や調査研究に取り組むとともに、尾瀬ボランティアなどと連携した入山者への啓発、利用者への自然解説など、尾瀬の保護と適正な利用を図るための活動を続けています。

⇒公益財団法人尾瀬保護財団

はるかなる尾瀬――、尾瀬の風景・春夏秋冬

本州最大の湿原が広がり、童謡にも歌われる尾瀬。そこにある自然は、どの季節でも魅力が詰まっている。そんな尾瀬の表情を、現地で環境保全や調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が発信する

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