アンデスの分水嶺:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(16)

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旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第16回目は、南米ペルー、アンデスの核心部とも言えるブランカ山群サンタクルス谷。5000m級、6000m級の山々がひしめくアンデス山脈の天井が望める場所を、3泊4日で歩いた様子をお伝えする。

 

アンデスの高峰と氷河湖

2016年11月20日(世界一周222日目)

南米ペルーのアンデス山脈にあるブランカ山群のサンタクルス谷。ブランカ山群は6000m以上の山が30座、5000m以上の山が200座以上あるという南米最大の巨大な山群で、熱帯圏にありながらたくさんの氷河をまとった山々が固まっている場所。アフリカ大陸を歩いた僕らは、大西洋を渡り、南米最初のトレッキング場所として、ここを訪れた。

サンタクルス谷という名前の通り谷間に沿って歩いていく


アルパマヨはその綺麗なピラミッド状の山容から世界で最も美しい山と言われている。雲ひとつ無い空に青白い氷河を抱えたアルパマヨはとても迫力があるが、実は最も美しいと言われているのは反対側から見た場合の姿。ここから見えるのは後ろ姿だが、それでも十分な絶景だ。

ピラミッド状の山がアルパマヨ。いつか反対側の美しい姿も見てみたい


アルパマヨの展望地からさらに先に進み、振り返れば鋭鋒アルテソンラフの姿も見えるようになる。その鋭い三角形はマッターホルンのようだった(パラマウント映画のロゴのモデルになったという話も)。標高は既に4000mを越えている。高山病の症状はないが、息苦しい。

急な登りを越えると、美しい氷河湖アルワイコチャが姿を現した。ターコイズブルーの氷河湖はサンタクルストレッキングの魅力の一つ。氷河を抱えた山に囲まれたひっそりとした佇まいは幻想的で美しく、現実離れしたものだった。

右奥にそびえるのが美しい鋭峰アルテソンラフ

氷河湖特有の神秘的な色合いを見せるアルワイコチャ

 

アンデス山脈の分水嶺

2016年11月21日(世界一周223日目)

サンタクルス谷トレッキング3日目。今日は標高4750mのウニオン峠越え。峠へはスイッチバックのトレイルが続き、タウジラフが目の前に迫る。振り返れば歩いてきたサンタクルスのV字谷が遠くまで伸びる。峠越えはいつも苦しいが、その苦しさ以上の美しさを僕らにプレゼントしてくれる。

巨大な壁のように迫り来るタウジラフ

遠くまで伸びるサンタクルス谷の眺め


正面にそびえるタウジラフの氷河にぐんと迫って最後のスイッチバックを切り返すと、ウニオン峠に到着だ。ここはアンデス山脈の分水嶺。アンデスに降り注ぐ雨は、ここを境にして二手に分かれ、それぞれ長い旅路の末に太平洋と大西洋に流れ着く。

わずかな眺望スペースを見つけて休憩をとる。峠を吹き抜ける風が心地よく最高の気分だった。

標高4750mのウニオン峠

太平洋(左)と大西洋(右)を分ける分水嶺

 

アンデスの山村風景

2016年11月22日(世界一周224日目)

トレッキング最終日。乗り合いバスの時間があるため、少し早めに出発し、まだ陽が差し込まないひんやりとした谷底を進んで行く。牛や馬、羊の放牧地を越え、まばゆい太陽の光が入る平原にたどり着く。そこでは数頭のリャマがお出迎え。首から上をこちら側に向け、キョトンとした表情で僕らを眺めている。ゆっくり近づくと、近づいた分だけ離れていく。少しだけリャマとの追いかけっこを楽しんだ。

緩やかな下りをペース良く進む

キョトンとした表情が印象的だったリャマ


次第に民家と畑が見え始め、のどかなアンデスの山村風景となる。紫色の花を咲かせたジャガイモ畑が印象的だった。

小さな集落を抜けると、ゴールのバケリアまでは再び登り。残りの体力を振り絞って、最後の登りを進み、ゴールへ到着。売店でビールを買って乾杯!無事に四日間歩き切ったことを祝った。

最後はアンデスの山村風景


ここから街への帰り道も実はものすごい絶景ルート。ヤンガヌコ峠を越えると絶景ドライブの始まりだ。左手にはペルー最高峰のワスカラン、右手にはワンドイ、ピスコなど 5000〜6000m峰が並ぶ。その間は深い谷が広がり、遥か下の氷河湖チナンコチャまで見渡すことができる。ヘアピンカーブの連続に加え、体が宙に浮くほどの悪路ということもあり、車酔いもセットで付いてくるのだが、これほどの景色を目の前に贅沢なことは言えない。

ヤンガヌコ峠からの絶景

 

ペルー・アンデスでのトレッキング


ブランカ山群サンタクルス谷でのトレッキングは、標高が高いことや全てキャンプ泊となることから、比較的難易度が高いトレッキングと言えます。しかし、氷河を抱いた5000m峰、6000m峰やエメラルドグリーンの氷河湖をいくつも眺めながらトレッキングを楽しめる場所は、世界にそれほど多くありません。

拠点となるワラスの町もインディヘナのおばちゃんたちがたくさんで良い雰囲気。ペルーでトレッキングというとマチュピチュ方面のインカトレイルも有名ですが、ブランカ山群サンタクルス谷でのトレッキングもぜひおすすめしたい場所です。

ペルー・ブランカ山群サンタクルス谷でのトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備についてトレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

ペルー料理のロモサルタード

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

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