いざという時に備えよう! エマージェンシーグッズの見直しと、山でのレスキューについて

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好日山荘おとな女子登山部によるリレー連載。今回は、好日山荘池袋西口店勤務のなみへ~さんに、山でのセルフレスキュー方法と、その時に必要となるエマージェンシーグッズの見直しについて教えてもらいました。

 

こんにちは! おとな女子登山部のなみへ~です!

コロナ禍で自粛していましたが、9月になって「おとな女子登山部」のツアーが久し振りに開催され、なみへ~はトップバッターで、スタッフとして同行してきました^^。

久しぶりにみなさまの笑顔を目の前にして、こみあげてくる涙を何度もこらえたのでした(おおげさ!? 笑)。

 

自信を無くすのはまだ早い!失敗してこそ経験値があがる!

以前このコーナーに掲載したニコの記事同様、なみへ~も自粛期間中に体力が低下し、初心にかえって山へ登りなおしている一人です。

自粛期間中も、トレーニングをしていたのでは? と言われることもありますが、実は私、そんなにストイックではないので、家のことをしながらのんびり過ごしていました。

そろそろ動かなければ…。

緊急事態宣言が終わり、自粛モードも和らいだころ、近隣の山をハイキングして足慣らしをしました。そのあと、いきなりガッツリ登山となって白山へ出掛けましたが、すぐ息があがり、足首も不安で、最後は熱中症気味になってしまいました。

ですが、そんなことも想定にいれていたので、かなりゆる~い行程でプランニングし、体力をカバーするための山道具も、いろいろ備えておいたので、予定通り歩き終えることができ、とても素敵な思い出になりました。こういうことがあると、自分の弱った部分は「道具に助けられる」ことが多いと感じます。

小屋泊まりですが感染症対策で寝袋、自炊道具等一式を持っていった白山


冒頭に書いた、9月に開催したおとな女子登山部ツアーの日は、あいにくの雨でした。久しぶりに山へ登る方、自粛期間の間のウォーキングなどをきっかけに山登りをはじめた方が多く、疲れを顕著に感じたり、足が攣りそうになったりと、思ったような山登りができなかった方も見られました。こんな体力や技術じゃ登山は向いていないのかな? もっと頑張らなくてはいけないのかな? そんな思いに駆られてしまった方がいるかもしれません。

久しぶりのツアーは雨ですが、満員御礼! 寒かったけど無事登頂


しかし、どうか、そんな思いは捨ててください! もっと楽しみたい、という気持ちを持ち続けていただけたらと思います。そのために、山道具があり、登山ガイドや、私たちがいるのです!

「おとな女子登山部」は、ガイドさんのお手伝いとして、ツアーに参加しています。特別な資格はありませんが、山の道具を扱う店舗のスタッフとして、みなさまと山に登る際は、できるだけサポートできるよう準備しています。新しい道具をお見せしたり、使い方を教えたり…。

そして、もしもの時に備えて、知識やノウハウの講習も定期的に受けています。

先日、好日山荘登山学校の人気者・田中敦ガイド指導のもと、山での「緊急時の対処方法」を学びました。携帯すべきファーストエイドキットや、登山中によく起こるトラブルへの対処法、万が一、山で事故に遭遇した際のトリアージ、要救助者の搬送やロープワーク等を学びました。

そこで今回は、講習から学んだことを元に、みなさまが登山に行く際にも役立つと思われる部分を抜粋し、感じたことをまとめてみました。

研修の終わりの記念撮影、中央は田中ガイド

 

ファーストエイドキットの基本とは? 持ち寄ったアイテムを見直し!

まず、スタッフで話し合い、基本的に持っていた方が良いもの、を整理しました。

おとな女子、それぞれのエマージェンシーキットを広げて選別中


色々ありますが、必要な物をまとめるとこんな感じです。

  • ナイフまたはハサミ
  • 伸縮性包帯・三角巾
  • サージカルグローブ
  • 穴をあけたペットボトルの蓋
  • アルコール洗浄液または洗浄綿
  • バンドエイド、キズパワーパッド
  • ダクトテープ
  • テーピング(38mmがよい)
  • 結束バンド
  • レサコ(人工呼吸用マウスシート)
  • 常備薬(特殊な薬は、処方箋またはお薬手帳のコピー)

 

常備薬

ガイドや添乗員等、第三者がお客様に薬などを提供することは基本的には禁じられています。いつも自分のために使っているものが、他の方へ効くとは限りません。常備薬は自分が普段使っているものを持ち歩くようにしましょう。持病のある方は、自分が意識を失った際にでも、他人が何の薬かをわかるようにしておくとよいでしょう。お薬手帳のコピーや処方箋等を入れて、同行者がわかるようにしておくことをオススメします(余談ですが、マイカー登山の方は、車の鍵の収納場所も共有するといいですよ!)。

なみへ~の常備薬は、痛み止め、胃薬、下痢止め、整腸剤、風邪薬、葛根湯、芍薬甘草湯、使い捨て目薬、リンデロン軟膏などをいれています。

薬ではないですが、よく熱中症のような感じになるので、アミノバイタルの顆粒や塩熱サプリ等もいれています。

普段から使っている常備薬を持ち歩きましょう。使用期限にも気を付けて


洗浄綿は、アルコール入りと、そうでないものを持っています。傷口にアルコールが染みたことがあるので、水で洗えない時はアルコールなしのタイプが役立ちます。

左が洗浄綿、右がアルコール消毒綿


ファーストエイドキットを見直すと「自分を良く知ること」がとても大切だと感じました。自分に必要なものを持っていないと、ただの邪魔な荷物になってしまいます! きちんと自分自身を守るキットにして持ち、誰から見てもファーストエイドキットだと分かる入れ物に入れて持ち歩きましょう。

ファーストエイドキットを入れる場所は、人によって様々ですが、すぐ処置しないといけないようなものが含まれている場合は、取り出しやすい雨蓋等に入れます。それ以外はツェルト等とひとつにしてバックの中に入れておきます。

これからの時期は寒いので、予備のグローブやインナーダウンを加えておくことをオススメします!

ファーストエイドキットは判り易い入れ物だと、他人のバックでも探しやすい!

 

出番の多かったファーストエイドグッズは?

ほかに、よく使うのはダクトテープです! もう3回ほど活躍しました。自身のトラブルではなく、同行者の道具のトラブルで、山で靴底が剥がれた方に遭遇して使ったことがありました。友人のトレッキングポールのバスケットが抜けてしまった時や、アイゼンのパーツが壊れた時にも、このテープで貼るだけで何とかやり過ごせました。テーピングよりも粘着力が強く頼りになるので、必ず持っていきます。

それ以外にも、山に行く際に必ず持ちたいものとして、ツェルト&エマージェンシーシートは、やはり必須だと感じました。なかなか個人の山行で搬送まではできないかもしれませんが、もしもの時、自分たちが隠れる場所も必要ですし、荷物をデポしたり、下に引いたり、包んだりする、大きな布状のものがあると便利なんだなぁと感じました。

災害時にはタープや、仕切り替わりに使うこともできるので、必ずひとつ、ザックに入れておきましょう!

 

私たちが山でよく遭遇するトラブル

最近のツアーで多かったのトラブルは“足の痙攣”です、足の攣り(こむらがえり)の原因は、
①水分・塩分・マグネシウム等の不足
②疲労・筋力不足
等が原因と言われています。

登山前にしっかり水分、塩分などをとり、ストレッチをしてから歩き始めるようにしましょう。よく攣る方は芍薬甘草湯という漢方が攣りに効くそうなので試してみましょう。なみへ~はトレランレースの際に片方の足が攣りそうになりました。明らかに水分、塩分不足です。多分、筋力不足もですね。

攣るときは徐々にピクピクしてきて大体分かるので、まずはゆっくり攣りそうな部分をさすります。足をゆっくり動かして、無理のない範囲でストレッチをします。少し落ち着いたら、スポーツドリンク等で水分や塩分を補給。補給食も、できるだけ自分の弱い部分をカバーしてくれて、味が好みのものを探しておきます。

なみへ~は「OS-1」と「スーパーヴァーム」を愛用しています。「OS-1」は塩分、マグネシウム等が含まれているので熱中症や足攣り対策に携帯。「スーパーヴァーム」は疲れた時に飲みやすい味なのと体脂肪燃焼を期待して♪

「塩熱サプリ」等にも、足攣りのリスクを軽減してくれ、吸収がよいと感じます。携行しやすいタブレットタイプは賞味期限も長く、一年を通して持ち歩けるのでオススメです。

冬の登山は、食べ物や水分を摂る時間がゆっくりとれないことが多くなります。「シャリバテ」にならないよう、適度な休憩をとり、温かい飲み物やカロリー補給を行うようにしましょう。

普段よく持ち歩く行動食シリーズ、熱中症や足攣りにもよい

 

山でのレスキューについて。自分でできる「トリアージ(*)」の基本

*患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと


今回、私たちは、山でのレスキューの基本として、ツアーでの「トリアージ」について学びました。人数が多い場合には、優先順位をしっかり判断しないと手遅れになってしまうことも考えられるからです。

個人の山行でも、同行者が体調不良やけがをした場合について考え、準備をしておきましょう。自分でできることには限界があり、できるだけ早く、専門知識がある方へ引き継げるよう状況をしっかり見極めることが大切です。

とは言っても、突然のことだと、自分自身もパニックになってしまい、冷静な判断ができなくなってしまいますよね・・・。

まずは自分たちができる簡単なことを行います。

①元気づける! 安心させる!
普段から同行者とのコミュニケーションをとることが大切! お互いの体力や技術を知っていたらすぐ対処できるはずです。

②安全確保を行う。周囲の地形を見て、できるだけ安全な場所へ移動する
場所の移動が難しい場合も、できるだけ危険な場所が視界に入る位置で対応する。

③水分、エネルギー補給などをする
行動食、非常食は余裕を持って携行するようにしましょう。

④状況に応じて止血、保温、冷却
エマージェンシーキットに三角巾やサージカルグローブがあれば、止血などは対処できます。防寒具は自分が使うだけでなく、エマージェンシーグッズとしても活用できます。ツェルト等も防寒対策になります!

⑤通報・搬送
個人で搬送を行うのはとても大変! 時間がかかってしまうと命とりに!
通報手段、電波状況などは下調べが必須です。現在地は常に把握しておくようにしましょう。

さて、こうやって書き出すのは簡単ですが、突然、そういう状況になったら、どこまでできるでしょうか?

まずは落ち着いて深呼吸してもらう(…という演技です)


私は③まではできそうです。④のうち、保温・冷却はできても、止血、と言われるとパニックになるかもしれません。何回か教わったことがある止血方法も、血をみたら冷静に判断できるか不安です。冷静に判断するためには、しっかりした知識や経験が必要なので、こういった研修を繰り返し行うことが大切だと感じました。

搬送って色々方法があるけど大変でした!! 
トレッキングポールで担架を作って運んでいるところです


「おとな女子登山部」では、こういった講習をお客様向けにも定期的に行っています。好日山荘の登山学校机上講座や実技ツアー等に参加すると、ガイドさんから教わることもできます。

最近はオンラインでの講座も行っているので、ぜひチェックしてみてください!

「おとな女子登山部」インスタグラムでも、研修の様子をアップしていますのでぜひご覧ください。

なみへ~も初心に帰って山に行けない日は自主勉強しています!

登山に対する安全管理もしっかり意識し、事故のないようにおでかけください。

プロフィール

なみへ~(好日山荘おとな女子登山部)

東京生まれ埼玉育ち。10年ほどサーフィンを楽しみ、サーフトリップででかけた屋久島でトレッキングの楽しさに目覚める。登山スタイルはピークハント中心で、岩のナイフエッジを求めてクライミングを始める。旅行好きなので海外トレッキングにも出かけている。やりたがりのおとな女子最高齢。最近は家で猫とだらだらしすぎて体重が5キロも増えたのがもっぱら悩みの種。これから雪山の季節、ちょっとずつ山に行き始めたのですがまだまだ不安。。。体力UPの為ウォーキングを始めてみました~!
⇒おとな女子登山部メンバーはこちら

好日山荘おとな女子登山部 リレー連載

登山用品専門店の好日山荘で、2013年より女性スタッフ有志により立ち上がった「おとな女子登山部」。 「自分たちが山を真剣に楽しみ、次の山に挑戦すること」「お客様にもっと山を好きになってもらうこと」を目標に、ブログでの発信や登山イベントなどを行っている。 その活動の様子と女子目線での登山感を伝えていく。

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