新潟・魚沼から楽しむ尾瀬ハイキング。船でアクセスして、“尾瀬の香り”を楽しもう
尾瀬の魅力をもっと深く知るために、尾瀬の自然環境の保全・調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が、尾瀬の贅沢な過ごし方を紹介。今回は新潟県魚沼から、船に乗ってアクセスするルートの魅力を紹介する。
「はるかな尾瀬」の歌で知られる、一度は行ってみたい! と皆さん声にする尾瀬。そんな人に、主に北陸・関西方面からのツアーが多い「魚沼から行く尾瀬ルート」をご紹介したいと思います。
魚沼とは、新潟県魚沼市。出発地点となるのは奥只見ダム乗船場からで、尾瀬への旅は船の旅から始まります。水力発電としては最大規模の奥只見ダムの壮大な景色を約40分かけて楽しみます。湖上からは、荒沢岳、燧ヶ岳を望む事が出来ます。
その後、尾瀬の入山口でもある沼山峠までは約1時間、天然ブナや針葉樹林帯の中をバスで移動、道中、平ヶ岳、至仏山、燧ヶ岳を望みながら、山好きな人にはワクワクゾーンです。トータル約2時間の移動で沼山峠へ到着です。
ここからは静かなしっとりとした尾瀬の始まり。既に標高約1700mの沼山峠入山口は、オオシラビソなどの針葉樹や野鳥が出迎えてくれます。約1時間半くらいかけて、尾瀬沼へと抜けて行きます。
沼山峠の主役、針葉樹オオシラビソ
沼山峠に多く植生する針葉樹のオオシラビソは、別名「青森トドマツ」ともいわれ、標高1600m以上で見る事ができる常緑針葉樹です。沼山峠以外の尾瀬エリアでも見ることは出来ますが、初めて尾瀬に訪れる人には、沼山峠で「これぞオオシラビソ!」というくらい、たくさんの木々に囲まれることになるでしょう。
常緑針葉樹なので、少し薄暗い森の中を歩いていると、ふわっと、いい香りがしてきます。そう、沼山峠は天然の香りのおもてなしもあるのです。この香りの正体こそ、オオシラビソなのです。
スーッとしたαピネンなどの天然芳香成分は、呼吸によって摂りこむことでリラックスやリフレッシュされることをご存知のでしょうか? バス酔いなどで気分が優れない時でも、沼山峠をゆっくりと歩く事で自然と改善されたりするケースが多々あります。凄いですね、オオシラビソの香りって・・・。
峠を抜けて尾瀬沼と大江湿原へ
森の中を抜けると、いよいよ大江湿原がひらけてきます。夏の季節は、ニッコウキスゲやノアザミ、キンコウカなどのお花達が出迎えてくれます。近年は少しお花達も早目に咲いている気がしますが、ほかにもミヤマワレモコウやサワギキョウなども、たくさん目にすることになるでしょう。
だんだんと尾瀬沼が近づいて、沼湖畔にたどり着く頃にはランチタイムになります。尾瀬沼東岸からは展望が素晴らしく、とくに燧ヶ岳が一望できる絶好のポイントです。
釜ッ堀田代にはコバイケイソウの大群落があり、大当たりの年になるとフローラルな香りに包まれます。コバイケイソウは、直接花の香りを嗅いでもさほどいい香りとは感じないものの、群生してる場所に行くと、とってもフローラルでいい香りがします。植物の香り分野では良くある事なんです不思議ですね。
尾瀬沼周辺の散策を楽しんだら、沼山峠へと戻るのが一般的なコースとなります。
日帰りできるけれど、ゆっくと堪能してほしい
紹介した「魚沼から楽しむ尾瀬」は、日帰りが出来るルートではありますが、時間的には結構タイトとなります。せっかく遠くから訪れるなら、山小屋へ1泊すると、もっと幻想的な尾瀬を体験できたり、燧ヶ岳、会津駒ヶ岳登山、尾瀬ヶ原への縦走もできたりするので、ゆっくり楽しむ尾瀬をおすすめしたいです。
御池口からブナ林の裏燧林道を辿り、早朝の上田代(うわたしろ)へ向かうコースも時間が無い方はおすすめです。幻想的な景色が待っています。
なお、魚沼から行く尾瀬ルートの船とバスの交通手段は、事前予約が必要になります。魚沼市観光協会へお問い合わせ下さい。
プロフィール
山田明美
尾瀬認定ガイド新潟支部所属。「魚沼から行く尾瀬」ルートを主に尾瀬ガイド活動をしている。
経験をもとに若手ガイド養成にも尽力、各地ホテルやアパレルなどへのアロマ空間デザイナーとしても兼業し、尾瀬では「香り」についても五感の一部として案内している。
公益財団法人 尾瀬保護財団
群馬県前橋市に事務所を置く公益財団法人。環境保全や調査研究に取り組むとともに、尾瀬ボランティアなどと連携した入山者への啓発、利用者への自然解説など、尾瀬の保護と適正な利用を図るための活動を続けています。
はるかなる尾瀬――、尾瀬の風景・春夏秋冬
本州最大の湿原が広がり、童謡にも歌われる尾瀬。そこにある自然は、どの季節でも魅力が詰まっている。そんな尾瀬の表情を、現地で環境保全や調査研究に取り組んでいる尾瀬保護財団が発信する