ブナの紅葉が見ごろの塔ノ岳へ。山頂の山小屋に泊まり、丹沢の山をゆっくり堪能する

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日帰りで行ける山でも、山頂の山小屋に一泊してみてはどうだろうか。登山者と語らい、黄昏から落日、翌朝のご来光を拝む充実の登山も一興だ。

金冷シから4つ程のピークを越えた鍋割山頂の展望台から望んだ富士山(写真=白井源三)

 

塔ノ岳は丹沢山系で一番人気がある山です。都心から近く、日帰り登山として親しまれています。一般的には大倉尾根から登られますが、別のアプローチとしてヤビツ峠から表尾根、鍋割山稜からも登ることができます。塔ノ岳からさらに縦走路が延び、丹沢山から分岐して宮ヶ瀬や蛭ヶ岳方面への中心になる山でもあります。

丹沢山系は2019年10月31日時点では、台風の影響で登山可能なコースが限られていました。今回は、被害の及ばなかった大倉尾根から塔ノ岳山頂の尊仏山荘に一泊し、翌日に鍋割山を登って下山するコースを紹介します。

紅葉前線は標高1000m付近から下降しており、11月中旬まで楽しめます。稜線のブナをはじめとした紅葉が堪能できます。紅葉の最新情報は山頂の尊仏山荘か秦野ビジターセンターに問い合わせを。

モデルコース:丹沢・塔ノ岳~鍋割山

行程:
【1日目】大倉登山口・・・雑事場ノ平・・・堀山の家・・・花立山荘・・・金冷シ・・・塔ノ岳(泊/約4時間)
【2日目】 塔ノ岳・・・金冷シ・・・大丸・・・小丸・・・鍋割山・・・後沢乗越・・・二股・・・大倉登山口(約4時間30分)

⇒塔ノ岳周辺の地形図を確認

 

グローバルに人気が高まる丹沢で、紅葉と展望を楽しむ

入山口の大倉までは、小田急線・渋沢駅より大倉行きバスに乗り、終点下車です。バス停横に秦野ビジターセンターがあり、表丹沢の登山情報が入手できます。また、風の吊り橋、山岳スポーツセンタ―や川原で遊べる県立秦野戸川公園が隣接しています。

大倉尾根から花立山荘下部までは、あまり展望が開けません。階段が多く敷設されていて、危険な箇所がなく、初心者にも適しています。

雑事場ノ平上部のカエデの紅葉はまだ色付かず、塔ノ岳直下の金冷シ付近からブナの大木に茂った黄葉が時折射す日差しで光っていました。

大倉尾根を詰め、三ノ塔や大山を望む台地にノイバラの実が赤く照っていた(写真=白井源三)


山頂からは展望に優れ、眼下に相模湾や相模平野が広がり、箱根の山々、富士山、遠く南アルプス、丹沢の核心部である蛭ヶ岳や檜洞丸が望めます。

尊仏山荘には宿泊客は数人でした。携帯に熱中していた若い外国人に話しかけると南アフリカ出身で、英語の教師だそう。丹沢山から宮ヶ瀬へ下山すると言っていました。中年のご婦人二人は、なんとこの日、長野から新幹線に乗り山頂を目指したそうです。丹沢も全国的になり、国際的にもポピュラーになったものです。

夕食後、終日厚い雲に覆われていた山頂は雲が一掃されて、大山をシルエットに都心から相模平野や相模湾の夜景がきらめいていました。小田原の夜景の右側には、山頂に新雪をまとった富士山が霞んでいました。

小田原方面の街の明かりが光り、西の空の下、富士山が佇んでいた(写真=白井源三)


翌日は秋の高い空の下、金冷シから鍋割山稜を歩きます。落葉樹の紅葉が進行中でした。4つ程のピークを越えて鍋割山からもくっきりと新雪の富士山が展望できました。残念なことに名物の鍋割うどんは金曜日の休店でした。

下山は、後沢乗越から下り、二股へ出て、大倉へと戻ります。左前方に相模湾を見下ろしながら下っていく登山路にはブナ林が続き、紅葉が進行中でした。途中の登山路や後沢乗越から降りた沢は崩壊、増水してはいませんでした。この季節、信じられない程の暑さで、Tシャツ姿の下山でした。

大丸、小丸のピークを越える稜線はブナの樹林が続く。樹間から富士山の遠望(写真=白井源三)

 

プロフィール

白井源三

神奈川県相模原市生まれ。1989年ヒンドゥークシュ登山隊に参加、ゴッラゾム5100mに登頂。2005~2007年に南米取材。アコンカグアBCとインカ道をトレッキング。著書に『戸隠逍遙』(クレオ刊)、『北丹沢讃歌』(耕出版刊)、『冬の近郊低山案内』(山と溪谷社・共著)、『分県登山ガイド 神奈川県の山』(山と溪谷社・共著)など。丹沢の写真展を多数開催。

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