登らなくても楽しめる! 山のミュージアムで自分だけの「山時間」を過ごそう

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都会の喧騒にちょっと疲れて、どこか落ち着いたところでゆったりしたい。けれども、登山をするほど元気はない・・・。そんなときは、山の美術館に足を運んでみてはいかがだろうか。作品をじっくり味わい、自分だけの「山時間」を過ごしてみたい。

 

これまで、多くの作家、画家、写真家が、それぞれの手法を用いて、険しく美しい日本の山を表現してきた。彼らの目線で表現される作品には、自身の情景が現れ、十人十色の山の姿が描かれている。いつの時代も変わらずそこにあり続ける山に、彼らは何を想い、どのような姿を見たのだろうか。そんな作品たちに触れることで、より一層、山の魅力を知ることができるはずだ。

今回紹介するのは、風光明媚な山麓に建てられた、3つの小さな美術館。山や自然を愛し、真摯に見つめた人たちが残した貴重な作品が収蔵されている。下山後にふらっと立ち寄るもよし、弁当を持って一日のんびり過ごすもよし。山歩きもいいけれど、たまには山の美術館を訪れてみてはいかがだろうか。

■目次
  • 1.日野春アルプ美術館
  • 2.田淵行男記念館
  • 3.安曇野山岳美術館

 

日野春アルプ美術館―― 山の文芸誌『アルプ』で活躍した作家たちの作品

1958~83年に出版された、山の月刊誌がある。『アルプ』は、情報誌やガイド本とは一線を画し、多角的に山を捉えた文章や詩、絵といった作品を掲載。山の文芸誌として登山者だけでなく、自然を愛する多くの人に親しまれた。

寄稿者は畦地梅太郎や近藤信行、辻まこと、深田久弥をはじめ、640人を超える。そんな『アルプ』で活躍した作家を中心に、山の絵画や図書を集めた私設の美術館が、日野春アルプ美術館だ。

落ち着いた山小屋風の建物に入ると、1階には坂本直行の常設展示と図書や視聴覚資料の広間が出迎えてくれる。2階には山の絵画などが並び、企画展が行なわれることも。常時130点ほどの作品が展示され、見ごたえは充分。山好きとしては一度は訪れたい場所となっている。

日野春アルプ美術館の外観や展示物/『山と溪谷』2020年1月号より

日野春アルプ美術館

山梨県北杜市長坂町長坂下条1342-2
TEL:0551-32-6325

開館時間
10~16時
休館日
火~木曜 ※12月~3月末休館
入館料
中学生以上500円

 

田淵行男記念館―― 蝶の細密画と山岳写真の世界にふれる

田淵行男は、高山蝶の生態研究と山岳写真というふたつの世界でたぐいまれな足跡を残し、自然のすばらしさを伝えたナチュラリストだ。長野県の安曇野に住まい、常念岳に足繁く通っていた。そんな常念岳を望む安曇野の一角に立つのが田淵行男記念館である。

常設展示室には、鮮やかな高山蝶の細密画とモノクロームの山岳写真がほぼ半分ずつ並び、その二面性が際立つ。細密画で実際に使われた画材や自身のロゴを入れた登山装備なども展示され、実物を目にすると、活躍した当時の様子に思いが募るだろう。

田淵行男自身の自然へのまなざしが生み出した、小さな生き物から広大な山の風景までの作品たちは、現代においてもその魅力を最大限に伝えている。

田淵行男記念館の展示物を紹介/『山と溪谷』2020年1月号より

田淵行男記念館

長野県安曇野市豊科南穂高5078-2
TEL:0263-72-9964

開館時間
9~17時
休館日
月曜、年末年始 ※祝日の場合は開館、翌日休館
入館料
高校生以上310円

 

安曇野山岳美術館―― 北アルプスの麓で山の絵に囲まれる

麓から眺めて描く山ではなく、画材を携えて山に登り、ときには険しい稜線にイーゼルを据え、筆を走らせた山の絵画。そんな真の山岳絵画がずらりと並ぶのが安曇野山岳美術館である。

足立源一郎をはじめ、加藤水城、杉山修、上田太郎などの著名な画家の作品を収蔵。多様なタッチで描かれた、大小さまざまの山の絵は、見ると不思議と心が落ち着く。

立地上、登山の帰りや、悪天候で山行が叶わなかった登山者も多く立ち寄り、絵を眺めながら話に花が咲くことも。たくさんの画家の目を通した山々の作品たちを縦走すれば、お気に入りの一枚が必ず見つかるに違いない。

画家の目を通した山々が並ぶ安曇野山岳美術館/『山と溪谷』2020年1月号より

 

安曇野山岳美術館

長野県安曇野市穂高有明3613-26
TEL:0263-83-4743

開館時間
10~16時
休館日
木曜、冬季(12月11日~3月9日) ※祝日の場合は開館、ゴールデンウィークと8月は無休
入館料
600円(中・高校生300円)

 

今回紹介したのは、『山と溪谷』1月号第2特集「山と自然を愛した人のミュージアム」の一部。それぞれのミュージアムの雰囲気や一部の作品、そしてその魅力を紹介しているので、ぜひ手に取ってほしい。

ほかにも、特集は「100人で選ぶ、名山100」として山に関わる著名な100人に聞いた、好きな山やおすすめの山を紹介。2020年の登山の計画の一助として、大いに利用してもらいたい。

 

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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From 山と溪谷編集部

発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

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