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ドリップコーヒーを楽しむためのクッカーセットを、新緑の日光・女峰山でテスト!

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2019年05月31日

 

今月のPICK UP ベルモント/チタンドリッパー&クッカーセット

価格:8,600円(税別)
容量:マグカップ 350ml、クッカー 730ml
重量:約285g

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さすがは三条の金属加工技術。チタンの加工精度に驚く!

梅雨を前にして登山日和が続く5月のある日、僕は山が目の前にある日光の駐車場にクルマを止めた。目的地は女峰山。往復で10時間以上にもなる長丁場だが、夏至が近付いて陽が長い時期でもある。日帰りでも焦らずに行動できるだろうと僕は考えていた。

今回のお供は、ベルモント「チタンドリッパー&クッカーセット」である。その名の通り、チタン製の調理用具で、ポイントは商品名の単語の並びが、「クッカー」よりも前に「ドリッパー」となっていることだろう。これは調理以前に、「コーヒードリッパー」としての機能に力を入れた製品なのだ。

蓋つきのクッカーの容量は730ml(外径106㎜、高さ103㎜)だ。そこに350mlのダブルウォール式で保温力が高いマグカップ(外径91㎜、高さ81㎜)が組み合わせられ、円形のドリッパースタンド、円錐形のドリッパーが付属する。総重量は285g。これらがすべてクッカーのなかに収められ、オールインワンのセットになっている。

まずはクッカーから見ていこう。

このクッカーの内部には200~500mlの範囲で目盛りが刻まれている。金属特有の光の反射により、角度によっては見にくいこともあるが、水量の見当がつけやすく、やはり便利だ。

また、縁には注ぎ口もつけられている。素材をわずかに窪ませて作った最小限のサイズなので、一瞬見落としそうになるほどだが、機能性としては十分そうだ。

クッカーには付属の蓋がぴったりとハマる。まさにミクロン単位の設計がなされており、そのままひっくり返しても蓋が外れないのがスゴい。ベルモントは金属加工技術では世界的に有名な地域として知られる新潟県三条市のメーカーで、この加工精度の高さには驚いてしまう。

クッカー本体同様に、この蓋の外径の一部もまるで押しつぶしたかのように窪んでいる。じつはこの部分をクッカーの注ぎ口と合わせれば、2㎜程度の隙間が生まれ、蓋をしたままで少しずつお湯を注げるのである。このとき、注ぎ口と蓋の凹み部分をあえて合わせなければ、お湯が流れ出てくる量をさらに少なくすることもでき、後に紹介するような形でコーヒーを淹れる際に、より水量の微調整がしやすくなる。

次に、コーヒーを淹れるときに使用するパーツ類を確認しよう。左からダブルウォール式マグカップ、ドリッパースタンド、ドリッパーとなり、マグカップとドリッパーはチタン、ドリッパースタンドだけはアルミが使われている。

ドリッパースタンドだけがチタンよりも重いアルミなのは、ある程度の重さがないと、コーヒー豆を入れて重量を増したドリッパーを、マグカップの上で安定させられないからであろう。

これら3つをセットすると、以下のような姿にしっかりと収まる。やはり少々重いアルミ製のドリッパースタンドが、ドリッパーを安定的に直立させるのに貢献しているようだ。

実際にコーヒーを淹れる際は、別途用意したコーヒーフィルターをドリッパーの内側に入れ、クッカーで沸かしたお湯を注ぐ。すると、マグカップの中においしいコーヒーができあがるというわけである。

チタンドリッパー&クッカーセット一式は、スタックして収納可能だ。チタンをごく薄く加工して作っているドリッパーの先端は破損しやすい部分だが、重ねて内部に収納することで持ち運びの際のトラブルを防ぐことができる。

収納用に目の細かなスタッフバッグも付属している。巾着式に上部を締めるコードストッパーには無用と思えるほど大きいタイプが使われているが、これが邪魔だと思う人はより小さなものに付け替えればいい。

このようなチタンドリッパー&クッカーセットをバックパック内に入れ、僕は東照宮の奥に位置する滝尾神社の登山口を出発した。

 

新緑を迎えた女峰山へ。チタンのクッカーセットは持ち運びも軽い!!

杉並木で知られる日光は針葉樹のイメージが強いが、この季節は広葉樹の新緑こそ美しい。標高を上げるとヤシオツツジもピンクの花を咲かせ、心地よく歩ける登山道が続いている。

南西方向には男体山。この付近には独立峰のようにそびえる古い火山が多く、それぞれに登り甲斐がある。日帰りではもったいないほどなのである。

僕は正面に荒々しい断崖を望む逍拝石という場所まで歩くと、大休憩をとることにした。

早速コーヒーを淹れてみよう。

僕はコーヒーフィルターを2種類用意しておいた。ひとつは1~2人用の「101」サイズで、もうひとつは3~4人用の「102」サイズ。しかしドリッパーに合わせると「101」は少し小さく、お湯を注ぐと下に沈み、場合によってはコーヒー豆があふれそうになる。それに対し、「102」は大きすぎて、そのまま使うと下のような写真になってしまう。

もちろんドリッパーのサイズに合わせ、折って使えばいいだけの話だが、このドリッパーは「101」と「102」の中間くらいという微妙なサイズ感で、一人用のコーヒーを淹れるためでも、3~4人用の「102」を用意したほうが安心ということはお知らせしておきたい。

このクッカーには「スピン(ヘラ絞り)加工」というものが施されている。なんでも、側面を薄く作っているために火の熱が伝わりやすく、水が対流して早くお湯が沸くらしい。今回のテストだけではその効果は判断しかねるが、お湯が沸くまでの時間はたしかに短かったようである。

当たり前のことだが、蓋をすればお湯はますます早く沸く。先述したように、このクッカーには蓋があまりにもぴったりとハマるため、沸騰させると内部の圧力が高まりすぎて蓋が吹き飛ばされるのではないかと心配だったが、注ぎ口と蒸気穴から適度に圧が抜けるため、まったく支障はないことがわかった。水の量を500ml程度に抑えておけば、フルに沸騰させても安全のようである。

満を持してコーヒー豆を入れたドリッパーにお湯を注いでいく。注ぎ口から流れ出るお湯は、コーヒーをドリップするのにまさにちょうどの量。わざわざ手で押さえなくても蓋が外れることがなく、常に一定のお湯が流れるので使い勝手がいい。

コーヒー豆の個性や好みによっては、もっと少しずつお湯を注いでいきたい場合もあるだろう。そのときは蓋の窪みを注ぎ口からずらせば、より少量のお湯でじわじわとコーヒーを淹れることができ、なかなか便利だ。折りたたんだフィルターはドリッパーになじみ、山中に香ばしい匂いが立ち込めていく。

休憩中にわざわざドリップしたコーヒーを楽しめるとは、じつに贅沢だ。お湯で重くなった使用済みのコーヒー豆をゴミとして持ち歩くのはいくぶん面倒だが、インスタントコーヒーとは比較にならないおいしさには敵わないのである。

中空になったダブルウォール式マグカップは保温力が高く、最後まで熱いままコーヒーを味わうことができるのもいい。その分だけ一般的なマグカップよりも重くなるのは仕方がないことだろう。使用後の水を含んだ豆といい、保温力が高いマグカップといい、本格的なコーヒーを山中で味わおうと思えば、重量のことは目をつむるしかないのだ。

ところで、このダブルウォール式マグカップの保温力はどれほどなのか? 以下は下山後に改めてテストしてみたときのカットである。写真に映っている温度計の数値は、撮影したタイミングでたまたま表示されていた温度なので、気にしないでいただきたい。

左はダブルウォールカップで、右は比較のためにいっしょに計測した同セットのクッカーである。これらに沸騰したお湯を250ml入れ、それが50℃まで下がる時間がどれくらいになるのかを測定した。ちなみに、気温は23℃であった。

その結果は、ダブルウォール式マグカップの場合、100℃から50℃まで下がる時間は、約28分。半時間近くも熱いコーヒーを飲むことができ、十分すぎる保温力を発揮してくれた。それに対し、クッカーはわずか12分。クッカーとマグカップは口径が違い、空気に触れる面積も異なるため、単純な比較にはならないが、ひとつの目安にはなるだろう。

山中でクッカーを使ってみて気になった部分もある。ひとつはハンドルの部分。チタンは熱伝導性が低く、火にかけた部分以外は極度に熱くはならないのだが、このクッカーのハンドルはステンレス製。そのためにバーナーの熱をダイレクトに受け止め、とても素手では持てなくなるのだ。この部分もチタン製だと熱くなりすぎないと思われるが、おそらく加工が難しいのだろう。それならば、カバーをかぶせるなどの工夫があったほうがよい気もする。また、コーヒーを入れたマグカップのハンドルも同様に熱くはなるが、こちらは直接火にかけたわけではないので、十分に素手でも持てる程度であり、心配はない。

もうひとつの気になった点は、バーナーのゴトクの上にクッカーを置いたときの安定性だ。ツルっとした底面はただでさえ滑りやすいうえに、クッカーが細長いので水を多く入れると重心が上になり、少し傾斜があるだけでバーナーの上から滑り落ちてしまうのである。じつは今回のテスト中も、コーヒーを淹れる前に500mlのお湯をひっくり返して、沸かしなおしをしなければいけなくなり、一般的な製品以上に水平を意識してクッカーを使用すべきだったと後悔した。その底面は、クッカー、マグカップともに中心部を少し凹ませ、外周がかすかに盛り上がっているという形状で、強度を増したり、地面に置いたときに土がつきにくくなったりする面でメリットはありそうだが、できれば滑りにくさの面でもなんらかの工夫があると使いやすかったのではないだろうか。

僕は女峰山の山頂でもコーヒーを味わった。他の登山者はすでに下山し始めており、周囲には鳥の鳴き声くらいしか聞こえない。こういう時間はたまらないものである。

ここで遅めの昼食を作ることも考えたが、それほど腹がすいているわけではなかった。それに、先ほど沸かしたお湯をひっくり返してしまったので、飲み水の分量に不安もある。それなのに気温は高く、復路も長い。今回は無理に昼食を作らず、いったん下山することにした……。

 

クッカーに意地悪してラーメンも作ってみたが、問題なし! 改良点があるとすれば・・・

下山後に作ったのは、棒ラーメンだ。僕好みにするために、付属のスープを使わず、フリーズドライの酸辣湯スープを合わせた。このラーメンに本来必要な水量はクッカーの目盛り上限である500mlで、麺を入れれば650ml程度になる。730mlのクッカーで作る分量としては、ギリギリだ。そのままではお湯が沸騰すると吹きこぼれてしまいそうなので、水量を少なめにして火にかける。さすが極薄素材のチタンクッカーだけあって、お湯はすぐに沸騰した。

その後、僕は麺を入れる前に、あえて酸辣湯スープを先に投入し、5分ほど煮込んでみた。本当は必要がない工程だが、とろみのあるスープを煮込むことによってクッカーが焦げ付くかどうか確認しようと思ったのである。広く知られているように、チタン製クッカーの特徴は、とても軽い反面、焦げやすいことにあるからだ。

しかし、今回の酸辣湯スープ程度のとろみと濃度ならば、5分程度煮込んでも焦げ付く心配はなく、さらに麺を入れてからも3分ほど火にかけ続けたが、それでも問題はなかった。ご飯を炊いたりするのはさすがに難しいだろうが、そもそもこれはコーヒーを淹れることを主眼とした製品だ。ラーメンが作れれば十分なのである。

底面が滑りやすい、ハンドルが熱くなりやすいといった部分は改善してもらいたい点とはいえ、コーヒー好きなら誰もが気になる製品に違いない。アウトドア用のコーヒードリッパーはこれまでにも市販されてきたが、山中に持ち運ぶのが苦ではない軽量なチタン製で、保温性のマグカップまで付属し、オールインワンで持ち運べるタイプは見たことがなく、魅力あふれる製品である。ゆったりとした気持ちで山を楽しむためには、ひとつ手に入れておいてもよさそうだ。

 

今回登った山
女峰山
栃木県
標高2,483m

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教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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