上野原市街の里山・八重山。富士山展望の名低山を、霧氷も見られる2月に歩く

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低山フォトグラファー渡邉明博さんに、季節に合う低山を紹介いただく連載。1年で最も寒いこの季節、山梨県上野原市街にある八重山がよい、とのこと。もともと個人所有の山林が寄付され、その方の名前が由来という珍しい山です。低山ながら、タイミング良ければ霧氷も見られる、2月におすすめの低山です。

前日の雨が雪に変わり、美しく雪化粧した登山道

標高531mの八重山は、上野原市街の里山で地元の方々から愛されてきた山です。1929年、地元の水越八重さんが個人所有だった山林を市に寄付されたことから、「八重山」と名付けられました。山名が人名に由来する珍しい山です。周辺一帯は「見る・聞く・嗅ぐ・触る・味わう」という「八重山 五感の森」として整備され、見事な展望が開けているのが特徴です。交通の便も良く、四季を通して楽しめます。

稜線の至る所から望める富士山はやっぱり日本一!

1年の中でも最も寒いのが2月。低山でも厳冬の風景がいたる所で見られます。今回は霧氷に彩られた八重山での厳冬のハイキングをお楽しみください。

寒いですが、その分空気が済んでいるので展望率は高くなります。地図を片手に山岳展望を楽しむのにもよい季節でしょう。

展望台から見る大パノラマ。地図を片手に山座同定を楽しもう

上野原駅からバスに乗り、大堀バス停で下車。降りたすぐ先の信号を右折し車道を進んで行きます。緩やかな上りになると上野原中学校があり、校門前を左に入ると広い駐車場とトイレのある登山口になります。ここで今一度、身支度を整えましょう。

 

新しくなった上野原駅。新井行きのバスに乗る/大堀バス停が入山口。近くにコンビニがある

登山道に入ると枯沢沿いの植林を登って行きます。次第に登りがきつくなると分岐が現れます。どちらを選んでも合流しますが、ここは左の「視覚の森コース」を、左にターンするように進んで行きます。

途中、ベンチの置かれた高台がありますが、やがて三股の分岐に出ます。ここにも案内板とベンチが置かれていますので、今度は真ん中のコースを辿って行きます。再び分岐があり、左は八重山への巻き道、展望台へは直進です。やや急な階段を上がって行けばアルペン的な展望を得られる展望台に着きます。

アルペン的な雰囲気のある八重山展望台。眺めは抜群!

張り出したテラスからは、富士山をはじめ、陣馬山、石老山や道志、丹沢の山々が見渡せます。今コース随一のビュースポットといえるでしょう。低山でありながら、抜群の展望が得られ、見飽きることはありません。まずはここでゆっくりと展望を楽しみます。

 

扇山、百蔵山、権現山が間近に/陣馬山から高尾山へ続く稜線も美しい

展望を満喫したら主稜線を道なりに進むと「八重山の碑」が設置されています。

八重山の歴史が綴られている「八重山の碑」。しっかり読んでおこう

その先でトラバース道と合流し、そのまま長い木の階段を登れば、細長く広い八重山の山頂に到着です。展望台ほど眺めはありませんが、東屋とベンチが置かれています。春ならば桜やツツジで彩られ、ランチにするなら最適な所でしょう。

休憩を終えたら、稜線をたどって能岳に向かいましょう。

八重山山頂。春はサクラやツツジに彩られる

山頂から下ると石仏が置かれている分岐に出ます。左に降れば新井バス停に行けますが、ここは直進し、登り返せば三角点のある能岳(標高543m)の山頂です。以前は木立に囲まれて展望が無かったのですが、今は西側が伐採されていて富士山が良く見えます。

能岳山頂。派手さはないが、富士山が望める

能岳から急な斜面を下ると分岐があります。虎丸山へのコースを左に見送り、ゴルフ場脇の尾根を進みます。やがて大きくUターンするように方向を変え、斜面をトラバースしながら下り、尾根の先端部らしき地点から再び左に折り返し下って行くと、向風集落の車道に飛び出ます。ここから車道歩きで左に進みます。向風にもバス停がありますが、もう少し先の新井バス停まで歩けば、バスの本数も多いので上野原駅にも戻りやすいでしょう。

日陰は霧氷が解けずに残ることも/日当たりの良いところは雪解けも早い

時間が許すのであれば、新井でバスに乗らず、さらに本町3丁目まで歩き、上野原中心街を散策するのも一案です。上野原名物の塩まんじゅう店が多くあるので、お土産に買い求めても良し、路地には雰囲気の良い居酒屋さんもあるので、山行の打ち上げもできるでしょう。

いろいろな楽しみがある冬の八重山ハイキングをぜひ楽しんでください。

八重山へはマイカーでも◎

八重山の登山口には駐車場がある。ここに駐車し、八重山に広がるコースを周回して戻ってくることができるので、マイカーでのアプローチにも適している。

登山口の駐車場にはトイレも完備されている

『高尾山と中央線沿線の山』

高尾山と中央線沿線の山々の徹底コースガイド決定版! 南に丹沢山塊、北に奥多摩というメジャーエリアに挟まれた中央線沿線の山々は、日本百名山のような有名山岳こそ含まれないものの、首都圏の登山者から四季を通じて親しまれている。鉄道駅から直接登ることができる身近さから、根強い人気がある。著者が140日以上に渡って実踏調査したコース案内と、写真集のような美しい山岳写真でまとめられたガイドブック。富士山展望の山も多数収録。

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低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

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