このエントリーをはてなブックマークに追加

山小屋スタッフの人間関係&恋愛事情って? 山小屋バイト経験10年のフリーライター・吉玉サキさんに聞いた

「山小屋で働く」ということ
その他 2019年07月10日

登山経験ゼロのまま山小屋で働きはじめ、そこから10年におよぶ山小屋生活を経験したフリーライターの吉玉サキさん。ご自身も山小屋で出会った人と結婚した吉玉さんに、山小屋での人間関係や恋愛事情について伺った。

★連載第1回目:吉玉サキさんに聞く山小屋の「イメージと現実」

吉玉サキ さん

北アルプスの山小屋で約10年間働いたのち、2018年からライターに転身。webメディア“cakes”で山小屋エッセイ「小屋ガール通信」を連載中。2019年6月に、同連載の書籍化である『山小屋ガールの癒やされない日々』(平凡社)を上梓。イラストレーターの夫と都内でふたり暮らしの30代。

知り合った日から始まる共同生活! スタッフ同士は仲が良いの?


―― 山小屋は住み込みですよね。働いているスタッフ同士の人間関係ってどういう感じなのでしょう?

吉玉さん:その年によって違います。というのも、山小屋って毎年スタッフの顔ぶれが変わるんです。

山小屋によって事情は違うと思いますが、私のいた山小屋は、スタッフはシーズン中だけ雇用されていて下山とともに契約終了します。だから、ワンシーズン限りで辞めてもOK。最初からワンシーズンだけと決めて来る人もたくさんいます。

もちろん何年も働いてる人もいますが、基本的には毎年メンバーの入れ替わりがあります。だから、年によって雰囲気がすごく違うんです。スタッフの年齢構成も男女比も年によって違いますから。

―― じゃあ、その年の人間関係によって仕事にも影響があったり……?

吉玉さん: そうですね。その年のメンバーによって、テンションが高い年、素朴で落ち着いた年、と雰囲気も変わります。

人間関係がいい年は、笑いが絶えなくて毎日楽しくて、仕事の辛さも半減しますね。

その逆は……ご想像におまかせします(笑)

―― 初めて会う人とも、いきなり住み込みの共同生活ですよね? スタッフ同士のトラブルとかはないんですか?

吉玉さん: 山小屋に限りませんが、複数の人間がいれば、どうしても性格や仕事のやり方に「合う/合わない」はありますよね。

朝から晩まで一緒にいるから、たとえ自分は問題なく過ごしてても、周りでトラブルがあると「我関せず」じゃいられないし……。

スタッフが多い山小屋なら、合わない人との接触も多少は避けようがあるけど、規模の小さい山小屋は避けようがないですね。まあ、辛いですね(笑)。でも、そういう仕事なので。

―― 長く働いていると慣れてくるものでしょうか?

吉玉さん: いえ、慣れませんでした(笑)私は心配性なので、毎年シーズンが始まる前は「今年はどんな人がくるんだろう?」ってドキドキしてました。10年やっても「意地悪されませんように」って真剣に祈ってましたね。実際に意地悪されたことはないんですけど、やっぱり心配なんです。

―― 山小屋スタッフに向いてる人ってどんな人ですか?

吉玉さん: 「あんまり気にしない人」でしょうか。一般的には「元気」「明るい」ってイメージだと思うんですが、それは必須じゃないと思うんです。

山小屋は共同生活だし、お客様もいろんな方がいます。なので、あまり自分の価値観にこだわりすぎる人は、そのぶんストレスが溜まると思います。そういうタイプがダメってことじゃなくて、本人がしんどくなっちゃうという意味で。

私自身、自意識過剰で気にしすぎる性格ですが、山小屋で働きはじめてからは、いろんなことに「まあ、そういうこともあるよね~」と思うようになりました。柔軟になったというか。

山小屋で知り合った人と結婚。気になる山小屋アルバイトの恋愛事情は?

―― 書籍にもありましたが、吉玉さんは山小屋で出会った男性とご結婚されていますよね。

吉玉さん: 私は山小屋アルバイトを始めた年に、今の夫と知り合いました。いきさつは書籍を読んでいただければと思います!

―― お付き合いは公認だったのでしょうか?

吉玉さん: そうです。付き合って5年後に結婚しましたが、結婚前も結婚後も同じ山小屋にいるし、みんな知ってます。

私が働いていた山小屋は、職場恋愛が禁止じゃなかったんです。よその山小屋さんでは、禁止のところもあるらしいです。

―― ほかにも山小屋で出会ったカップルはいるんでしょうか?

吉玉さん: いっぱいいます。寝食をともにするから距離が縮まりやすいし、恋愛に発展しやすい環境なんでしょうね。

恋愛に限らず、山小屋は一生ものの濃い人間関係を築ける環境だと思います。苦楽を共にするので仲間意識が芽生えるし。

―― 親友ができたりとか?

吉玉さん:はい。ただ、山小屋での人間関係は本当に「運まかせ」です。その年どんな人が集まるかは、そのときになってみないとわからないので。

「そういう出会いがあるかも」くらいで、他人に過剰な期待をしないのがいいと思ってます。期待すると、期待はずれにガッカリしちゃうので。

「他人は他人」って言うとすごくドライに聞こえるかもしれませんが、共同生活を送る上で重要なことだと思います。他人に期待はしないけど、尊重はする。そういう人のほうが、濃い人間関係を築いている印象があります。

****

今回は、山小屋バイトの人間関係と恋愛事情について、教えていただきました。次回は、山小屋経験から成長できたことについてお話を伺います。

『山小屋ガールの癒やされない日々』(平凡社刊)

著者:吉玉サキ
発売日:2019年6月21日
価格:本体価格1,400円(税別)
体裁:四六判232ページ
ISBNコード:9784582838077

amazonで購入

教えてくれた人

吉玉サキ

北アルプスの山小屋で約10年間働いたのち、2018年からライターに転身。webメディア“cakes”で山小屋エッセイ「小屋ガール通信」を連載中。2019年6月に、同連載の書籍化である『山小屋ガールの癒やされない日々』(平凡社)を上梓。イラストレーターの夫と都内でふたり暮らしの30代。

■webメディア“cakes”
吉玉サキさんの連載「小屋ガール通信」(有料コンテンツ)
https://cakes.mu/series/4149

同じテーマの記事
山小屋で働いてみたい人、必読! 『黒部源流山小屋暮らし』の著者、やまとけいこさんに聞く、山小屋生活の裏話、魅力、そして著書について
『黒部源流山小屋暮らし』のやまとけいこさんに聞く、山小屋従業員生活。最終回となる第3弾では、山小屋生活での裏話、最近よく聞く山小屋での問題について。そして思いがいっぱい詰まった著書について聞きました。
標高3700m超、富士山頂・扇屋で20年目の山頂生活となる写真家・小岩井大輔さんに聞いた、富士山での山小屋生活
日本一高い山、富士山。夏の2ヶ月間、世界中から登山者が押し寄せ、“山頂ご来光”のために、夜中も登る人が大勢いる。長年、山頂の山小屋で働く、写真家の小岩井大輔さんに、富士山頂の山小屋で働く苦労とその魅力を聞いた。
山小屋で働いてみたい人、必読! 『黒部源流山小屋暮らし』の著者、やまとけいこさんに聞く、山小屋従業員生活の魅力、第2弾
山登り、沢登りが大好きで「仕事をするならこの小屋で!」と黒部源流の薬師沢小屋に入り、12シーズンに渡って従業員生活を送る、山と旅のイラストレーターやまとけいこさん。山小屋従業員生活っていったい? というインタビュー第2弾では、山小屋生活での失敗談や、従業員同士の人間関係について、お話をうかがった。
小屋泊経験も登山経験もゼロで山小屋へ!? 山小屋バイトの実態を執筆したライター・吉玉サキさんに聞く山小屋の「イメージと現実」
北アルプスの山小屋で約10年間働いた経験を持つフリーライターの吉玉サキさん。なんと登山経験ゼロのまま山小屋で働きはじめたそう。そんな吉玉さんに、登山者からは見えない山小屋の裏話を聞いた。第1回目は、山小屋で働くきっかけや、山小屋仕事の実態について。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

明後日

曇一時雨
(日本気象協会提供:2020年6月4日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW ストレスフリーの着心地!モンチュラの軽量レインジャケット
ストレスフリーの着心地!モンチュラの軽量レインジャケット しなやかな生地感と袖の立体裁断が特徴の「パックマインドジャケット」をワンダーフォーゲル編集部がチェック!
NEW 4つの脚の高さを自在に変えられるULテーブル
4つの脚の高さを自在に変えられるULテーブル 山岳ライター高橋庄太郎さんの連載。「factory-b」というブランドのULテーブル。不整地でも水平を作れるその仕組とは...
NEW サーモス山ごはんレシピ 優秀作品発表!
サーモス山ごはんレシピ 優秀作品発表! 5月中旬まで募集した「サーモス山ごはんレシピ」コンテスト。優秀作品3点を発表! 山ごはんレシピの参考に!
NEW 関東近郊で楽しむ高原ハイキング
関東近郊で楽しむ高原ハイキング 初心者やファミリーでも山歩きを気軽に楽しめる長野・群馬・栃木の高原6選
新緑が輝く季節、緑を満喫する山
新緑が輝く季節、緑を満喫する山 山肌の色が枯野色から緑色へと急激に変わる季節。山の緑が最も美しい時期に、緑にこだわって行くのにオススメの山。
レンゲツツジが山肌を彩る季節です
レンゲツツジが山肌を彩る季節です 初夏の時期、山肌を朱色に染めるレンゲツツジ。例年は6月下旬がピークだが、今年は今が最盛期。行くなら今でしょ!
登山は「下山」してからが楽しい!?
登山は「下山」してからが楽しい!? 登山後、すなわち下山後の楽しみの1つが山麓グルメ。ご当地名物料理から、鄙びた食堂の普通の料理まで、その楽しみ方を指南!
身近な花の物語、知恵と工夫で生き抜く姿
身近な花の物語、知恵と工夫で生き抜く姿 『花は自分を誰ともくらべない』の著者であり、植物学者の稲垣栄洋さんが、身近な花の生きざまを紹介する連載。
理論がわかれば山の歩き方が変わる!
理論がわかれば山の歩き方が変わる! 山での身体のトラブルや疲労の多くは、歩き方の密接に結びついている。あるき方を頭で理解して、疲れにくい・トラブルを防ぐ歩行...
山岳防災気象予報士が教える山の天気
山岳防災気象予報士が教える山の天気 気象遭難を避けるためには、天気についてある程度の知識と理解は持ちたいもの。登山が知っておくべき、山と天気の関係を解説。
登山ボディをしっかり作って山へ!
登山ボディをしっかり作って山へ! 身体のリセット・メンテナンスの面から登山のトレーニングを指南。登山のための身体づくりを目指そう!
知らないと損する山岳保険の知識
知らないと損する山岳保険の知識 自立した登山者なら必ず加入しておきたい「山岳保険」、その内容や詳細について、どれだけの人が知っているでしょうか?