ダイヤモンド富士にシモバシラの氷華――、冬至からクリスマス時期は高尾山がアツい!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

12月下旬、街はクリスマスやお正月を迎えて華やいでいるものの、1年で最も昼間の時間が短く生活もあわただしい時期、山に登る気分ではない時期かもしれない。しかし、季節折々の見どころに恵まれる都民の憩いの場である高尾山は、このときこそ見るべき絶景を用意して待っている。

 

ダイヤモンド富士をご存知だろうか? 沈む(もしくは昇る)太陽がちょうど富士山の山頂と重なる現象だ。富士山の山頂から北西に位置する丹沢の山々などは、11月~12月に、富士山頂に日が沈むダイヤモンド富士が多く見られる。そして太陽が最も南側に沈む冬至のころは、ちょうど高尾山頂で見られる。

ほかの山で見られるダイヤモンド富士は1日だけの場合が多いが、高尾山は日没の地点が移動してきて、また戻るためクリスマスを含む冬至の前後5日間ほどにわたって見られる。

高尾山のダイヤモンド富士は16時15分ごろ。太陽が隠れて30分ほどで真っ暗になってしまうので、下山に時間がかかる山では、その日の帰宅が困難だったりするが、高尾山では足もとが見える時間にケーブルカー高尾山駅に着ける。この時期はケーブルカーの運行が延長され、下山の不安もない。しかも、高尾山駅に着くころは暮れていく街の灯りが美しく、さらに夜景も眺められる。

そしてこの時期のでは「シモバシラの氷華」も見られる。ここでいうシモバシラは、いわゆる霜柱とまぎらわしいが、シソ科の多年草の名前だ。冬、枯れている茎が毛細管現象で地中の水分を吸い上げ、にじみ出て凍結する現象が、あたかも花のように見えることから氷花と名づけられている。シモバシラは高尾山特産というわけではないが、どこにでもあるわけではなく、高尾山に近い奥多摩では見られない(ただし、奥多摩では同じシソ科のカメバヒキオコシなどの氷花を見られる)。

そんな高尾山名物を、連日、一挙に楽しんだレポートを紹介する。

 

12月23日 ダイヤモンドは見られなかったものの・・・

2017年12月23日は、恒例のダイヤモンド富士とシモバシラの氷花狙いで高尾山に行ってきました。富士山はきれいに見えていたのですが、夕方、背後に雲がかかり、ダイヤモンドを見ることはできませんでした。しかし、雲が綾のような模様になり、幻想的な風景で、これはこれで印象的でした。日没後の、西の空の夕映えも美しかったです。

雲と夕日が幻想的だった日没直前の富士山(写真=石丸哲也)


もうひとつの目的である氷花は、朝はそこそこ冷え込んだので期待していたものの、やや融けかかった状態でした。数も少なく、景信山、城山~一丁平でかろうじて見られましたが、もみじ台の北面はまったく見られませんでした。

と書いてくると、残念な感じに思われそうです。しかし、山は日によって異なる姿を見せてくれるもの。当日も、この日ならではの魅力的な表情を見られて、やはり行ってよかったと感じました。

左上から時計回りに、高尾山山頂から夕映えの西の空、景信山の氷花、小仏バス停付近の落ち葉と霜、景信山からの富士山(写真=石丸哲也)


今回のコースは小仏バス停からスタート。混雑を避けてヤゴ沢を登り、景信山へ。奥高尾縦走路を高尾山へ向かい、小仏城山で昼食をとり、高尾山には14時30分ごろに着きました。すでに場所取りの三脚がずらりと並んでいたので、引き返し、混んでいたもみじ台も避けて、富士見台で眺めました。

帰りがけに、もみじ台の細田屋さんでうかがったところ、やはり特に人出が多かったそうです。翌日の予報が曇りのち雨で、この日に集中したのかもしれません。

ちなみにダイヤモンド富士は16時過ぎで、場所の確保のために早着すると時間の余裕があります。クリスマスの前でもあり、私たちはチョコレートフォンデュを作って待ちました。忘年山行の時期でもあり、鍋を囲む登山者も多かったです。

この日の下山は、すっかり暗くなった稲荷山尾根を選びました。樹林の尾根道ですが、1号路よりずっと人が少なく静かで、コース中ほどの稲荷山から首都圏の夜景を見渡せる魅力があります。なお、夜道を歩く場合はもちろん、明るいうちに下山する計画の場合も、ヘッドライトは必ず用意しましょう。


小仏~景信山~小仏城山~高尾山~稲荷山尾根 ⇒詳しい地図はこちら

 

12月26日 ダイヤモンド富士、くっきりと!

12月23日の高尾山の前にも(12月21日)、ひよどり山に登り、計2回のダイヤモンド富士観望ハイキングに出かけました。ともに快晴だったものの、日没時は富士山山頂が雲に隠れて見ることが叶いませんでした。それぞれ、美しい夕暮れを楽しめましたが、やはり心残りなので、再々チャレンジをしてきました。

くっきりと晴れた富士山に沈む夕日。左は丹沢の大室山(写真=石丸哲也)


高尾山では冬至の日に沈む夕日と富士山の位置がピッタリ一致。その前後は、日没の地点が徐々に富士山の右(西)側に移動していきます。しかし、太陽は左上から右下寄りへ、斜めに沈んでいき、26日はまだ、太陽と富士山山頂が接するあたりで位置が一致します。

前日の25日に仕事が一段落して映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」を観に行こうと、新宿の映画館の前売り情報をチェックすると、午前8時からの第1回に超良席が空いていました。山の用意をして出かけ、鑑賞後、気象情報をチェックし、京王線に乗って高尾山へ向かいます。

今回はダイヤモンド富士観望に目的を絞り、16時前に高尾山山頂に着けばよいので、昼ごろに新宿を出ても間に合います。21、23日に続いて3回目の計画で「スターウォーズ」なみの3部作山行になったので、鑑賞後、今回の山行を「ダイヤモンド富士 エピソード3」と考えてしまいました。

高尾山口駅からのコースは、年の瀬を迎える準備中の薬王院を見てみたく、琵琶滝道から1号路経由にしました。23日の高尾山山頂は観望する人たちで足の踏み場もなかったほどですが、そんな景色が嘘のように空いていました。思いがけず友人のグループがすき焼きパーティをしていて、お相伴にあずかりながら日没を待ちます。

山頂に少しあった雲も日没時には消え、3部作完結編にふさわしい(笑)、きれいなダイヤモンド富士を眺められました。日没後に輝く山ぎわ、丹沢山地の上に浮かぶ夕焼けの雲などを撮った後、登ってきた1号路を下山しました。

霞台から横浜方面の夜景(写真=石丸哲也)

高尾山駅展望台から都心方面の夜景(写真=石丸哲也)

金比羅台から都心~埼玉寄りの眺め(写真=石丸哲也)


1号路は展望のポイントがほかのコースより多いので、暮れてゆく首都圏を撮りながら下ろうと考えての選択です。目論見どおり、霞台、高尾山駅展望台、金比羅台と、それぞれ方向、時間が異なる街並みを撮ることができました。


高尾山口~琵琶滝~高尾山~金毘羅台~高尾山口 ⇒詳しい地図はこちら

 

プロフィール

石丸哲也

東京に生まれ育つ。オールラウンドな登山を経て、山岳ライター、登山・ツアーの講師などとして活動している。
山頂に立つことだけを目的とするのでなく、山を旅する感覚で、登るプロセスや自然にふれることを大切にして山を楽しむことを心がけている。
国内では北海道の利尻山から屋久島の宮之浦岳まで全国の山を登り、海外ではペルーアンデス、ヨーロッパアルプス、北米のヨセミテ、メキシコ、カムチャツカなどの山に足あとを残す。

今がいい山、棚からひとつかみ

山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。

編集部おすすめ記事