国内随一のブナの原生林の紅葉と、山頂湿原の草紅葉。浅草岳で赤と黄色と青空の共演を楽しむ

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アルプスなどの高山の紅葉が落ち着く10月初旬~中旬、樹木の色づきは標高を下げて、2000m以下の山肌を染めるようになる。標高2000m以下の随一の紅葉の地として、新潟県・浅草岳の紅葉登山を紹介する。

 

新潟県と福島県の県境、豪雪地帯で知られる只見周辺はブナの美しい山域として知られる。浅草岳から会津駒ヶ岳方面へと連なる山々は2006年に「奥会津森林生態系保護地域」に設定されていて、世界遺産の白神山地に勝るとも劣らないほどのブナの原生林が広がっている。

その山々の西端に位置するのが浅草岳だ。ブナの原生林が山肌には残り、稜線上には湿原が点在するため、秋になると鮮やかな草紅葉が楽しめる山としても知られている。

浅草岳山頂から北岳(左)と前岳(右)を展望(写真=小瀬村 茂)


浅草岳には東西南北、さまざまな場所から登ることができる。山容は新潟県側がなだらかな草原状に、福島県側は険しい絶壁という山容となっているため、登る場所によってまったく印象が変わる山でもある。

今回は新潟側から登る最短でなだらかなコースを使って周回し、紅葉を満喫したレポートをお届けしよう。

 

美しい展望と鮮やかな草紅葉とブナの紅葉を楽しめる浅草岳

2017年10月8日、この日の登山は、只見線大白川駅から破間川沿いに県道385号線を最奥まで進んだネズモチ平からです。ネズモチ平には100台ほどの駐車ができそうな大きな駐車場とトイレが備わっています。

田子倉湖側の六十里越から見ると急峻に見える浅草岳ですが、ここから見ると山頂は目と鼻の先のように間近に見えます。実際に沢沿いを直登するコースを選べば2時間ほどで登れます。

ネズモチ平から浅草岳へ登りはふたつのルートがありますが、今回は往路は浅草岳へ直登する最短コース、帰路は嘉平与ポッチを越えて尾根上を桜ソネ登山口へと下り、そして林道を歩いてネズモチ平まで戻る周回ルートをとりました。

ネズモチ平から浅草岳山頂を周回するコース


この日も、日の出に間に合うよう早朝に登頂したものの、山頂は濃いガスで視界はほとんどなく、すでに太陽は昇り始めているころですが、足もと付近以外はなにも見えません。山頂からの展望はあきらめかけていた時、ガスの流れが急にはやくなり、空が明るくなってきました。

頭上の青空が次第に広がり始め、赤と黄色で彩られた紅葉真っ盛りの山肌が現れてきます。そして、雲間から守門岳や越後駒ヶ岳、八海山など越後の山々も見えて、朝の光と流れる雲の競演にしばし見とれていました。

秋晴れの山頂湿原。守門岳後方に虹色の彩光が見える(写真=小瀬村 茂)


2017年は紅葉は葉の傷みがあまりなかったので、鮮やかで見ごたえがありました。山頂部の紅葉はこのときがちょうど最盛期でしたが、もう1週間くらいまでは見ごろの時期が続きそうです。

 

 

プロフィール

小瀬村 茂

山岳写真工房代表。日立製作所にてコンピュータ関連機器の開発評価、設計業務に従事する傍ら、 南アルプス、秩父、丹沢にて富士山をメインに山岳写真を撮影、出版社のカタログ、ポスターなどに写真を提供。現在は退職、神奈川県(丹沢大山)自然公園指導員。
 ⇒山岳写真工房

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