アフリカの大自然トレイルを歩く:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(15)

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旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第15回目は、アフリカのトレイルを紹介する。乾燥した赤土の大地と緑のオアシスが印象的なモロッコ・トドラ渓谷、草原で覆われた美しい景観が広がる南アフリカ・ジャイアンツカップトレイル、天空に浮かぶ王国と称されるレソト・サニパスを歩いた様子をお伝えする。

 

褐色の大地に緑鮮やかなオアシス モロッコ・トドラ渓谷

2016年10月6日(世界一周177日目)

トレッキングシーズンの関係からヨーロッパから北米へ移動し、ジョンミューアトレイルを歩いた僕らだが、再び大西洋を渡り、ポルトガル、スペインを経由して、アフリカ大陸に入った。

サハラ砂漠に、オアシス都市、迷宮のような旧市街に、イスラムの幾何学模様。北アフリカのモロッコは異国情緒あふれる国。モロッコのトレッキングといえば、4000m級の山が連なるアトラス山脈、北アフリカ最高峰のツブカル山等があるが、今回僕らが訪れたのはモロッコ中部の町ティネリール近くにあるトドラ渓谷。ティネリールはサハラ砂漠が楽しめるメルズーガからマラケシュへ移動するルート上にあり、モロッコ観光と組み合わせてトレッキングが楽しめる場所のひとつだ。

モロッコといえばサハラ砂漠、キャメルトレッキングもできる


ロッククライミングでも有名なトドラ渓谷は、ティネリールからタクシーで30分程行った郊外にある。川を挟んで両側に急峻な崖がそびえ立つ。渓谷の中に入り少し進んだところが登山口だ。ゴツゴツした岩肌に乾燥した土地特有のトゲトゲした植物が点在するトレイルを登っていく。太陽の白い陽射しがむき出しの荒野をじりじりと照らす1時間半ほどで開けた場所に到着。登ってきたトレイルを振り返ると、遠くまで褐色の谷が伸びる。

北アフリカの荒涼とした山々、日本では見られない景観だ


さらに先へ進むと、何もない荒涼とした場所で洞窟を掘りテントを張って生活している人がいた。お茶を飲んでいくかと誘われ、甘いモロッコミントティーでしばし休憩。僕らは持っていたお菓子を子供たちと分ける。挨拶は「サラマレコン」、ありがとうは「サハ」。これはベルベル語というモロッコの公用語のひとつ。内陸部にはベルベル人が多く住んでいる。ノマドの一家との貴重な触れ合いを楽しんで再出発。彼らの家の裏手を更に登ると見晴らしのいい場所に出た。先ほどの見渡した渓谷とは反対側の景色だ。青い空の下、褐色の大地に、川に沿って鮮やかな緑が延び、そこを囲むように広がる街。最後は気持ちのいい下り坂をザクザクと谷の下まで駆け下りた。

ベルベル人からミントティーをいただく

子供達に道案内をしてもらう

緑のオアシスが見えればゴールはもう直ぐだ

 

ドラゴンが住む秘境 南アフリカ・ジャイアンツカップトレイル

2016年10月25日(世界一周196日目)

世界遺産マロティ・ドラケンスバーグ公園。南アフリカとレソトの国境沿いにあり、名前の由来の通りドラゴンが出てきそうな秘境。3000m級の山々が連なり、絶壁と渓谷が美しい景観を織りなしている場所だ。ここにはジャイアンツカップトレイルというトレッキングコースがあり、僕らはそこを5日間かけて歩いた。

緑の草原が印象的なコース


山と山の間に広がる草原トレイルを進み、その後は緩やかに山肌を登っていく。ドラケンスバーグ山脈からの支脈とその間に広がる谷をいくつも越えていくようなコースだ。時折、姿を見せる動物がアフリカらしい。目の前に現れたバブーンという猿の集団は、15匹から20匹くらいの群れを成し、背中に赤ちゃんを乗せているものもいる。甲高い奇声を発し、僕らの侵入を仲間に知らせているようだった。それでも呑気に毛繕いをしているものもいて、微笑ましかった。

ガーデンキャッスルという岩山を望む

ルート上には宿泊できる小屋があるのだが、全て無人小屋。僕ら以外に誰もいない閑散とした雰囲気に最初は怖気付いたが、数日経てばそんな環境にも慣れてしまう。太陽が高いうちに水シャワーを浴び、小屋の前のベンチに座って目の前に広がるアフリカの大地を眺める。夜はローソクに火を灯し、暖かいコーヒーを一杯。外に出れば、満点の星空が広がっていた。日本で見るものとは違う南半球の星空だった。

左手に見えるのが今日の小屋だ

ドラゴンが住んでいそうな秘境を歩く

 

天空の王国 レソト・サニパス

2016年10月29日(世界一周200日目)

四方を南アフリカ共和国に囲まれた国、レソトは、全土の標高が1500m以上で、そのロケーションから天空の王国と称される。東部にある峠サニパスは標高2800mを越え、南アフリカ方面は大地が切れ落ちたような断崖が連なる。

サニパス周辺のトレッキングは、南部アフリカ最高峰のタバナントレニャ山や、南アフリカとの国境沿いの断崖に立つホジソンズピーク等がある。いずれもサニパスのレソト国境そばにあるサニマウンテンロッジから日帰りで歩ける。

サニパスにある集落、レソトでよくみる円形の住居

雲海の下が南アフリカ


僕らはレソト側のボーダーの裏手から、ホジソンズピークを目指し、断崖に沿って南東方面に歩いてみた。天気は良いがとにかく風が強い。レソト側から南アフリカ側に風が吹き下ろしており、油断すると飛ばされてしまいそうだ。断崖からはうねうねと波打つように、いくつもの支脈が伸びるのが見渡せる。

断崖沿いを歩き続け、ホジソンズピーク手前のビュースポットへ。強い風によってどんどん流されていく大きな雲が、眼下の山々にいくつもの光と影の模様を映し出し、それは不規則に形を変えながら滑るように山肌を流れていく。まさに天空から世界を見下ろしたような眺めだった。

天空から世界を眺める

レソト側は遠くまで台地が続く

レソトでは馬が庶民の足

 

アフリカでのトレッキング


アフリカでのトレッキングというと、キリマンジャロ、ケニア山などの本格的な登山が有名ですが、個人で気軽に歩けるようなトレッキングコースの情報は少ないのが現状です。僕らの旅は、旅行と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを巡ることをテーマとしていたため、限られた情報をかき集め、ツアーに参加したりガイドやポーターを雇ったりしなくても歩けるトレイルを何とか見つけ、結果として日本ではあまりメジャーではないトレイルが多くなりましたが、とてもエキサイティングな経験ができました。

情報収集だけでなく、物理的なアクセスにおいても気軽にはいかないアフリカですが、旅行と組み合わせてトレッキングを楽しむという観点でオススメしたいのがモロッコ。

今回紹介したトドラ渓谷があるモロッコ中部は、砂漠、オアシス、カスバ(要塞)などの独特の景観を楽しむことができ、ワルザザートから世界遺産のアイット・ベン・ハドゥなどとも組み合わせて旅行できる場所です。サハラ砂漠が楽しめるメルズーガからは約4時間、マラケシュからは約8時間。メルズーガからマラケシュに移動するルート上にあるため、時間を作って訪れてほしい場所です。

今回紹介したトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

南アフリカで訪れたテーブルタウンからの眺め

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

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