サクラのプロムナードを巡る新緑の生藤山へ

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今年のゴールデンウイークは10連休。どこへ行こうか悩むところです。残雪の北アルプスや八ヶ岳もいいのですが、1日くらいは、低山ハイキングにしてみてはいかがでしょう? 低山フォトグラファーの渡邉明博さんに、4月から5月にかけてのオススメの山を聞いてみました。

ズバリ、私のお薦めは生藤山です。

サクラで知られている生藤山は、東京都の檜原村と神奈川県相模原市緑区の境界にあり、相模、甲斐、武蔵の三国にまたがり、春の新緑と桜、秋の紅葉など、素晴らしい景色を見せてくれる山です。

ここでは、サクラ咲く尾根を辿り、三国山から生藤山、茅丸、連行山と続く、主稜線を楽しむミニ縦走コースを紹介します。

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JR中央本線の藤野駅から和田行きのバスに乗り、鎌沢入口バス停で下車します。

県道から左に分かれ、沢井川に架かる橋を渡り、鎌沢への車道を進みます。連行沢沿いを緩やかに登って行くと、県立鎌沢駐車場があります。マイカー登山ならば、ここが利用できます。

マイカーならば鎌沢の駐車場へ/鎌沢休憩所からは陣馬山が大きく見える


さらに少し先の分岐を左上に進み、熊野神社を見て、登里の集落に入ると、左側にビニールハウスと道標が立っています。車道を離れて左に上がれば鎌沢休憩所に着きます。あづまやとトイレがあり、休憩に適しています。

生藤山登山口の石碑の先で、最奥の民家脇から登山道に入ると、すぐに陣馬山が見えてきます。さらに進むとベンチがある尾根に出ます。

鎌沢から登山道に入ると直ぐに陣馬山の山容全体が目に入る


開花期には華やかな八重桜の並木を抜けると、鳥居と祠が建つ熊野神社に出ます。

社の横を通り過ぎ、緩やかな尾根通しの道を辿って行くと石楯尾神社からの道と合流して佐野川峠に到着します。

鎌沢ルートの桜のプロムナードでは、美しさにしばし足を止めてしまう/特に美しいのは八重桜だ


そのまま尾根を進むとサクラ並木に変わり、お花見をしながらの尾根歩きを楽しめるでしょう。右手には生藤山から続く陣馬山への稜線が見える。やがてサクラが見事な甘草水に着きます。

甘草水はサクラの名所でテーブルとベンチが置かれている居心地の良い所だ


テーブルとベンチがあり、撮影タイムでゆっくりとしたい場所です。広場の一角には甘草水案内板があります。せっかくなので水場に寄り道しましょう。尾根を右に100m進めば水場の甘草水だ(甘草水の水は、煮沸するなど、自己責任で)。

水場から尾根に戻り、登って行くと、軍刀利神社分岐を見送り、三国山へ進んで行きます。この辺りも山桜が綺麗で、なだらかな登山道が続きます。巻道を分け、少し急な登りになってひと汗かくと三国山に到着します。

その名の通り三国の境界にある三国山/扇山や権現山方面が望め、白雪抱く南アルプスも見える

 

生藤山からは雪を抱いた富士山がバッチリ!

雑木林に囲まれた広い山頂ですが、テーブルとイスが多く置かれているため、いつも多くの登山者で賑わっています。山桜の古木があり、開花期は富士山とのマッチングが見られます。

またこの三国山は、稜線の十字路で、左に進めば浅間峠、右が主稜線になります。休憩を済ませたら案内板の前を通り、東の尾根へと進んで行くと、あっという間に生藤山に着きます。

生藤山山頂は狭いが富士山がしっかり見える


生藤山の山頂は、展望が良くないというイメージが強いのですが、西側の展望が良く、富士山もバッチリ見えるピークです。

生藤山付近から望遠レンズで捉えた富士山は圧巻


山頂からは直ぐに急降下の岩場になります。慎重に下り終えると山頂を巻いてきた道と合わさり、進んで行きます。この稜線はツツジが多く、ツツジの時期に歩けば見応えがあります。

生藤山から茅丸にかけての稜線ではミツバツツジが多く見られる


再び巻道がありますが、真っすぐに階段状の尾根を登って行くと茅丸に着きます。

茅丸は絵のような構図で道志や丹沢の山々が見える


今コース最高峰の山頂は、ベンチがあるものの、さほど展望は良くありませんが、ほんの少し西側の樹間が開いており、樹がフレームとなって丹沢の山々が絵画のように見えるのがポイントでしょう。

茅丸を後にして階段を下り、その後、なだらかな広葉樹の広い尾根の暖急を繰り返し行くと、分岐でベンチのある連行峰に着きます。展望はなく、万六尾根で柏木野バス停への道を分けています。

連行峰は木立に囲まれているが新緑の美しい分岐である


連行峰からはアップダウンの少ない尾根道が続き、四角い石の石碑が置かれている「山ノ神」の分岐に出ます。直進すれば醍醐丸へ続きます。

石碑が置かれている「山ノ神」の分岐。小休止を取るハイカーが多い


分岐をあとに南面の斜面に入ると、左右にターンをしながら下って行きます。やがて左が大きく開け、丹沢の山々や谷筋の見事な光景が目に入り、足を止めてしまうに違いありません。

山ノ神分岐から下り始めると、山あいの重なり合う見事な絶景が待っている


さらに下ると、何故こんな山奥に? と思わせる一軒家が建っています。ここからは段差もない緩やかな下りが続き、沢の流れが近づいてくると林道に変わります。左手に堰堤が見え、舗装道に変わり、山あいを真っすぐ進みます。

左に祠があるところで橋を渡ると林道が合流。そのまま下り続けると集落の中を歩くようになり、広い車道に出るでしょう。

和田のバス停は、陣馬山から下山してくる登山者も多い


右に道なりに進めば和田のバス停に着きます。ここからバスに乗り藤野駅に戻って、味わい深い山旅の一日が終了します。

みなさんもぜひ新緑の低山を楽しんでください!

 

生藤山 登山マップ

 

『高尾山と中央線沿線の山』

高尾山と中央線沿線の山々の徹底コースガイド決定版! 南に丹沢山塊、北に奥多摩というメジャーエリアに挟まれた中央線沿線の山々は、日本百名山のような有名山岳こそ含まれないものの、首都圏の登山者から四季を通じて親しまれている。鉄道駅から直接登ることができる身近さから、根強い人気がある。著者が140日以上に渡って実踏調査したコース案内と、写真集のような美しい山岳写真でまとめられたガイドブック。富士山展望の山も多数収録。

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※本コラムの執筆者、渡邉明博さんが撮り下ろした絶景の富士山写真で構成するガイドブック『絶景の富士撮影ガイド』が、6月中旬に発売予定!

プロフィール

渡邉 明博

1957年、東京都生まれ。中学時代に写真を始め、1976年から商業カメラマンとして写真を仕事とする傍ら、「山上から富士山を撮る」をテーマに山岳写真家としても確立。「低山フォトグラファー」として中央線沿線の低山にくまなく通い四季折々の風景を撮影。のべ150日に渡る実踏取材を元に『高尾山と中央線沿線の山』(山と溪谷社)を2016年に上梓。白籏史朗賞日本山岳写真コンテスト入選ほか受賞歴多数。山岳写真ASA会長。(写真=水谷和政)

低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

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