魅力いっぱいの要害山。開花に合わせ、桜と富士山を愛でる低山ハイクへ!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

低山フォトグラファーの渡邉明博さんに、季節のおすすめとなる低山を紹介してもらう連載。今回は、春を迎え、山上でサクラと富士山の風景を楽しめる山梨県上野原市の低山、要害山(ようがいさん)をご紹介します。


上野原市民の「憩いの名峰」と言っても過言ではないのが要害山です。雑誌などでは未だに紹介が少ないのですが、要害山からコヤシロ山、尾続山を辿る周遊コースは、低山ながら起伏に富んだコースで、いたる所から富士山が望めます。

要害山山頂から望む南面から西面にかけての大展望。地図を広げ山座同定してみたい


春の桜に始まり、ツツジ、新緑、秋の紅葉に冬の陽だまりハイクと、四季を通して楽しめるフィールドになっているのが魅力です。

気象庁からサクラの開花予想が発表され、今年は例年になく桜の開花が早そうな気配。そこで一足早いが富士山と桜を愛でる山旅を紹介します。

JR上野原駅から、富士急バス(4/1から社名変更予定)で、松姫峠方面行きのバスに乗り、約15分、鏡渡橋で降りれば要害山の登山口に到着します。

バス停前の舗装道で集落の中を上がって行くと、次第に展望が良くなり、地区のコミュニティ消防センターを過ぎたところで、舗装道が林道に変われば、赤い鳥居と山神社があります。

赤い鳥居が印象的な登山道入り口。左側から進んで行く


要害山入口の道標があるので、ここで身支度を整え出発しましょう。ここから本格的な登山道が始まります。道は直ぐにジグザクに登るようになり、途中で振り返れば上野原市街が一望できます。傾斜が緩くなれば、要害山山頂に到着です。

山頂手前で上野原市街を一望。街と自然が共存している景観だ/平坦で広い要害山山頂。大きな杉の木が印象的

要害山山頂から望む新緑を抱いた富士山。望遠レンズで撮影


平坦で広い山頂には、秋葉大権現が祭られており、春なら桜の花が迎えてくれるでしょう。

また展望も素晴らしく、特に南面は、富士山をはじめ、中央線沿線と丹沢の山々を見渡すことができます。ベンチもあるので、まずはここで一息入れましょう。

 

要害山から小さな縦走! 小さなピークからは富士山の絶景


展望を楽しんだら縦走を続けます。稜線を西に進み、尾続山方面を目指します。樹林帯を少し下ると大きな樹の下に石灯篭がある大倉地区、登下(とっけ)地区への分岐に出ます。

灯篭が置かれている分岐。「登下(とっけ)」は読みが難しい地名のひとつ


コヤシロ山・権現山の道標に従ってそのまま直進し、いったん登り返して小ピークを2つ越えるとヤセ尾根に変わり、眼下に登下の民家も見えてきます。

さらにアップダウンを繰り返すと「風の神様」の看板と、小さな祠が置かれている小ピークに出ます。

「風の神様」は小ピークだが、心地よい風景がある


名前もないピークですがロケーションが良く、ここの展望も捨てがたい! 写真を撮る私にとって、お気に入りのポイントです。

「風の神様」からの富士山


ここからは登山道が北方向に変り、いきなり足場の悪い急な下りになります。補助ロープが張ってあるので注意して下っていきましょう。

やがてヒノキの巨木が立ち並ぶ広い尾根を上るようになって小ピークを越え、緩やかに登りきったところがコヤシロ山です。

ヒノキの巨木が立ち並ぶ広い尾根を登ればコヤシロ山だ


西側の展望が大きく開けていて、富士山のほかに、中央高速のエクスパーサ談合坂が間近に見えます。また春は南側斜面の桜が美しく、開花時期に合わせられれば、一段と魅力ある山旅になること間違いありません。

コヤシロ山もまた素晴らしい展望。山桜の開花期にぜひ訪ねたい山


コヤシロ山からは尾続バス亭の道標に従って、今度は東方向に進んで行きます。起伏の少ない樹林帯道で南側を見れば樹間から歩いて来た要害山の稜線が見えます。さらに木立に囲まれた実成山を通過すると、前方の展望が大きく開け、正面に石老山を望むことができます。

 

低山ながら展望のよいピークが続き、上野原の市街へ下山

ここから道は一気に下って、尾続山山頂に着きます。以前は展望の無いピークだったのですが、今は西面が伐採されて、富士山が見えるようになっています。

尾続山の前後で、展望が広がる箇所がある


ここで最後の展望を楽しんだら、下山を続けます。すぐに再び前方が開けた展望台に出ます。先程と同様、上野原の街並みがより近づいて見えるでしょう。ここから先は急斜面のジグザクの下りで、どんどん高度を下げ、竹林を抜けて小さなお地蔵様を過ぎると、民家の屋根が見えてきます。

稜線で見られるフデリンドウ。これも春の花だ


民家の脇道から舗装した道を道標に従って右に曲がればバス通りに出ます。左に曲がれば尾続バス停です。しかし、尾続でバスを待つよりは、バス便が多くある新井か、本町三丁目まで歩いた方が賢明です。

前回、八重山の回でも記しましたが、市街の居酒屋で打ち上げをしたり、名物の酒饅頭を買い求めたりするのもひとつの楽しみ方でしょう。

要害山のお花見山行を計画して、ぜひ春の低山を楽しんでください。

 

要害山 登山マップ

 

 

『高尾山と中央線沿線の山』

高尾山と中央線沿線の山々の徹底コースガイド決定版! 南に丹沢山塊、北に奥多摩というメジャーエリアに挟まれた中央線沿線の山々は、日本百名山のような有名山岳こそ含まれないものの、首都圏の登山者から四季を通じて親しまれている。鉄道駅から直接登ることができる身近さから、根強い人気がある。著者が140日以上に渡って実踏調査したコース案内と、写真集のような美しい山岳写真でまとめられたガイドブック。富士山展望の山も多数収録。

Amazon で見る Rakuten で見る

※本コラムの執筆者、渡邉明博さんが撮り下ろした絶景の富士山写真で構成するガイドブック『富士を眺める・写す 絶景の富士に出会える首都圏の山(仮)』が、6月中旬に発売予定!  

プロフィール

渡邉 明博

1957年、東京都生まれ。中学時代に写真を始め、1976年から商業カメラマンとして写真を仕事とする傍ら、「山上から富士山を撮る」をテーマに山岳写真家としても確立。「低山フォトグラファー」として中央線沿線の低山にくまなく通い四季折々の風景を撮影。のべ150日に渡る実踏取材を元に『高尾山と中央線沿線の山』(山と溪谷社)を2016年に上梓。白籏史朗賞日本山岳写真コンテスト入選ほか受賞歴多数。山岳写真ASA会長。(写真=水谷和政)

低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

編集部おすすめ記事