登山をもっと楽しく安全に!おとな女子登山部の女性ガイドからワンポイントアドバイス
登山用品専門店の好日山荘では、女性スタッフ有志による「おとな女子登山部」を創り、ブログでの発信や、登山イベントなどを行っている。
リレー連載の第2回目は「もっと楽しむ安全に」登山をするためのワンポイントアドバイスを、好日山荘なんば店勤務で、登山ガイドの資格ももつ「つじまい」さんに紹介してもらう。
- アウトドアが気持ちいい季節。お友達同士で山に行くときには?
- プラスαの楽しみを忘れずに! 手作りの「しおり」も◎
- 遅い人は2番めに。「山が好き」という気持ちを大切に
みなさんこんにちは。アウトドアが気持ちのいい季節ですね!
もしかすると、職場やお友達同士で登山に行こうと誘ったり誘われたり、なんて場面はありませんか? 一人で登山することも多い私ですが、おとな女子登山部ツアーでは女性だけでワイワイと楽しんでいます。
今回は、女性同士で行く登山に不安を感じる方のために、注意点やポイントをご紹介します。
ポイント① どの山にどんなコースで登る?
みなさんは登山計画をどのように立てますか?
楽しい山登りにするには計画がなにより大切。初めての人同士で山登りをするときには、一番登山経験の豊かな人がリーダーとなって計画します。
ここで大切なのは一緒に行く人の登山レベルや装備を事前に把握しておくこと。一番経験の少ない人、体力の無い人に合わせて行く山を決めるのがいいですね。コースもメンバーの体力や天候によって臨機応変に計画を変えられるようにしておくことが大切です。
そして、回数を重ねて、次はステップアップを・・となれば少し冒険してみましょう!
私が3年前に女性の友人と、二人で槍ヶ岳に初めて挑戦したときのことです。一泊二日の日程で新穂高から登って、槍平小屋を経由して槍ヶ岳へ登ることにしました。北アルプスのような高い山は、基本的には途中の山小屋を基準にして計画を立てます。たとえば、11時までに槍平小屋にたどりつかなければ、槍ヶ岳はあきらめて奥丸山登頂に計画を変える、のように。
くやしい思いをするかもしれませんが、奥丸山も槍ヶ岳の展望が素晴らしい良い山です。奥丸山山頂から槍ヶ岳をのぞめば、もっと体力をつけて次はあの頂を目指そう、と心に誓うはずです。
そんな計画でスタートした私たちですが、9時前には槍平小屋に到着。経験者の彼女がペースメーカーとなってくれたおかげで、余裕をもって槍ヶ岳山荘へたどり着くことができました。
ポイント② プラスαの楽しみで遊び心を
女性だけのグループなら、私はいつも「登山+α」の遊び心を足しています。たとえば、「山頂で野点」や、「山小屋で名物の○○を食べに行く」など。食べることばっかりですが(笑)。
プラスαの楽しみがあると、登山がより楽しくなりますね。
中でも私が一番思い出に残っているのは、バレンタインデーに山頂で作ったチョコレートフォンデュ。本当は早春のお花を探しに行く目的だったのですが、時期が早すぎてお花が咲いてなかったんです。でも、こっそりと用意していたチョコレートフォンデュに友人は大感激。
それ以来、みんな喜んでくれるかな、と考えながら準備する時間がとても楽しみになりました。
ポイント③ 「しおり」を作ってみませんか?
手作りの「しおり」を作ると、楽しみが何倍にも増えるので、とてもオススメです。
ルート案内のほかに、必要な装備や、女性は特に気になるトイレの場所や、水場、休憩所などを記しておきます。初心者の方にとっては、地図には載っていない情報が書いてあると、より安心感が増しますね。
また、各々が確認できるので、勘違いや間違いが少なくなります。手間はかかりますが、その分、予定通りに行動できたときの達成感はひとしおです。
ポイント④ ウェブで最新情報をチェックしよう
心配なことがあれば、ルート上にある山小屋や地域のビジターセンター、案内所に問い合わせましょう。
最新情報を入手していないと、登山道が通行止めになっていたり、あてにしていた山小屋が閉まっていたりと、行ってみて初めて知ることにもなります。
お花の情報や残雪の具合など、日々変わる情報も、事前に知ることができます。個人の山行記録なども参考になりますが、主観的に書かれていることも多いです。各山小屋がSNSで最新の登山情報を掲載していたりするので、私は積極的に活用しています。
また、全国の好日山荘スタッフが掲載している「登山レポート」も最新情報が多く、参考にしてみてください。
ポイント⑤ 思わぬアクシデントに備えよう
思わぬアクシデントとして、よく耳にするのが、靴底のラバー剥がれです。これを防ぐポイントは、普段から登山靴をメンテナンスしてあげること。汚れを落として撥水コーティングをしてあげることで、靴が長持ちします。また、登山に行かない(行けない)ときにもたまに履いてあげること。半年以上放置している靴は要注意です。
万が一、登山中に靴底が剥がれてしまったときは、応急処置が必要です。針金やダクトテープ、細引き(靴紐の予備でも可)を持ち歩いていると、こういうときに役立ちます。
また、山で軽い怪我をしたときのためにも、ファーストエイドキッドは必需品です。私のファーストエイドキッドは、「常備薬(下痢止め・痛み止め・漢方薬)、絆創膏(大中小)、包帯(大小)、ガーゼ、三角巾、ポイズンリムーバー、ゴム手袋、消毒薬、目薬」など。必要に応じて入れ替えはしていますが、基本的には上記のセットをいつも持っていきます。
また、特に初心者の女性の場合は、慣れない登山でホルモンバランスを崩しがちです。生理用品も忘れずに持っていきましょう。
ポイント⑥ おしゃべりは適度に
グループで行く女子登山では、おしゃべりも楽しみです。
おしゃべりしながら歩くと、早すぎない良いペースをキープし、疲れも軽減してくれるような気がします。でも、おしゃべりに夢中になりすぎると、木の根っこにつまずいたり、後ろから来る足の速い人に気付かなかったり。分岐を見過ごしてしまって、違うコースに入ってしまうことも(私の実話ですが・・・)。
だから、おしゃべりは適度に。会話を楽しみながらも、絶えずまわりを観察してください。
ポイント⑦ 歩くのが遅い人は2番目に
大人数のパーティの場合、どうしても遅れがちになる方がいます。「みんなについていけないから、一番うしろでゆっくりいきたい・・・」というのははっきり言って×。遅れて一人で歩くと、余計に疲れてしまう上に、道を間違えてはぐれてしまったりして危険です。
歩くのが遅い人、歩くのがしんどい人は、先頭を歩くリーダーのすぐ後ろを歩いてください。遅い人に合わせてペースを作ることができます。
もっと余裕を持って歩きたいなら、工夫が必要です。
装備を見直して荷物を少しでも軽くする、普段から階段を使って足腰を鍛えるなど、少しの心がけで、ずいぶん変わります!
まとめ:「山が好き」という気持ちを大切に。登山を楽しもう!
スポーツとは無縁の生活だった私は、登山初心者の頃は体力も無く、まわりに追いつこうと必死でした。山に行く機会をなるべく増やし、目の前の目標、目の前の山のために努力をすると、自然と山に向いた体になっていきました。
「体力や技術に不安がある女性でもどんどん山にでかけていって、日常生活で疲れた心を癒してほしい」と思ったのが、私が登山ガイドを目指したきっかけです。
おとな女子登山部ツアーにガイドとして同行する機会もあるのですが、今では、女性のお客様から山に関するいろんな悩みや相談を受けるようになりました。
「山が好き」という気持ちを大切にして、安全に登山を楽しみましょう!
プロフィール
つじまい(好日山荘おとな女子登山部)
奈良県生まれ。26歳の頃に屋久島を訪れ、登山に目覚める。2018年夏に、焼岳~親不知まで13日間かけテント泊単独縦走を行う。好きな山域は、屋久島、北アルプス、奈良大峰。ジャンル問わずクライミング活動に休日を費やす。2021年現在、好日山荘なんば店勤務。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・奈良山岳自然ガイド協会所属。
⇒おとな女子登山部メンバーはこちら
好日山荘 なんば店
日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、雪山登山、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。同じビルにはクライミングジム「グラビティリサーチNAMBA」が併設されており、ロープワーク講習や岩稜帯の歩き方など、さらなるステップアップを目指す登山者に向けてさまざまな講習会を開催中。
所在地/大阪府大阪市中央区難波千日前12-35 スイングヨシモトビル3F
TEL/ 06-6645-0630
営業時間/ 11:00~21:00
アクセス/ 大阪市営地下鉄御堂筋線・千日前線・四ツ橋線難波駅より徒歩約5分、近鉄・阪神大阪難波駅より徒歩約6分、南海難波駅より徒歩約8分、JR難波駅より徒歩約10分
好日山荘おとな女子登山部 リレー連載
登山用品専門店の好日山荘で、2013年より女性スタッフ有志により立ち上がった「おとな女子登山部」。 「自分たちが山を真剣に楽しみ、次の山に挑戦すること」「お客様にもっと山を好きになってもらうこと」を目標に、ブログでの発信や登山イベントなどを行っている。 その活動の様子と女子目線での登山感を伝えていく。