注意が散漫になり、気が緩んだ下山時に遭難事故が増加 島崎三歩の「山岳通信」 第157号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年8月6日に配信された第157号では、転倒・滑落の多くが危険箇所よりも、比較的危険性の少ない登山道上で発生していることに言及、慎重な行動を促している。

 

8月6日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第157号では、7月22日~28日に起きた10件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月22日、北アルプス唐松岳で、55歳の女性が仲間2人と八方尾根を下山中に、雪渓上で転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

  • 7月23日、北アルプス烏帽子岳で、69歳の女性が仲間4人とブナ立尾根を下山中に、転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は大町署山岳遭難救助隊などにより救助された。

  • 7月24日、北アルプス白馬岳で、単独で入山した74歳の男性が白馬大雪渓を下山中に転倒し負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 7月25日、北アルプス蝶ヶ岳で、登山ツアーで入山した67歳の女性が三股に向けて下山中に、つまずいて転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警山岳遭難救助隊及び北アルプス南部地区遭対協隊員により救助された。

蝶ヶ岳からの下山時の遭難事故現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月31日付
 
  • 7月26日、北アルプス岳沢で、友人と2人で入山した73歳の男性が重太郎新道を下山中に、つまずいて転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 7月26日、小川山廻り目平で、48歳の男性が仲間と2人でロッククライミング中に、ロープ操作を誤って転落・負傷する山岳遭難が発生。男性は山梨県防災ヘリで救助された。

  • 7月27日、北アルプス北穂高岳で、72歳の女性が仲間5人と北穂高岳から涸沢に向けて下山中につまずいて、滑落・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警山岳遭難救助隊により救助された。

  • 7月27日、北アルプス北穂高岳で、51歳の女性が仲間2人と北穂高岳から涸沢に向けて下山中、足を滑らせて転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警山岳遭難救助隊により救助された。

  • 7月28日、北アルプス燕岳で、51歳の男性が合戦尾根を下山中に足を滑らせ、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリにより救助された。

燕岳・合戦尾根での遭難事故現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月31日付
 
  • 7月28日、八ヶ岳連峰硫黄岳で、単独で入山した68歳の女性が道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。茅野署山岳遭難救助隊員及び諏訪地区山岳遭対協隊員が遭難者を発見し、無事、救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月4週は、北アルプスを中心に10件の遭難が発生しました。10件中8件は下山中の転倒・滑落によるものです。
先週の山岳週報でもお伝えしましたが、遭難の多くは下山中に発生しています。転倒・滑落の多くが、ハシゴや鎖が設置されているいわゆる「危険箇所」よりも、比較的危険性の少ない登山道上で発生しています。これは視覚的に危険性が明らかな危険地帯では自然と緊張感が増して慎重な行動を心がける一方、危険性のわかりにくい登山道では、つい注意が散漫になり、油断が生まれることなどに起因しているのかもしれません。
木の根や岩へのつまずき、浮石でのバランス崩し、濡れた岩でのスリップなど、わずかな不注意や気の緩みが遭難につながります。下山中は漫然と歩くことなく、足元の状況に注意を払って慎重な行動を心がけてください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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