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着脱便利なバインディングを備えたMSRのスノーシューを、湯ノ丸山でテスト!

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2019年02月28日

今月のPICK UP  MSR/EVOエクスプローラー

価格:27,000円(税別)
サイズ:ワンサイズ(21✕56cm)
重量: 1800g(ペア)

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MSR「エクスプローラー」シリーズの最新作。使いやすいバインディングに注目!

冬になると日本海の湿気が北風とともに流れ込んでくる日本は、世界でも有数の雪国だ。それゆえに、スノーシューを楽しめる山域は全国に広がっている。スノーシューにはいくぶん急峻な斜面でも登れるバックカントリー向けの登攀的モデルもあるが、基本的には緩やかに起伏する低山や丘陵が得意。合わせて使う道具はトレッキングポールであり、初心者でも直観的に扱うことができる。

今回ピックアップするのは、MSRの「EVOエクスプローラー」。20年以上の歴史を持つMSR社のスノーシューのなかでも比較的緩やかな斜面に向く「エクスプローラー」シリーズの新製品だ。ちなみに、同社のラインナップには、急斜面の想定される高山用に「アセント」シリーズ、平坦な場所向けに「トレイル」シリーズが用意されており、「エクスプローラー」シリーズは、それらの中間に位置する存在というわけである。

「エクスプローラー」シリーズの特徴は、簡単に着脱できるように考えられたバインディングだ。同社のスノーシューはいくつかのバインディングを使い分けており、EVOエクスプローラーに取り入られているシステムは「ハイパーリンクバインディング」と名付けられている。

これは、ミゾが刻まれているベルトをバックル状のパーツに通すだけで締まり、そのまま緩まなくなるという、いわゆるラチェット式。2段階で長さを変えられるベルトが足の甲と、かかとの部分に取り付けられており、レバーを簡単に操作するだけで適度なフィット感が得られる。このシステムがよくできており、ワンハンドどころかワンフィンガーで微調整ができるのだ。

下の写真はベルトの緩みをとるときの方法。黒いレバーを押し上げるとカチカチという音とともにベルトが引き絞られ、ミゾがパーツに引っかかることによって固定される。力はさほど必要ではない。

 

このミゾの幅は約3㎜。つまり、1回レバーを押し上げるたびに3㎜ずつ締め付けられていくわけで、3回カチカチとレバーを動かせば計9㎜ほど引き絞れることになる。微調整は容易だ。

反対にベルトを緩めるときは、赤いレバーを押すだけである。ただし、押しただけではバックルのロックが外れた状態になるのみなので、そこから指でベルトを引き出すなり、足を強く持ち上げたりする必要はある。

しかし、一気に外れないのはむしろよい点だろう。というのも、このレバーは行動中に逆側の足が触れてしまったりすると間違って解除されかねないわけでもなく、そのとき一瞬でスノーシューが外れてしまうと、転倒の恐れが高くなって危険だ。だから、ベルトを引き出すなどの作業を行わないと完全には取り外せないくらいのほうが、安全性は高いのである。

このバインディングシステムにより、スノーシューの着脱は非常にスピーディだ。慣れれば両足で1分ほどではないだろうか。アウトドア用のスノーシューを開発しているメーカーは数あれど、これほどすばやく取り外しできるシステムを採用しているモデルはほとんど見当たらないと思われる。

 

このスノーシューのフィッティングの注意事項としては、いったん締め付けてから少しの間行動した後、改めて再び微調整するとさらにフィット感が上がるということだろうか。ブーツのサイドに沿うようにつけられているグレーの樹脂パーツは、雪山のような低温下ではいくらか硬化してしまうようで、ベルトを強く絞っても当初の曲がりが完全には取れず、少し浮いてしまう。だが歩いているうちになじんで伸びてくるので、それから再びベルトを少し絞ると理想的なフィット感になるのだ。

このバインディングのもうひとつのよさは、ブーツ先端を覆う部分の内側。弾力性が高いクッション性の素材が張られており、嫌な締め付け感をもたらさないのだ。スノーシューによっては、つま先部分をフィットさせると、ブーツが強く圧迫されて指先の血行が悪くなり、冷えの原因になる。しかし、EVOエクスプローラーのバインディングならば、そんな問題は起きなさそうである。

 

ただし、柔らかな素材だけに少々傷みやすいのではないかとも思われる。この部分の耐久性は長期間使わないと判断できないため、今回のテストではこれ以上の言及は避けておこう。

ところで、EVOエクスプローラーの長さは、22インチ(約56㎝)。締まった雪の上ならば体重と荷重を合わせて100kg程度でも充分な“浮力”を得られ、柔らかな雪でも60kg前後でも体が沈みこまないという計算で作られているが、それ以上の重さになると雪中に没する恐れも高くなる。僕の体重は70kgほどで、今回の雪山用のブーツやウェア、荷物の重さなどを加えると、80kgといったところ。もしかしたら今回は、深雪に足を取られて難儀するかもしれない。

そこで、今回は別売りの「EVOテイル」も用意しておいた。これはスノーシューのデッキの末端に取り付けて使うパーツで、重なり合う部分を除くと実測で15cmほど長さがプラスできる。ざっと計算すると面積では125%くらいの増量になりそうだ。右下の写真の上がEVOテイルを付けている状態で、下が付けている状態である。

 

EVOテイルを併用すれば、おそらく100kg以上の重さに耐える浮力を得られるようになり、テント泊装備にも対応できるだろう。ちなみにEVOエクスプローラーの重量は両足で1800g。EVOテイルも同様に364g。合わせて使用すれば、2164gになる。

 

不安定な天候。急ぎ山頂へ! 急登に威力を発揮した機能は…

さて、今回のテストは、浅間連峰の西側にある湯ノ丸山。天気予報では午後から雪が降り、強風が吹くという空模様である。僕は天気が悪化する前に、すばやく山頂に往復してくることにした。

 

スキー場の駐車場付近はアスファルトが露出しているので、はじめはスノーシューをはかず、ブーツのみ。湯ノ丸キャンプ場へ向かう林道に入ると雪になったが、路面が凍結していることもあり、しばらくはスノーシューをバックパックに取り付けたまま進んでいく。

バックパックにスノーシューを取り付けて持ち運ぶ際に気になるのが、その厚みだ。モデルによってはバインディングがかさばって薄くまとまらず、行動中に邪魔になる。しかしEVOエクスプローラーは、重ねたときに下側になるスノーシューのバインディングのベルトを完全に外してしまえば、ブレードとデッキの厚みにしかならない。先端の反っている部分を除けば、左右を重ねても厚みは10cm以下だ。持ち運ぶ際の厚みがいつも気になっている僕には、これはうれしい点である。

湯ノ丸山付近はスノーシューハイキングに人気のコースが多く、雪の状況によっては山頂自体にもスノーシューで登っていける。僕はキャンプ場から北側の尾根に入り、山頂へ向かった。雪面は適度に締まり、途中までは傾斜も緩やかなこともあって、どんどん進んでいける。悪天が予想されるこの日の登山者は僕だけだったが、前日に入ったと思われる人のスノーシューの跡が幾筋も延びていた。

 

先行者が作ったトレースの上を進む分には、雪を踏み抜くことはない。だが少しルートを逸れれば、スノーシューをはいていても20cmほど足が雪中に没する。この付近の積雪量は50cm程度のようであり、やはりスノーシューをはいているからこそ、20cm程度で体の沈み込みが抑えられている。ブーツだけで歩くと難儀するだろう。

森を抜けると湯ノ丸山の山頂が視界に入り、その後に鐘分岐を過ぎる。ここからが本格的な登りだ。

 

夏ならば山頂まで1時間もかからないコースだが、今日の雪質ではどうだろうか?

次第に傾斜がキツくなってきたので、僕はスノーシューの「テレベーター」の機能を使うことにした。これは金属製のバー状のパーツを立ち上がらせ、ブーツのかかと部分を持ち上げる機能だ。これにより斜面でもブーツの底が水平に近くなり、ふくらはぎに無用な力を入れずに歩ける。平坦な場所向けのモデルでは省かれていることもあるが、スノーシューにはおなじみの機能ともいえ、一般的には「ヒールリフター」などという名称でも知られている。

   

EVOエクスプローラーのテレベーターは非常にシンプルな構造で、金属パーツに付けられた樹脂パネルを引き上げるだけで、金属パーツが完全にロック。ブーツを上に乗せて体重をかけても外れなくなり、5cmほどかかとが高くなる。女性ならば、ヒールが高いシューズをはいた感覚に近いのかもしれない。

それにしてもこの5cmの威力は非常に大きい。ふくらはぎの張りがなくなり、前方へ足を運ぶのも容易。歩きやすさが格段にアップする。

 

スノーシューの裏にある鋭い爪を持ったクランポンも、前爪が雪によく食い込むようになり、かなりの斜面でも難なく登れるようになる。やはりこのテレベーターのような機能がなければ、傾斜がある山ではスノーシューは使えない。

スノーシューの真価が問われる「下りのトラバース」でも◎

山頂の一角が見えてきた。風速が増し、大半の雪が吹き飛んで積雪量が減っていた。

このあたりにくると雪は硬く締まり、なかば凍結している。もはやスノーシューなしでも歩けそうだが、わざわざ外す必要もなく、そのまま山頂を目指していく。

だが山頂までくると、完全に雪は吹き飛ばされ、目の前に広がるのは岩ばかり。そこで僕はテレベーターを元に戻し、バインディングも外してブーツのみになる。

 

ちなみに、左上の写真は、テレベーターを外すときの様子だ。本来は金属パーツを手で押し下げるべきなのだろうが、このようにトレッキングポールの末端をテレベーターの金属パーツに引っかけ、ポールのサイドにブーツで圧をかけると、立ったままでもテレベーターを解除できる。トレッキングポールに強い負荷がかかるので、メーカーには推奨されない方法だろうが、覚えておくとラクができる。ただし自己責任で。

スノーシューを手に持って到着した山頂は、気を抜くと体がふらつくほどの強風だった。  

しかし、天気が崩れ切る前の小康状態ともいえる状況で、薄曇りながら360℃の大眺望。とくに四阿山、高妻山、妙高山といった北西側の山々の見晴らしがいい。

天気予報では山頂の風速は20mという数値も出ており、少しすると体が冷えてきた僕は早々に下山を開始した。

強風が吹いているのは山頂付近だけであり、東側に見える湯ノ丸スキー場のリフトは稼動しているようだ。これから雪が降り始めれば、多くのスキーヤーでスキー場もにぎわうのだろう。

下り道では少しルートを変え、登りでは経験しなかったシチュエーションでもテストを重ねた。少々わかりにくいが、下の写真は斜面をトラバースしているときの様子である。とくに左足が斜めになってしまっているのがわかるだろう。

だが、EVOエクスプローラーのグリップ力があれば、これくらいの斜面はまったく問題ない。足元を俯瞰しただけだと、見た目はとてもシンプルだが、その裏側にはしっかりとしたクランポンが組み合わされているからだ。

こちらがスノーシューの裏側の様子である。クランポンのメインとなるのは、前後に2列並んだ長い金属のブレードで、ギザギザの歯が並んでいる。

 

この長いブレードがあるために、トラバース時にも体が横に流れることがなく、姿勢が安定するわけなのである。

ブーツのつま先の裏に当たる部分には、長さ3cmほどの爪が2つ付けられている。

前方へ蹴りだす際は、この部分がしっかりと雪に食い込む。滑って力がかからなくなることがなく、スムーズに体を前方へ移動することができる。

歩行中は目立たない部分だが、スノーシューの裏面にはメーカーの個性が現われる。以下は今回のEVOエクスプローラーの踏み跡だ。

前後に延びる2列のブレード、そしてつま先付近の前爪の雰囲気がよくわかる。自分のスノーシューの特徴を覚えて置けば、今回のような山頂往復のとき、往路では自分の足跡を目印に歩くこともできるかもしれない。

標高を下げると風は弱まったが、上空の雲の厚みはさらに増していった。

雪が降り始める前に下山できたことに安堵しつつ、僕は駐車場へと向かった。キャンプ場近くではスノーシューのツアーのグループに遭遇したが、その後の天気は大丈夫だったのだろうか?

 

まとめ:「EVOエクスプローラー」は、着脱快適なバインディングと程よい機動力が秀逸

先に述べたように、MSR社のスノーシューのラインナップのなかで、EVOエクスプローラーは「エクスプローラー」シリーズに位置しており、より登攀性が高い場所には「アセント」シリーズがあり、平坦な場所向けでの入門用に「トレイル」シリーズもそろっている。その点でいえば、今回の湯ノ丸山のような山域は、EVOエクスプローラーにはぴったりの場所といえそうだ。起伏がそれほどきつくはないが平坦でもなく、テレベーターの機能がなければ快適には行動できないという状況で、EVOエクスプローラーの機動力が理想的なのである。また、テイルなしでの22インチというサイズが生み出す浮力は、日帰り装備の山行にはちょうどよい。せっかく持っていったEVOテイルの出番はなかったのだが……。

今回のテストに使った浅間連峰以外では、奥秩父や北八ヶ岳などで活躍しそうだ。より傾斜が強くなる高山ではグリップ力が足りず、より積雪量が増える日本海側の山々では浮力が足りないかもしれないが、今回のような緩やかな山では楽しく使えるだろう。

それにしても、「ハイパーリンクバインディング」の使いやすさには驚いた。正直なところ、自分が持っている以前のMRSのスノーシューを使うのが面倒に感じられるようになってしまったほど。スノーシューは冬にしか出番がない山岳装備だが、それでも年々進化を遂げていることを実感させられたのであった。

 

今回登った山
湯ノ丸山
長野県・群馬県
標高2,101m

関連する登山記録はこちら
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登山グッズ 冬山用品
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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